生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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知らない牙

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sideリラ


ルシアス様?

何をしてるの?


「ンッ/////」


ルシアス様は頭も怪我してる。

 
私の頬にルシアス様の血が垂れてきた。


きっと頭を怪我しているからちょっとおかしくなったんだ。


じゃなきゃ、私にキスなんかするはずない。


「んっ!!」


押し返そうとしたけど、ルシアス様は本当に力が強い。


何度も押しているのにびくともしない。


それどころか、私の腰を抱きかなり密着する形になる。


「んっー//////」


ルシアス様、冗談が過ぎる/////


「っは…はぁ…」


唇が離れたら、今度は抱き上げられた。


「ルシアス…様/////」


何か言う前にベッドに押し倒された私。


ルシアス様のこの大きなベッドには血が滲んでいる。


私の顔の両隣にある手は大きい。


ルシアス様の血がまた私の頬に垂れた。


「ルシアス様…怪我が…。」


全然治ってない。


ヴァンパイアは治癒が早いのに、どうして?


「手当て、とかンッ////」


頭がクラクラする。


ライアス様とは違うキスだ。 


私を貪るようなキスに翻弄されてしまう。


「ンッ/////んん/////」


けど、ルシアス様のキスが嫌じゃない。


むしろ、心地いいと感じた私はおかしいんだろうか。


「はぁ…/////はぁ…////」 


ルシアス様の息が上がっているところを初めて見た。


「っ…!!」


掴まれた肩が痛い。


ルシアス様は何かを耐えている。


肩を掴む手が震えているのがその証拠だ。


なんて考えなくてもわかる。


ルシアス様はヴァンパイアなんだから、欲しいものは一つしかない。


本当に欲しかったのは私のキスじゃない、私の血が欲しかったんだ。


どうして少し切なくなるの?


どこへ行って誰の目の前にいて誰にキスをされても私はただの餌だからかな?


それくらいの価値しかないことは知ってる。


だったら尚のこと、その価値を生かしたい。


今の私にできることは一つ。


「ルシアス様…/////」


顔を背け、今夜はあなたの餌になる。


「っ…」


ギリっとルシアス様が歯を食いしばった音が聞こえた。


我慢なんかしなくていいのに。


私には慣れた事なんだから。


私が顔を背けただけじゃルシアス様は噛みつかない。


キスまでして押し倒したなら血くらい吸えるでしょ?


それに早くその怪我を治してよ。


心配でたまらないんだから。


「お前っ…!」


ルシアス様の腰に足を絡ませたら、ルシアス様が私の足を解こうとした。


「ルシアス様…。」


それをさせまいと私がルシアス様の首に腕を回すと…


「っ…」


ルシアス様が少し乱暴に私の後ろ髪を掴み、首を傾けた。


これで、あの時助けてくれた借りが返せたらいいな。


でも、私の血がルシアス様の口に合わなかったらどうしよう。

まずいって言われたら笑って誤魔化そうかな。


ブツッ!!!!
「ひっ//////」



初めて感じる、ライアス様以外の牙。


何度も噛まれているはずなのに、痛い。


ジンジンする。


「っ~!!!」


痛い、痛いよ、ルシアス様…



体に力が入って余計に痛い。


この痛みからどうやって逃れたら…

とにかく体の力を抜こう。


ぎこちなく深呼吸をしたら少しだけ体の力が抜けた。

大丈夫、怖くない。

相手はルシアス様だから。

私を殺したりしないし、ルシアス様は根が優しい人だ。

笑った顔は可愛いし、いざと言う時絶対私を守ってくれる。

そう自分に言い聞かせていたら体に変化が現れた。

痛みが徐々に消えていく。

ルシアス様の牙が私の肌に馴染んでいくのが分かるほどに。


あれ?

「っ…/////」


え?

「んっ…/////」

なに?

「あっ/////」

何これ?

「あっ…/////…あっ…/////」

自分の体を制御できない…


ちょっと待って…


気持ちいい。

 
「っ!!!」
「んぁっ/////」


ルシアス様の牙の毒は恐ろしい。


私から理性も恥じらいも何もかも奪っていく。


「いや…/////…ルシアス…様ぁ…/////」


おかしくなる!


「あっ/////」


牙を抜かれて、強烈な快楽が少し収まる。


少しだけ理性を取り戻した私はルシアス様と目が合った。


その口元から溢れる牙と私の血。


ただ口元を血で汚しているだけなのに、その色気は狡い。


「相性は最高にいいみたいだな。」


ルシアス様の言う相性とは、ルシアス様自身の毒と私の体のこと。


私の体はルシアス様の毒を受け入れて、鳴き狂っている。


そんな恥ずかしいことをあっさり認められない。


「や…////…ちが…////見ないで…////」


この間まで、ライアス様の腕の中で散々善がっていたくせに。


これじゃあ誰でもいいみたいだ。


もう恥ずかしくて死んでしまいそう……


私はルシアス様の視線から逃れるために両腕で自分の顔を隠した。



「隠すな。」


ルシアス様がそれを許すはずはなく、私の腕を片手で掴み頭より上に押し付ける。


ルシアス様の言うことを聞かずに私は顔を横に逸らした。


あんな声で鳴いて、快楽に溺れた姿を見られて恥ずかしがらない方が無理だ。


絶対に目を合わせたくない。


そう思っていたのに、ルシアス様はもう片方の手で私の顎を優しく掴み無理矢理視線を合わせた。



「全部見せろ、お前が俺の毒でどんな姿になっても受け止めてやるから。」



強引なのか、優しいのか分からない…。



ルシアス様は時々、本当に狡い…。
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