生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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子犬

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sideルシアス


夢のような夜を思い出して、寂しさが募る日が続く。


本来ならここの家にいて、何をするにも一緒にいるはずなのに。


なんのために結婚したんだか。


「はぁ……。」


仕方ない。


会うことはできないが見守ることはできる。


今日はちょうど仕事も入っていない。


会いにいってやりたいが、決死の思いで姿を隠しているリラに申し訳ない。


そもそも姿を隠すのに店なんてやってていいのか?


全く理解ができない。


様子を見るだけならバチも当たらないだろう。


魔法で変装して中に入って様子を見るか。


全く……夫である俺がどうしてこんな変態紛いな事をしなくちゃならない?


財布だけ持って家を出ると…


「うぉっ!!」


本当に、純粋に驚いた。

「………。」

「はぁ??」




俺の家のドアの前に子犬がいる。



「どっから来たんだ?犬っころ。」


かなり小さい耳の垂れた犬だ。


正直ものすごく可愛い。


「ったく…迷子か?」


しかも何か咥えてるな。


「なるほどな…ただの犬ってわけじゃなさそうだ。」



が俺宛に何かを書いたらしい。


「ミルクでもやるからゆっくりして行け。」


その間に俺はこの手紙を読ませてもらおうか。



*************

sideリラ


ペロ、ペロ、ペロ……


ルシアス様、本当にミルク出してくれた。


や…優しい。


「地下でおかしな薬を売り捌いてる奴がいるってことか……どうやってこの情報を掴んだんだか…。」


ルシアス様はため息をついた。


私はちょうどミルクを飲み終わり座っていた。


「もう飲んだのか?」


!!!


「お前、見れば見るほど可愛い顔してるな。」



ルシアス様は本当に驚異的な美形だ。


もはやその顔面の良さは凶器。


気軽に近づけないでほしい。


「きゅーん。」


私が鳴いたらルシアス様が真顔になった。


「よし……。」


ルシアス様は私を片手に抱いていきなり外へ出た。


私は訳がわからなくなってルシアス様の腕の中でキョロキョロする。


「きゃうん!!」


そうしているととんでもない速さでルシアス様が動いた。


「驚いたか?悪かったな。」


????


景色を見るとここは街だった。


え?


街になんの用?


まさか私を売り飛ばすつもり!?



そ!そんな!!ルシアス様の人でなし!!!


人じゃないけど!!


********************

sideルディ


あぁ…….なるほどな。


あの野郎、意外と頭弱いんだろうな。


俺を散々バカ扱いしてくるけど絶対あいつの方が馬鹿だな。


馬鹿な俺でもわかるよ。


「え?ルシアス様は何してるの?」


ダリアの疑問は最もだった。


街で1番の宝石店に入って行った。


そして見た感じ子犬(リラ)の首輪を特注している。


「多分、あれだよ。本物の馬鹿なんだと思う。」



普通さ、変な手紙持ってきた犬に馬鹿高い宝石のついた首輪を付けようとするか?


もういっそ飼おうとか思ってたりして。


多分あれだ、頭いかれちゃったんだろうな。


うん、そうだ、そうだ。


********************* 

sideリラ


「あぁ、それで頼む。どのくらいでできる?」


ルシアス様はきっとお金が無限にあると思ってる。

そうでなければ野良犬に宝石付きの首輪をつけようとは思わない。


「そうですね…このサイズの首輪ならすぐにご用意できます。」


「そうか。…リリ、どんなのが好きなんだ?」



え?リリ?もしかして私に名前つけた?



「きゅーん…」


本当にどうしよう。


早くこの人を止めないと。


無駄遣いにも程がある。


「そうか……。この店にある1番高い宝石を。」


違う違う違う!!!


「わん!わん!」

「そうか、そんなに嬉しいのか、可愛い奴め。」



違うってばー!!!


「わん!わんー!」


無駄遣いはダメー!!!!


「リリは元気がいいな。」


爽やかな笑顔を見せてくるルシアス様。



もうダメだと確信した私は黙り込むことにした。



********************

sideラルフ


「えー……ほんとに買っちゃってるよ。」


ルディがかなり呆れた様子でそう言ってきた。


「相当な犬好きなんだろうな。」


あの宝石の値段は俺らが一生働いてやっと買えるような額だ。


「犬好きっていうか……なんか私、ルシアス様がわからなくなってきた。」


ダリア。


そもそも、元から得体の知れない男だろう。


王族で騎士で底知れない魔力を持つ男。


「きっと…わかる奴なんてそうそういない。」


ある1人を除いたらな。


その哀れな1人はたった今あの力強い腕に抱かれて出てきた。


かわいそうに。


ギラギラした首輪をつけられた哀れな子犬は明後日の方向を見て絶望していた。
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