生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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魔法薬

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sideリラ

ダリアちゃんに(頬に)愛のキスをされてから1時間。


私たちは、ダリアちゃんがボコボコにして捕まえた男を縛り上げてソファーに座らせていた。


「私たち完璧だね!私は男を、リラちゃんは薬を手に入れた。」


「そうだね、いいコンビ。」


ダリアちゃんの捕まえた男が飲もうとしていた薬は揉みあっている時に地面に落ちて割れてしまったらしい。

私は渾身の力で殴られて、頭の中で星が舞ったけど結果的にそれは必要な対価だった。


「ダリアちゃん、私クロウ先生呼んでくるよ。」


ダリアちゃんが見張りなら安心だ。

私は鈍いし弱いから、捕まえた男が暴れて攻撃してきたら押さえられないかも。


「1人じゃ危ないよ!こんな夜中に!」

ダリアちゃんならそう言うと思ったよ。


「大丈夫、私にはこれがあるから。」


私は自分の左手の指輪を強調した。


「何かあれば語りかけろって…本当に効果あるのかな?」


たかが指輪、そう思うよね。

「ルシアス様がそう言ってるんだから多分大丈夫だよ。」

そんなつまらない嘘をつく人じゃない。

「まぁ、そうだね。王子様で騎士でリラちゃんの旦那様だもんね~!ラブラブ~」

またダリアちゃんはからかって…


「もうその話は後!私行ってくるね!」


ダリアちゃんに冷やかされたから少し顔が赤くなっちゃった。


「あー!待って待って!せめてこれ持って行って?」


ダリアちゃんは一瞬消えて一瞬で戻ってくる。


ダリアちゃんの手に握られていたのは、ラルフがよく使う包丁だった。


「こ、これ??」

「うん!これ!ちゃんと握りしめててね!ヤバい奴は刺していいから!」


いやいや、ダリアちゃん。


「これ逆に私がヤバい奴だって思われるんじゃ…」


真夜中に包丁を握りしめた女、そんなの怖すぎるよ。


「いいの!とにかく持ってて!話しかけてきた奴全員刺していい!隠蔽も死体もクロウ先生が何とかするから!」


なるほど、全部クロウ先生に押し付けるんだね。


「わ…わかったよ。」


クロウ先生、ごめんね。


大丈夫、変な人に会わなければ死人を出さずに済む。


気をつけて行こう。

「よし!じゃあいってらっしゃい!」


誰も死なせないために、私は素早く行って素早く帰ろう。


「うん!行ってきます。」

意を決してお店を出た私だけど、この後大変なことになるとは知らずに呑気にクロウ先生の家に向かった。


*********************

sideクロウ

「水浴びは終わったか?」


人狼2人は全裸で堂々と俺の元へ戻ってきた。


「はい、もう大丈夫です。」

「俺も大丈夫でーす!」


2人とも完全復活でよかった。

それよりも……

「お前ら服は?」

どこかに捨ててきたのか?


「あまりに酷い悪臭だったんでクマの口に突っ込んできました。」

答えたのはラルフだった。


「俺は猪に巻いてきました!」


ルディも予想の斜め上を行く答えを出した。


「そうか。もう何を聞いても驚かない。とりあえず服を着て来い。」


ガサッ!ガサッ!!

ん?

何の音だ?


「いやぁぁああ!!!!」


突然の悲鳴に俺たち3人は驚いた。

「!!」
「!!」
「リラの声!!リラの声!!」


さすが惚れ込んでいるだけある。

ルディだけがその悲鳴の主に気付いた。


「リラ!!」

「待て!!お前今裸!!」


ルディはリラのことになると周りが見えなくなる。


ラルフが止めるのもお構いなしに、全裸で森へ走って行った。

「ったく、あの馬鹿!!」


ラルフは家の中に走ってバスタオルを巻いた姿で出てきた。

右手にはルディ用のバスタオルもある。


「頼めるか?」


俺はここを離れられない。

この謎の死骸を取るやつはいないだろうが念のため。


「はい。」


ラルフは人狼なだけあって人の姿でも足が速い。


いっそ変身した方が良かったんじゃないのか?


冷静に見えて実はすごく焦っているのかもしれない。


「まだまだ全員子供だな。」


先が思いやられる。

********************

sideルディ

「リラー!!!」


明らかに何かあった悲鳴だった。


そもそもなんでこんなとこに??

ダリアに連れて行かれたんじゃないの??

「リラー!!」


こんなに大声で叫んでるのに何で返事がないんだ?


「ルディ、この全裸!待て!」


ラルフが俺を追いかけて来てるけど今はそれどころじゃない。



「やだぁぁぁ!!」


奥の方だ!!


俺はすぐさま森の奥へ走った。


「リラ!!!」


俺が走っていたら…


「え??え??」


とんでもないリラを見つけてしまった。


リラは全身血だらけ、右手には包丁、さらには…


「いやぁぁぁ!!!来ないで!!!来ないで!!!」


錯乱してる。


「リラ、落ち着け、な?」


リラは包丁を振り回していて迂闊に近づくと怪我をしそうだ。


「リラ、どうしたんだ?」


ラルフは俺の胸にタオルをドン!と押し当てた。


「知らない、けどただ事じゃない。」


明らかに様子がおかしい。


「いやぁぁああ!!!」


リラは何か見えないものと戦ってるみたいだった。


「やめて!!来ないで!!」


すごく怯えてる。


「ルシアス様!!助けて!助けて!!!ルシアス様!!」


「ラルフ、リラの後ろに回って押さえててくれ!俺は包丁を取る!」


リラには悪いけど、とにかく包丁だけでも取り上げないと。


リラ自身も怪我をしてしまう。


「分かった、気を付けろよ。」
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