生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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sideリラ

ルシアス様が送ってくれてからもうそろそろ3時間経つ。

私の帰る時間が近づいていた。

「ふふ♪」


今日はナイトに会える!


仕事も捗っちゃうなぁ~♪


「いいことでもあった?」


ルンルンな私を見て少しだけ笑うライさん。


「今日、会いたかった人に会えるんです!」

人じゃなくて狼だけどね。


「それはいいね。」

ライさんは注文されたカクテルを作りながら私に言った。


「はい!これ持っていきますね!」


「うん、よろしく。」


ライさんから出来立てホヤホヤのカクテルを受け取り団体専用の部屋へ行く。


私がドアを開けると10人くらいいる男の人たちが一斉にこっちを見た。


流石にこんな大人数だと迫力がある。


しかも全員ルシアス様みたいに男らしい体をしてる。


誰よ、こんなカクテル頼んだの。


早く出たい。


「俺のカクテルまだー?」


そう言って誰かが入ってきた。

茶髪の背の高いかっこいい人。

しかも、目が左右で色が違う。


右の瞳は黄色で、左の瞳は水色。

オッドアイだ。



「あ…あの、今お持ちしました!遅れてごめんなさい!」


彼は私から目を離さず固まっている。


何?


私が人間だから気に食わないとか?



何??何をそんなに見つめているの?



「か…」


え、何??
か??


「可愛いー!!!!」
「きゃっ!!」



彼はそう叫ぶと私が持ってきたカクテルを取って一気飲みした。



それを見て笑う他の男たち。


何がどうなってるの??


「可愛い!君名前は??いくつ??結婚してる??」


え?え?え??


「あ….あの…」

「俺はルディ、君は!?君の名前は??」


ルディさんは私の手をギュッと掴んで離さない。


まるで人懐っこい犬を目の前にしているみたい。


「リラ…です。」


なんだろうか。


この人は本当に激しい。



「リラ!可愛い!一緒に飲もうよ!」



え!?


「えっと、わ、私まだ仕事があるので!」


それに今日はナイトに会わないといけないから一緒に飲むなんて絶対だめ!


「えー!じゃあ何時に終わる??それから一緒に飲もうよ!」


どうしよう、うまくかわさないと……


「また今度ならいいですよ!今日はちょっと用事があるので…。」


とりあえず今日だけ確保できればいい!


「本当に!?じゃあ今度一緒に飲もうね!約束ね!?」


あまりの激しさに私は何度も首を縦に振った。


「やったー!引き止めてごめんね!仕事してきていいよ!」


早く退散しよう、せっかく逃げれるんだから。


「は、はい。」


部屋を出て一気に静かになる。


「はぁ…。」


まるで嵐のような人だ。


ルシアス様とは違う強引なタイプだ。


まぁいいわ、彼はきっと酔ってたのよ。


一緒に飲む約束なんて明日になれば忘れてる。

それより早く仕事を片付けて上がれるようにしておかないと。








「お疲れ様です!」


急げ急げ!ナイトがいる!


「お疲れ様、楽しんで。」

ライさんははしゃいでいる私を見て少し笑っていた。


「はい!ありがとうございます!」


子供っぽいって思われるかな??


それでもいいや、ナイトに会えるし♪


急いで店の裏口から外へ飛び出す。


するとそこには……


「っ~//////」


待ち望んだ狼が1匹。


「ナイトー!久しぶりー!」


私はたまらずナイトに抱きついた。


相変わらずふさふさしていていい匂い。


「ナイト♪ナイト♪」


私が頭をぐりぐりナイトに押し付けるとナイトが尻尾を振る音がした。


「一緒に帰ろう?」


そう言うとナイトが上体を引くした。


「お願いします!」


私はナイトに甘えてその大きな背に跨る。


ナイトは私が乗ったのを確認してゆっくりと立ち上がった。

そしていつも通り……


「ひゃー!!速い速い!!」


私を乗せたまま猛スピードで夜道を駆け抜けた。


**********************

sideルシアス


こいつはどんだけが好きなんだ?


