生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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迷路

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sideダリア


間に合って!!!お願い!!


私はさっき聞いてしまった。


が下した恐ろしい命令を。


たまたま近くにいたからそのことに気づけたけど、リラちゃんが見つからないんじゃ意味がない。


ライアス様と一緒にいるだろうけど、うっかりリラちゃんを1人にされたらリラちゃんが殺されてしまう。


私はドレスを持ち上げて辺りを見ながら走る。


とにかくリラちゃんを見つけるの。


私が守らないと。


ここはヴァンパイアの巣窟。


リラちゃんなんて一捻りで殺せてしまう。


狼の群れの中にたった1匹の羊がいるようなもの。


そんなの、考えなくったって結末は見えてる。


私がそばにいて守らないと!!


私が走ってお城を出ようと廊下の角を曲がると…


「っ!!!」


しまった!一足遅かった…。



「ライアス様、先程ルルド様がお呼びでした。何やら早急にとのことです。」


さっき、あの女に命令されていた召使いだ。


「そう、わざわざありがとう。」


リラちゃんを1人にさせようとしてる。


「私はここでいいので、ライアス様はどうぞルルド様の元へ。」


そうはさせない。


「ごめんね…また今度。」


ライアス様はリラちゃんに優しく微笑んで私の隣を一瞬で通り過ぎた。


私がピッタリ張り付いててやる。



「そして、あなたは……」



召使いがリラちゃんに触ろうとしてる。


ふざけんじゃない!!!


「もー!!!どこ行ってたのー!!!」


私の大声に召使いはパッと手を引く。


ライアス様がいない今、私がリラちゃんを守らないといけない。


「え??だ、ダリアちゃん??」


いきなりの私の演技にリラちゃんは戸惑っていた。


「探したんだよ?」


会場へ戻る?


外へ出る?



どっちが危険だろう。


会場は戻れば人目が多いからあっさり殺されることはないけど、あの女を刺激することになる。


外へ出れば私たちは2人きり。


逃げ場も多いし、あの女を刺激しなくて済む。


しかも…私がこの男を殺すことだってできる。


よし、外へ逃げよう。


「行こう?会場にいてもつまんないよ!外いこ!外!」


私は戸惑うリラちゃんの手を引いて秒で外に出た。


そして迷路に迷わず飛び込む。


これなら自分も迷うリスクがあるけど、相手も同じこと。


「ダリアちゃん?一体どうしたの?」


とりあえずリラちゃんには状況をわかってもらわないと。


「このまま1人になったらリラちゃんは殺される。しばらく私と逃げ回って?」


こんな私の簡単で大雑把すぎる説明でリラちゃんはわかってくれた。


「わかった……私誰に狙われてるの?」


ここで慌てないのがリラちゃんの素晴らしいところ。


「カレン嬢。」


元々嫌いだったけど、リラちゃんを殺そうとしているのを見てもっと嫌いになった。


憎しみさえ湧いたよ。


絶対許さない。



「私が脅威になると思ってるのかな?」


それはそうだろうね。


「ルシアス様の心を奪えるのはリラちゃんだけだもんね!」


あの女は何よりもリラちゃんが邪魔なんだよ。


「そんなこと…ないよ。」


私もさっき見ていたけど、ルシアス様とあの女は会場内でキスしてたね。


私は横からその2人を見ていたけど、ルシアス様があのキスを楽しんでいるようには見えなかった。


「本当に、自信持って?リラちゃんを執拗に狙っているのが証拠。それより今は逃げ回らないと。なんとかクロウさんとも合流して逃げよう?」



向こうの力量もわからないのに適当に逃げたら逆にこっちが追い詰められるかもしれない。


「うん…、クロウ先生をどうやって呼ぼうか…。」


確かにそれはある。


「今頃、あの詐欺師顔負けの口のうまさでバリバリ仕事してるだろうしなぁ…。」


「それ褒めてる?」


「もちろん、最大の褒め言葉だよ。」



なんて言っていたら…


「きた!!」


さっきの召使いだ。


お城の大きな扉から出てきた。


とにかくリラちゃんを守れたらそれでいい。


*********************

sideリラ

「ダリアちゃん、こっち!」


さっきライアスと迷路を通っておいてよかった。


何となくだけどまだ道を覚えてる。


私がダリアちゃんの手を引いて走るのは初めてだ。


それが少し嬉しい。


いつも守られてばかりじゃダメ。


私だって大事な友達くらい守れないと。


「リラちゃん、道わかるの??」


「うん!わかる!」


も持ってる??」


ダリアちゃんの言うとは私の太腿に巻き付けているナイフのこと。


「うん!危ない時はブスッとやるよ!」


私だって死にたくない。


誰かを傷つけるのはすごく嫌だけど、それが私に向いた殺意なら別。


私だってやり返すよ。


やられっぱなしで泣くような女にはもうならない!


「さすが私の親友!」


ダリアちゃんみたいな格好いい女になる!


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