生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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光栄です

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sideカレン

ライアス様は今日も美しい。

必ず手に入れて見せる。

「ライアス様、あの時お顔を見た瞬間すべての不安がなくなりましたわ。私、誘拐さてれていてとても恐ろしかったんです…。」

他の女たちはライアス様と話す話題がない。


何がなんでもこの人を私のものにしたい。


「あのあと何事もなくてよかったよ。」


美しくて気高いライアス様。


こっちがダメなら弟の方でもいいわ。

騎士であっても王族は王族。


それに、ルシアス様もライアス様に引けを取らない美しさを持ってる。

雄々しいわりには女には興味を示さない。


先にルシアス様を私の虜にしてからでも遅くはないはず。


国で1番美しい男2人を手玉に取るのはきっと気分がいいわ。


少し話したらルシアス様の所へ行こう。


*******************

sideルシアス

俺の犬っころはあと3時間も働くのか。

つまり俺もここに3時間拘束される。

あと3時間か……勘弁してくれよ。


「だ、ルシアス様。」


そしてキジャ。お前はいい加減慣れろ。


「なんだ?俺の表情筋は死んでるから何言っても無駄だ。」


どうせまた顔を治せとか言うんだろ?


「あ、そんなこと知ってるんでわざわざ言わなくて結構です。それより、さっきの水色のご令嬢、こっちに来てますよ?」


水色のご令嬢?


「興味ねぇな。」


早く時間が経てばそれでいい。


「では、ルシアス様。俺は少し外します。」


は??

「おい、なんで急に…。」


俺が呼び止める間も無く、キジャは歩いて行った。



「お初お目にかかります、ルシアス様。私はテオドール家のカレンと申します。」


あぁ、理由はか。


興味のない水色ドレスの女が来た。


「あぁ。」


面倒臭ぇな…


香水の匂いも気に食わねぇ。


「ルシアス様…私、ずっとあなた様にお会いしたくて今日という日を楽しみにしておりました!」


あぁ、そうか。


「光栄の限りです。」


リラ、今何してんだろうな。


「あ……あの……私からこんなことを言うのは…どうかと思うのですが…」



やめろよ、勘弁してくれよ。


ダンスとか言ったらそのドレス燃やすぞ。


「さ、最初のダンスを私と……/////」


よし、燃やすか、この女。


周りが注目してやがる。


ここで断ればこの女が恥をかくことになる。


別にそれでもいいが後々面倒だ。


一曲だけ踊って適当に外に逃げるか。


「こちらからお誘いしようとしておりました、カレン嬢。お手をどうぞ。」


あぁ、自分のセリフに寒気がする。


リラに聞かれたら絶対笑われるな。


「はい/////」



カレンとかいった女は嬉しそうに俺の手を取った。



黒髪にピンクの瞳をした顔の整った女だ。



俺が広間の真ん中へエスコートすると、ライアスも他の女をエスコートしていた。


カレンの後ろにいた派手な赤い女だ。


早く帰りたい、リラと馬鹿な話してた方が何倍も楽しい。



そんな俺の思いとは裏腹に曲が会場を包む。


小さい頃に叩き込まれたダンスは大人になっても体が覚えていた。


「ルシアス様…ダンスがお上手なんですね。」


話しかけてくるタイプか。


面倒だ。


「光栄です。」


光栄です、いいな。

なんでも使える。


それなりに上品に聞こえるし嫌な意味に取られない。


「そういえば、ルシアス様。私つい先日起きた誘拐事件に巻き込まれてしまって。」


あぁ、リラが誘拐されたあれか。


「それは大変でしたね、怪我がなくて何よりです。」


あの時本当に危なかった。


危うくリラを失いかけた。


「ルシアス様とライアス様があの事件を押さえたと聞きました。少し時間が経ちましたがお礼を言わせてください。」


あと何時間ここにいればいい?


いつまで俺はこんなふざけた喋り方をしないといけないんだ?


「光栄です。」


やっぱりこの切り返しは最強だな。


*********************

sideカレン

何よ、光栄ですしか言えないの?


私にはまるで興味を示していない。


これは少し、動いた方がよさそうね。


「きゃっ、ごめなさい!」


私はわざと躓いたフリをしてルシアス様に抱きついた。



ルシアス様は私の体を支えて元の姿勢に戻してくれる。



「お気になさらず。」


これでもあまり動揺していない。


「ふっ…。」


ルシアス様、鼻で笑った?



「そんなに笑われるほど間抜けだったでしょうか?」


恥ずかしがるフリをして聞けば、ルシアス様はまたら笑った。


「いや、ある人間の女性をを思い出しでしまって。きっと、その子なら俺の足を踏むわ転けるわ、きっとダンスになりません。」


私と踊りながら違う女のことを考えていたなんて。


気に入らない。



「そ、…そうなんですか。」


必ず私の虜にしてみせるわ。
          

人間の女になんて私は劣らない。


そもそもなんで人間なんて存在しているのかしら?


存在自体が汚らわしい。


そう言えばあの時もそうだった。


私が誘拐された時、隙を見て逃げ出した時もだ。  


ばったりとライアス様に会ったまではよかったけど、あのお方の口から出た言葉は人間を心配する声だった。


あの時も今も、本当に気分が悪いわ。

けど、それを露骨に出してはいけないわね。


「ルシアス様は人間がお好きなのですね。」


あんな低俗な生き物のどこが好きか理解できない。  
 

「光栄です。」


*********************
 
sideルシアス


やっと一曲終わった。


「俺はこれで失礼します。」


早くここから逃げないと死ぬまでダンスに付き合うことになる。


カレンは戸惑ったような顔をする。


「一曲だけですか!?」


一曲でも踊るの嫌な俺が一曲も踊っただろうが。


「すみません、予定がありまして。」

「え!?ルシアス様!?」



俺はカレンの返事も聞かず会場をすり抜けた。


こんなのは二度とごめんだ。


案外時間が経たないな…。


少し散歩してからアイツを迎えに行くか。
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