今更ナイトの正体は俺だって言えなくなったじゃねぇか。


「ナイト、海綺麗だね…。」


夜の海を見ながらリラは俺にもたれかかってきた。


俺はちなみに砂浜に伏せている。  


「ルシアス様、今頃何してるのかな…。」


ナイトになってる俺は何も喋れない。


それなのにリラの独り言は途切れることがない。


「美味しい料理たくさん食べて、綺麗な人と踊ってきっと夢のひと時なんだろうな…。」


いや、料理食ってないしこの上なく面倒なダンスだったぞ。


だからそんな寂しそうな顔をするな。


鼻でリラの頭を突けばリラは笑った。


「ふふっ♪」


お前の話を聞いている方がよっぽど楽しい。


「結婚とか…しないのかな?」


結婚なんてするわけないだろ。


「ルシアス様が結婚したら私追い出されちゃうかも。」


俺はお前の世話で手一杯だ、リラ。


「それはそれで寂しいなぁ……ルシアス様私のことすごくいじめてくるけど、作ってくれるご飯は美味しいんだよ?」


おい、寂しい理由は飯だけか?


「意地悪は言ってくるけど、ルシアス様なんだかんだで優しいもんね…。きっと、すぐ恋人ができて私を追い出すよ?あの薄情な男は。」


おい、待てコラ。

言ってること真逆じゃねぇか。


それに今俺の悪口言ったよな?


薄情だって?いつ俺がお前を追い出す話なんかした?


「私もっと働いていつ追い出されてもいいようにしておかないと…。ルシアス様は私を追い出す時きっと悪魔のような顔をして追い出すから……あぁ、想像したら寒気が…。」


この女……俺をなんだと思ってるんだ?

俺がそんなに小さい男に見えるのか?


「それかもう一人暮らし宣言しようかな?……ルシアス様送り迎え大変そうだし、仕事も忙しそうだし。私絶対ルシアス様の足枷になってる…。」

 
俺の悪口を言ったり、俺の心配をしたり。


お前は情緒不安定か?


「ルシアス様はもしかしたら私を日々送り迎えする苛立ちが募って私の首を一思いにポキッと……。」



リラは真っ青な顔をした。



いや、折らねぇよ?


迷惑だと思ったことねぇしな?


「ど…どうしよう…私、今思えばなんでルシアス様に殺されてないの?」


ん?どうした?

なんかいきなりスイッチ入ったか?


「たまに敬語忘れちゃうし、生意気だってよく言われるし、家賃も払ってないし、ご飯も作らせてるし、送り迎えもしてもらってるし……」


そう言えば人間は疑心暗鬼になりやすい生き物だったな。


もう少し観察するか。


「ナイト……私、なんで生かされてるのかな?そもそも私は人間でヴァンパイアのルシアス様からしたら超絶下等生物なのに…!私もヴァンパイアとして生まれたらよかったなぁ…。」


******************

sideリラ

自分が人間だと言うことに挫けそうになっていたら、ナイトが私の頭をつついた。


「???」


ナイトまさか…慰めてくれてるの?


やっぱり主人と違ってナイトは優しいね!


「ナイト……好き、大好き…いっそ狼に産まれてナイトのお嫁さんになればよかった…」


そう言いながらナイトのふさふさの体に抱きつくと、ナイトはいつも通り尻尾を振った。


「けど現実は現実、頑張っていい人を見つけて生活していかなくちゃね。明日から恋人探しでもしようかな?」

ガブ!

「……………へ?」


え??ナイトに肩噛まれてれる!?

甘噛みだけど!!


「な、ナイト!何するの!?お腹すいたの!?」


私を味見した??

まさかよっぽどお腹すいてるの!?


私がナイトに慌てて聞くと、ナイトは海の彼方を見てため息をついた。
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