生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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助っ人

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sideルシアス


俺とキジャがデカい魔物に苦戦していたらいきなり後ろから水の玉が飛んできた。



「なんだ?」


振り返るとおかしな連中がいる。


顔を布みたいなもので隠している女と男が2人。


顔を隠したってわかる。


ダリアとラルフだな。

もう1人は俺がいろいろと話を聞きたいあの魔法使いだ。


「団長、片付けますか?」


俺は記憶が戻っているが、キジャにとっては赤の他人。


「いい、こっちの味方だ。」


ちゃんと伝えておかないと、うっかり殺してしまったなんて事になったら大変だ。


「……分かりました。」


いろいろ聞きたい事はあるだろうが話は後だ。

今は目の前の化物を倒さねぇと。


攻撃の隙を伺っていたらダリアが近くにあった石を投げ始める。


それと同時にラルフが狼の姿に変身した。


ラルフとダリアと魔法使いは化け物の視界に入るところをわざとチョロチョロしている。



囮になってくれるらしい。


「キジャ。」


「分かってます。」



さすが何年も一緒にいただけあるな。


「じゃあさっさと殺るぞ。」

「はい。」



俺たちは再び剣を構えて化け物に飛びかかって行った。


*******************

sideルディ


「ルディ!!ダリアちゃん達が加勢してる!」


リラは焦って俺を呼びつけた。


「マジか!!」


水を取りに行っていた俺は水を持って帰らずにリラの元へ急いだ。


「ほら!見て!!」


リラは気が気じゃないと言う表情だ。


無理もない。


旦那と友達と先生が得体の知れないものと戦ってんだからさ。


「結構苦戦してるな………。」


それより、ラルフ達が付けてる変な布はなんだ?


あんなんで前見えてるの??


「ルディ、ライアスに助けを求めた方がいいんじゃない?」


クロウさんは最後の手段であの男を待っている。


「まだ早いよ。…大丈夫、全員タフだからこんなんじゃへばらないよ。みんなの動きが悪くなってきたら俺と一緒に行こう?」


出来るだけリラを外には出したくない。


嫌な予感がする。


野生の勘ってやつだろうか。



「うん……」


心配そうだな。


「リラ!こんな事でオロオロしてどうする!すっごい悔しくてたまらないけど、リラはコイツのお嫁さんなんだろ!」



本当に本当に悔しいけどさ…


「アイツは強いんだからそんな顔しないでやってよ。」


********************

sideリラ


ラルフは無理して笑っていた。


自分の悔しさを押し殺して私に言葉をくれたんだ。


「……うん、ありがとう。」


そうよ、私が動揺してどうするの。


うまくタイミングを見て行動しなくちゃいけないんだから、こんな事でオロオロしちゃダメよ。


しっかりしなさい、私!!


「ほら、見てみ?」


ルディがダリアちゃんを指した。


「ダリアめっちゃ楽しそうに石投げてるよ?」


本当にその顔には笑顔が浮かんでいる。

そして、次から次へと全員が化け物に攻撃を与えていた。



「ほ……本当だ。…楽しんでるのかな…?」


ダリアちゃん、あんな怖い顔するんだ…。


「アイツ、昔から石投げるの好きだったからな。何年ぶりかに投石できて嬉しいんじゃない?」


……一体どんな生活してたのよ。


「ダリアちゃんが楽しいなら私はそれでいいと思うよ?」


多分ね。


「リラ、そうやってアイツを甘やかしてたら将来とんでも、あ!!!!」
「あ!!!!」


私とルディは同じタイミングで声を上げた。


化け物に飛びかかった全員がかなり激しく吹っ飛ばされたからだ。


私とルディは立ち上がり目を凝らす。


「……大丈夫。全員、まだ動けてる。見た感じスピードやパワーは落ちてない。」


ルディはいつもおちゃらけているけど、いざと言うときは本当に心強い。



ルディは変なことを言っても決して冷静さを失わない。


私と同い年なのに本当にすごいところだと思う。


「けど……この攻撃がまともに入らない時間が続くなら俺たちの出番かも。」



戦闘態勢の維持はできているけど、完璧という訳ではない。


手練れがこんなに揃っていてこんなにも苦戦しているんだから当たり前ね。


「うーん……悩ましいな。」


ルディはライアスを呼ぶか呼ばないか迷っている。


そんな中、私はふとテーブルに置いてある地図が目に入った。


その地図は今回泳がせていたあの男がどこにいるか分かる地図。


戦闘に入った瞬間から気にもとめていなかったけど、今は不意に気になってしまった。


その地図の印が動いたような気がしたから。


「………え?」


気がした、だけじゃない。


赤い印はジリジリと動いている。


「ルディ……」


私はその印が進んでくる方向を見て寒気がした。


「んー?」


ルディは水晶に映し出されている戦闘に夢中だった。



「ねぇ………ルディ。」


私は震える手で地図を指す。


私の顔を見たルディが心配そうに私の頬に触れた。


「どした?気分悪くなった?」


ルディは私が地図を指していた事に気づく。



ルディもそれを覗き込みようやく状況を理解したらしい。



「嘘だろ。」



赤い印は急にピタリと止まった。


その止まった場所の店の名前は、ヴィクトリー。



たった今、私たちがいる店だった。
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