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言葉のない会話
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sideリラ
一瞬で背筋が凍った。
薬を持っている男がすぐそこにいる。
もしも例の男が薬を飲んで魔物に変身して私たちを襲ってきたら…
無知な私でも、最悪な状況に陥る事は安易に想像できる。
「ルディ……どうしよう…」
もしも、水晶に映し出されているような化け物になったら私たちに勝ち目はない。
向こうは5人で太刀打ちして苦戦しているんだから。
「そうだなー。こんな街中で変身されたら関係ない人も巻き込むだろうし、そもそも俺たち2人じゃどうにもならない。」
ルディはものすごく冷静だった。
なんでそんなに冷静なの?
驚きすぎて逆に一周回ったとか!?
「ルディ…とにかく、ライアスに会いに行こう?ライアスのお屋敷なら周辺に家や人もいないし…。」
もう誰かに助けを求めないと私たちが助かる道はない。
「それもそうだな!よし、じゃあリラ深呼吸。」
ルディは私の両肩に優しく手を置き、深呼吸しろと催促する。
ルディに言われた通り深呼吸したら少し心拍が落ち着いてきた。
「そんなに怖がらなくても俺は足が速いから逃げ切れる。絶対リラを殺させないし俺も死なないからちょっと落ち着こうな?」
ルディの屈託のない笑みに入りすぎた力が抜けていく。
「うん……ごめんね、ちょっとびっくりしちゃって…。」
ルディみたいにちゃんと出来なくて、本当にごめん。
「リラは女の子なんだから怖がって当然。とりあえず俺を信じて背中に乗っててくれる?」
ルディは狼の姿になるつもりらしい。
「うん。もちろん!」
私の答えを聞いてルディは照れたように笑った。
「やった!じゃあ変身したらすぐに俺の背中に乗ってね!」
ルディのこの笑顔が私は好き。
太陽みたいに暖かくて安心する。
「あ、そうそう。これは持ってて、一応。」
ルディはカウンターをヒョイっと乗り越えると私に包丁を渡してきた。
「え??」
包丁持って移動するの?
「出来るだけ危ない目には遭わせないようにするけど、一応ね。俺が動けなくなったり、リラが危なくなったりしたらブスッとやってやれ!」
こ…この包丁をブスッと…
「う……うん。」
出来るだけブスッとやらないように努めよう。
いざ誰かを刺せと言われて刺せる人はきっと少ない。
私が包丁を見ていると、ルディがお店の表のドアを開けた。
そして……
「おぉ……」
ルディはそのまま姿を変える。
久々に見た狼はやっぱり大きい。
ルディは尻尾をブンブン振りながら体勢を低くしてくれた。
「お願いします。」
私がルディの背に乗るとルディが体勢を戻す。
包丁を自分のベルトに挟んでルディの背の毛をしっかりと持った。
バン!!!
いきなり大きな音がしたから振り返ると、裏口が破られて男が1人立っている。
「ルディ!!」
男は右手に空になった瓶を持ち、虚な目で私たちを捉えた。
「行って!!!」
私は咄嗟に叫んだ。
ルディは私の声と同時に店を飛び出す。
もうあの男は薬を飲んでしまった。
1秒でも早く逃げてライアスを呼ばないと。
「ルディ、ライアスのとこに着くまで頑張って。私も頑張るから!!」
足手まといにならないように。
ルディは私の言葉に一度吠えて応えてくれた。
どうか….無事にライアスの元へ辿り着けますように。
*********************
sideライアス
「ライアス様…。」
ルルドがようやく嫌な気配に気付いた。
「大丈夫だよ、そんなに怖がるような物じゃない。」
嫌な気配と、愛しい子の気配が混ざっている。
「ルルド、僕は少し外で対処してくるから先に行っててくれる?」
きっと、向こうは1人でも戦力が欲しいはずだよ。
「かしこまりました。…ですがお一人で大丈夫ですか?」
ルルドは一体誰に聞いてるのかな?
僕が笑って見せたらルルドも笑った。
「申し訳ありません、愚問でしたね。」
そうだね、僕は弱くはないから。
「うん、後は頼んだよ。」
「はい。」
ルルドが僕の作戦通り動いてくれる。
ルルドは現在、リラたちの記憶はないけど僕が大まかな説明はしておいたからきっと大丈夫。
ルルドは頭がいいからね。
「さて……片付けを始めようか。」
可愛いあの子が恐怖で泣いてしまう前に。
*********************
sideリラ
「ルディ!!追いつかれてる!!」
私はルディの背の上で包丁を握りしめた。
あの男は薬によって変身した。
あの薬にはどんな成分が入っているか知らないけど、男は四足歩行になり熊のような体格になって私たちを追いかけている。
足の速さはルディとほぼ互角、体格を見る限り力もかなりありそうだ。
近づいてきてルディに何かするようなら絶対この包丁を投げつけてやる!
「見えてきたよ!!!もう少し頑張って!!」
ライアスのお屋敷にもう少しで着く!
敵がどれだけ距離を縮めたか確認するために後ろを向く。
その時に私の目にとんでもない光景が目に入った。
「ルディ!!避けて!!」
敵はもう目前に迫っていた。
そして大きな爪のある手を振りかざしている。
私の声にいち早く反応したルディはうまく攻撃を避けてくれた。
ルディは敵の顔面を後ろ足2本で蹴り上げて振り返る。
おかしな悲鳴を上げた化け物は後方へよろけて私たちを睨み付けた。
「きゃ!!」
不意にルディが体を大きく動かして私を地面に放り投げる。
思い切り転がって行った私をルディは見つめていた。
目と目を見たら通じ合うと誰かに聞いたことがある。
今がその時だった。
「わかった!!!ライアス呼んでくる!!!!」
一瞬で背筋が凍った。
薬を持っている男がすぐそこにいる。
もしも例の男が薬を飲んで魔物に変身して私たちを襲ってきたら…
無知な私でも、最悪な状況に陥る事は安易に想像できる。
「ルディ……どうしよう…」
もしも、水晶に映し出されているような化け物になったら私たちに勝ち目はない。
向こうは5人で太刀打ちして苦戦しているんだから。
「そうだなー。こんな街中で変身されたら関係ない人も巻き込むだろうし、そもそも俺たち2人じゃどうにもならない。」
ルディはものすごく冷静だった。
なんでそんなに冷静なの?
