生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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脱出

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sideライアス


僕は上からリラとダリアを見ていた。


さっきの見え透いた嘘に騙されるほど僕は甘くない。


ルルドが僕を呼びつけるような真似をするわけがないんだよ。


ルルドは真面目だからね。


人選を間違えたから、自らの破滅を招く。


しかし……


「本当に賢い子だね…。」


複雑な迷路を順調に進んでる。

一度しか教えていないのに、よく覚えたものだね。



一方で、僕に嘘をついた彼は見事に迷路に苦戦している。


ダリアの判断も賢い。


咄嗟に外に出たのは正解だったよ。


人混みの方が返って危ない時もある。


すれ違いざまに首の骨を折られたり、頸動脈を切られたり、毒を盛られたり…


リラ相手なら簡単なことだからね。


リラ達と男の戦いを観戦しているのは僕だけじゃない。


隣のテラスではルシアスが、そのさらに隣のテラスにはカレンがいる。


カレンのあの形相を見るに、あの哀れな男はカレンの駒かな。



カレンのお気に入りの駒でなければいいけど。



ルシアスは状況に気づいたらしく、テラスから飛び降りようとしている。


いつもと違ってルシアスは冷静ではない。


ここは僕に任せてもらおうかな。


「ルシアス。」


僕がルシアスの手を掴み止めたらそれはそれは不機嫌そうな顔を見せてくる。


「離せ、お前に構っている暇はない。」


リラが優先、知ってるよそんな事は。


僕だってそうだ。


「知らないとは言え、せっかくに誘き寄せてくれたのにこの手を使わないの?」


突っ込んで助けに行ってもいいけど、ルシアスが我慢してやってきたことが全て台無しになるんじゃないの?


そうなれば僕も不利になる。


「そんなことしたらリラにも危険が及ぶだろ、は絶対に使うな。」


僕が言うのもアレだけど…



「過保護すぎるよ。」



それにもうすぐリラは迷路から出られる。


リラは賢いからね。


「過保護すぎるくらいでいい、人間は少しの怪我や病気が命取りになる。あんな迷路に閉じ込められて生きて出られるわけ」 「リラを侮らないで。」



ルシアスに守られているだけの弱い子じゃない。

「***********」
「やめろ!!」


僕は魔法の呪文を唱えた。



何の呪文かと言えば、罠を発動させる呪文。


あの迷路はただの迷路じゃない。


あの迷路は罠が張ってある特殊な迷路だ。


王族の子供が命の危険が迫ったときに逃げ込む最後の砦。


本来の使い方はあの迷路に敵を誘い込み、自分だけ脱出して魔法を発動させ、敵を殺す。


そんな使い方をするものだった。


「離せ!」


まさか助けに行くつもり?


有耶無耶に突っ込めば死ぬよ?


「騒がないでくれるかな、気絶させるよ?」


「おい、魔法を解除しろ!罠を発動させた奴しか解除できない!」



全く、ルシアスは本当にリラの強さをわかってない。


「騒ぐとに怪しまれるよ?」


カレンは何が起こったのかわかっていないらしい。


迷路を見て明らかに動揺してる。


「もういい、お前はそこで見てろ。俺が止めてくる。」

「ルシアス、さっきリラに道を教えてあるから。」


僕が言ってもルシアスはまともに聞こうともしない。


そんなときだった。

「っ!」


リラが迷路から飛び出してきたのは。



「リラ!」


ルシアスはまだリラの近くに行こうとしている。


「ダリアもいるんだから大丈夫だよ。」


ダリアもリラの後に出てきた。


2人とも泥だらけになってはいるけど怪我はしていない。


僕はその後にカレンを見た。


動揺と悔しさの入り混じった表情。


次の手を打たれる前にルシアスで相手をさせていた方がいいね。


「ルシアス、リラを守りたいなら自分の仕事はきっちりやって。」


僕は死体の回収をしようか。


とりあえず、脅威は去った。


*********************

sideリラ


聞いてないよ、ライアス!

何あの迷路!


悪魔じゃん!!


「リラちゃんが道を覚えてなかったら私絶対死んでた~!」


ダリアちゃんはそう言って私に抱きついた。


「ちょっとは役に…立てたかな?」


ダリアちゃんが喜んでくれていて嬉しい。


「もちろん!!今のリラちゃん、頼もしくてすっごく格好いいよ!」


胸の奥がじわじわ暖かくなっていく。


心の中に太陽を閉じ込めたみたい。


「ありがとう///」



嬉しかった。


少しでも自分が役に立てた。


ダリアちゃんのために動けた。


成長してる、私ならできる。


初めて自分にこんなにも自信がついた。


「あの男の人は気の毒だけど、助けてやる義理もないし早くクロウさん見つけよ?」


ダリアちゃんのこの男前な考え方も大好きよ。


「うん!でも堂々と入ってカレン嬢に見つかるのも嫌だからこっそり裏から入ろう?」


次また刺客を寄越されたら危ない。


「そうしよ!抱っこ!!」
「うわぁ!!!」


移動のことを考えたらダリアちゃんが私を抱っこするのは当たり前。



「お願いします!!」
「任せなさい!!」



絶対にありえないけど、いつかダリアちゃんの隣を走ってみたい。



お荷物じゃなくて、一緒に戦える友達になりたい。


きっとそんな日は一生来ないけど、夢見るのは自由だよね?
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