生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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sideキジャ

「怪我の方はほぼ大丈夫だね。」


ライアス様と治癒魔法を使い続けて30分が経った。


流石に堪える。


それなのにライアス様は顔色一つ変えない。


持ってる魔力の桁が違う。


王族と貴族はこうも違うのか。


「意識が戻りませんね…。」


怪我はほぼ完治して息はあるけどルルドは目を覚さない。


「そもそも催眠魔法をかけられていたからね。僕が気絶させてトドメを刺したようなものだけど…。」


ライアス様は困ったように笑った。

「結構優しくしたつもりだったんだけど、怪我人にする事じゃなかったね。」


ライアス様は冷徹なイメージがあって部下や仲間をそこまで大切にしないと勝手に思っていた。


だけど大違いだ。


ルルドを殺さずちゃんと取り返してこうして治療までしてる。


その点は団長とよく似ていた。

こんなにも慈悲の心があるなら団長ともうまくやれるはずなのに。


この兄弟は謎だ。


******************

sideリラ

「リラ!」

私がルシアス様と現れたら、キジャさんが立ち上がった。


「キジャさん!」

私がルシアス様の腕から降りようとしたら、ルシアス様は私が足を挫かないように体勢を低くして降ろしくれた。


「ありがとうございます。」


いつもいつも、あなたは本当に優しい。

「リラ、無事でよかった。」

キジャさんは私の近くに来て安堵していた。

「キジャさんも無事でよかったです!」

大きな怪我もしていないみたいだし、私も安心だ。


「で?あれの説明は?」
「///////」


ルシアス様は私の肩を抱き寄せて、キジャさんに聞いた。


「ルルドは催眠魔法にかけられていました。かけた奴はおそらく、前回俺らが取り逃したあの人形の魔法使いだと思います。」


前回取り逃した?

私の知らない所でこの2人は動いていたんだ。

「どうしてそう思う?」


私は口を挟む隙がない。

「奴は高度な空間魔法を使っていました。さらにはルルドの擬態も相当なもの。そんな魔法使いがこの辺に何人もいるとは考えにくいです。」 


私はいきなりルシアス様に抱き上げられた。

「っ!」
「確かにそうだな、前回と同一人物だと俺も思う。」

私が2人の顔を交互に見ていると、次はルルドさんを抱き上げたライアスが近くに来た。


「大丈夫?リラ。」


心配そうな顔をしてる。

こんなに誰かに心配させたらダメね。


「うん!大丈夫だよ!ピンピンしてる!」

だから安心して、ライアス。

私は本当に怪我なんかしてないし、元気だから。

「よかった。1人で森に逃げたって聞いた時はどうしようかと思ったよ。」


ライアスは相当な力持ちだ。

ルルドさんを片手で抱いて私に手を伸ばしてくる。


「コイツはうちに連れて帰る。詳しい話はまた後日、お前の家で話す。」

ルシアス様はあからさまに一歩下がってライアスの手が届かないようにした。

「少人数でいると魔法使いがまた襲ってくるかもしれないよ?」


ライアスの言う通りな気がするのは私だけ…?


「大丈夫だ、俺の顔を見て逃げ出した奴だからな。わざわざ襲ってくるような真似はしないだろう。」


どうやら私だけだったみたい。


「わかった、じゃあ明日にでも話し合おうか。今日はここで解散だね。」


「明日昼ごろ行く。」

「俺もそのくらいに出向きます。」


「わかった。…リラ、また明日ね?」

「うん、また明日!」


私とライアスの会話以外、業務連絡にしかきこえない。

なんて無駄のない会話だろう。


って、あれ??


「え??」


ライアスとキジャさんは??


あれ??


さっきまで目の前にいたのに。


「お前には見えない速さで帰った。」


答えをくれたのはルシアス様。

「なるほど…」


それにしても速すぎる。

一生着いていけないんだろうな…。


「さて。俺らも帰るか?」

ルシアス様のお屋敷に帰るのは久しぶり。

何だか今からワクワクしてきた。

「はい!」

今日は帰ってゆっくり休もう。

本当に散々だったから。


「………お前忘れてねぇよな?」


何??


ルシアス様が呆れているような気がする。


「何をですか?」

私何かルシアス様にしたっけ?


「…お前、嘘だろ…。」


なに?何のこと??


「ちゃんとわかるように言ってください!」


優しいと思ったけどやっぱり私に意地悪するの!?


「ドレス着た時をよく思い出してみろ。」


ドレス着た時?

………………

………………

………………


「////////////////」


あ!!あれだ!!

あれ!!!!!


私がルシアス様にせがんだあれだ!!!


「そ、そんな…あ、あれは違います///忘れてください!」


何でまだ覚えてるの!?


私は逃げるのに必死で何も覚えていなかったのに。


「ちゃんといい子にできていたからな、ご褒美くらいやらねぇとな?」


ルシアス様がまた悪い顔をしてる。


「い、いえ、大丈夫です////」


自分の行いをこれほどまでに恥じる日が来るなんて。


「ンッ/////」


いきなりキスするなんてずるい。

「ンッ////」


しかもこのキスだ。


私はルシアス様の腕の中で蕩けていた。


「今夜は死ぬほど可愛がってやるよ、リラ。」
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