生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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夢の使者

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sideリラ

ふわふわする。


感覚が曖昧でここがどこだか分からない。


真っ白の世界だ。


何もない、ただ私がいるだけ。



「リラ」


本当に?


ここは本当に私だけ?


誰かいる。


私の聞いたことのない声の誰かだ。


男の人の声。


「リラ。」


誰?


本当に誰?


どこに視線をやっても白い世界ばかり。


私以外は誰もいない。


「お前の命に関わる事だ。よく覚えておけ。」


顔もわからない誰かの声はいきなり私に命令する。


「誰なの?」


男の人の声だけはわかる。


「俺は…」


その人が自己紹介をしようとしていたら、いきなり声が途絶えた。


不思議に思っていると、真っ白な世界が不意に黒くなる。


辺り一面真っ暗だ。


ん?


いや、違う。


もうこれは夢じゃない。


現実だ。


あぁ、なるほど。

私は変な夢を見ていたんだ。

変すぎるかも。

誰かに警告される夢なんておそらく滅多にみるものじゃない。


命を狙われたりしてる、その意識が変な夢を見せたんだろうか。

目が覚めて意識がはっきりしたら、どうして自分がここにいるのかすぐに理解した。


起き上がってここがベッドだと確認できた。


大馬鹿な私は2人の顔面に耐えきれなくなり倒れたんだった。

なんて恥ずかしい。

絶対、未来永劫ルシアス様にからかわれる。


逃げる?


もう逃げる??


もう私ったら本当馬鹿、恥ずかしい。


喉乾いたなぁ…。


でも下の階に降りて、ばったりルシアス様に会ってからかわれるのは絶対嫌だ。


このまま干からびた方がマシ。


よし、干からびよう。


そして明日の朝は記憶喪失のフリでもしてやり過ごそうかな。

今のうちにルシアス様対策考えておこう。



*******************

sideルシアス


「チッ…。逃したか。」


逃げ足の速い奴だ。


「今回はかなり厄介ですよ。あちらさんは頭がいい上に足も速い。」


キジャの言うは今俺たちが取り逃した奴のことだ。

おそらく誘いの魔法を使った奴だろう。


「あぁ、確かに馬鹿じゃねぇな。」


屋敷でおかしな魔力の気配を感じたから飛び出してみれば、そこらかしこに魔力の気配があって特定ができなかった。


その理由はだ。


「その人形、向こうにも落ちてました。」


微量な魔力を含んだ人形がそこらかしこに落ちている。


お陰で特定は愚か姿すら見ることはできていない。


「用意周到だな。余程リラが欲しいらしい。」


俺は手の中でその人形を握り潰した。


「あんまりありませんけど、痕跡を追いますか?」


痕跡か……


「いや、深追いはするな。ルルドの顔に大怪我負わせた奴だ。今回はここで引く。」


おそらくこの人形をばら撒いた魔法使いは、ルルドをわざと


殺そうと思えば殺せていたはず。


ルルドの顔に2日も傷を残しておけるような奴だ。


敵ではないのか?


でもリラを狙っている。


何のためにリラを狙う?


やっぱりあの血がほしいからか?


「わかりました。じゃあ一旦戻りましょう。」


屋敷にはライアスがいるから襲撃されることはないだろうが、早く戻るに越したことはないな。


「先に行っててくれ、一個だけ人形拾ってから行く。」


キジャは頷き先に屋敷に戻っていった。


俺はとりあえず、形のある人形をさがさねぇと。


さっき人形を握り潰した自分を呪いたい。


頭に来た。


どいつもこいつもリラを狙いやがって。


いつか絶対引き摺り出してやる。


リラの命を狙ったことを後悔させてやるからな。


*******************

sideライアス


「なるほど。引いたのは正しい判断だよ。」


僕は戻ってきたキジャから話を聞いた。


ルルドに傷を負わせた奴だからね。

深追いなんかするものじゃない。


「団長の判断です。」


ルシアスは考えていないようでよく考えてる。


「それより僕はリラの様子を見てくるね。何もないとは思うけど少し心配だから。」


それにもう起きているかもしれない。


今回のこと、話すべきかな?


怖がるからやめた方がいい?


リラの様子を見てからにしようかな。


リラの部屋までいきノックをするけど返事がない。


「入るよ。」


ドアを開けるとリラが背を向けて眠っていた。

近くに行き頭を撫でると、リラの心臓の音が速くなる。


なるほど、寝たフリかな?


もしかしたらさっきの倒れた理由が恥ずかしくて起きれないとか?


可愛いよね、本当に。


少し遊んであげようか。



「寝顔が可愛いね。」


ドキッ!!


「ずっと見ていられるくらい可愛い。」

ドキッ!!


本当に愉快な心臓だね、リラ。


リラをいじめたくなるルシアスの気持ちがよく分かる。


反応が可愛いからきっといじめてしまうんだろうね。


だけど、僕はでいないとリラが混乱するからね。



今日の意地悪はこのくらいで。


「ゆっくりおやすみ。」
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