驚きすぎて逆に一周回ったとか!?
「ルディ…とにかく、ライアスに会いに行こう?ライアスのお屋敷なら周辺に家や人もいないし…。」
もう誰かに助けを求めないと私たちが助かる道はない。
「それもそうだな!よし、じゃあリラ深呼吸。」
ルディは私の両肩に優しく手を置き、深呼吸しろと催促する。
ルディに言われた通り深呼吸したら少し心拍が落ち着いてきた。
「そんなに怖がらなくても俺は足が速いから逃げ切れる。絶対リラを殺させないし俺も死なないからちょっと落ち着こうな?」
ルディの屈託のない笑みに入りすぎた力が抜けていく。
「うん……ごめんね、ちょっとびっくりしちゃって…。」
ルディみたいにちゃんと出来なくて、本当にごめん。
「リラは女の子なんだから怖がって当然。とりあえず俺を信じて背中に乗っててくれる?」
ルディは狼の姿になるつもりらしい。
「うん。もちろん!」
私の答えを聞いてルディは照れたように笑った。
「やった!じゃあ変身したらすぐに俺の背中に乗ってね!」
ルディのこの笑顔が私は好き。
太陽みたいに暖かくて安心する。
「あ、そうそう。これは持ってて、一応。」
ルディはカウンターをヒョイっと乗り越えると私に包丁を渡してきた。
「え??」
包丁持って移動するの?
「出来るだけ危ない目には遭わせないようにするけど、一応ね。俺が動けなくなったり、リラが危なくなったりしたらブスッとやってやれ!」
こ…この包丁をブスッと…
「う……うん。」
出来るだけブスッとやらないように努めよう。
いざ誰かを刺せと言われて刺せる人はきっと少ない。
私が包丁を見ていると、ルディがお店の表のドアを開けた。
そして……
「おぉ……」
ルディはそのまま姿を変える。
久々に見た狼はやっぱり大きい。
ルディは尻尾をブンブン振りながら体勢を低くしてくれた。
「お願いします。」
私がルディの背に乗るとルディが体勢を戻す。
包丁を自分のベルトに挟んでルディの背の毛をしっかりと持った。
バン!!!
いきなり大きな音がしたから振り返ると、裏口が破られて男が1人立っている。
「ルディ!!」
男は右手に空になった瓶を持ち、虚な目で私たちを捉えた。
「行って!!!」
私は咄嗟に叫んだ。
ルディは私の声と同時に店を飛び出す。
もうあの男は薬を飲んでしまった。
1秒でも早く逃げてライアスを呼ばないと。
「ルディ、ライアスのとこに着くまで頑張って。私も頑張るから!!」
足手まといにならないように。
ルディは私の言葉に一度吠えて応えてくれた。
どうか….無事にライアスの元へ辿り着けますように。
*********************
sideライアス
「ライアス様…。」
ルルドがようやく嫌な気配に気付いた。
「大丈夫だよ、そんなに怖がるような物じゃない。」
嫌な気配と、愛しい子の気配が混ざっている。
「ルルド、僕は少し外で対処してくるから先に行っててくれる?」
きっと、向こうは1人でも戦力が欲しいはずだよ。
「かしこまりました。…ですがお一人で大丈夫ですか?」
ルルドは一体誰に聞いてるのかな?
僕が笑って見せたらルルドも笑った。
「申し訳ありません、愚問でしたね。」
そうだね、僕は弱くはないから。
「うん、後は頼んだよ。」
「はい。」
ルルドが僕の作戦通り動いてくれる。
ルルドは現在、リラたちの記憶はないけど僕が大まかな説明はしておいたからきっと大丈夫。
ルルドは頭がいいからね。
「さて……片付けを始めようか。」
可愛いあの子が恐怖で泣いてしまう前に。
*********************
sideリラ
「ルディ!!追いつかれてる!!」
私はルディの背の上で包丁を握りしめた。
あの男は薬によって変身した。
あの薬にはどんな成分が入っているか知らないけど、男は四足歩行になり熊のような体格になって私たちを追いかけている。
足の速さはルディとほぼ互角、体格を見る限り力もかなりありそうだ。
近づいてきてルディに何かするようなら絶対この包丁を投げつけてやる!
「見えてきたよ!!!もう少し頑張って!!」
ライアスのお屋敷にもう少しで着く!
敵がどれだけ距離を縮めたか確認するために後ろを向く。
その時に私の目にとんでもない光景が目に入った。
「ルディ!!避けて!!」
敵はもう目前に迫っていた。
そして大きな爪のある手を振りかざしている。
私の声にいち早く反応したルディはうまく攻撃を避けてくれた。
ルディは敵の顔面を後ろ足2本で蹴り上げて振り返る。
おかしな悲鳴を上げた化け物は後方へよろけて私たちを睨み付けた。
「きゃ!!」
不意にルディが体を大きく動かして私を地面に放り投げる。
思い切り転がって行った私をルディは見つめていた。
目と目を見たら通じ合うと誰かに聞いたことがある。
今がその時だった。
「わかった!!!ライアス呼んでくる!!!!」
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