生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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噛み方

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sideルシアス

「リラ、待て。待て、だ。わかるよな?」


噛み方を教えて早数日。


リラはまだ乱暴に噛む癖を治せない。


それでも俺の首筋に噛みつきたくてうずうずしているリラは可愛い。


「優しく噛めないなら3日はなにもあげられない。」


信じられないことに俺の言葉を理解している。


悲しそうな顔をするからだ。


「優しく噛めるって約束できるか?」


俺が小指を出すとリラは少し首を傾げた。


そして目を輝かせる。


「こら、違う。約束、だ。」


完全に俺の小指ごといこうとしてたな。


「リラ、俺を見ろ。約束、できるだろ?」


リラは少し迷って俺と同じように小指を出す。


「そう、いい子だ。」


さすがは俺の妻だな。


根気よくやるか。


リラなら絶対にできる。


「ほら、約束忘れるなよ?」


俺が首筋をリラの方に向けたらリラの鼓動が上がる。


血への欲望は凄まじいみたいだな。


リラは一瞬で俺の肩を掴んだ。


この掴み方はがっつかれる。


「リラ。約束。」


約束、この言葉を言うとリラは手の力を弱くする。


「そうそう。」


本当によく理解してるな。


「優しく、な。」


できるよな。


俺ももう痛い思いはしたくない。



リラは俺の言う通り優しく噛み付いた。



「……リラ?」



飲まないのか?


リラはガジガジと俺の首筋を噛むだけだ。


これはこれで痛い。



「リラ、どうした?」


俺がリラを離すとリラは少し動揺している。


なんで動揺してるんだ?


そして焦らされてる顔をしてるな。


飲みたくても飲めない…とか?


「リラ、ちょっと口開けてみろ。」


牙がまだ幼いのか?


いや、でもリラは17だ。


17で子供の牙な訳はない。


いや…状況が状況だ。

ありえないことはない。


********************

sideリラ

ルシアス様が口を開けろと言った。

血が飲みたくて私はソワソワする。


「リラ、少しでいい。」


ルシアス様が私の口元に触れてきた。

その指に噛みつきたいけど、優しく噛むって約束したからそれはできない。


素直に口を開けたらルシアス様は驚いた顔をした。


「マジか…」
「あがっ…」


ルシアス様は私の上顎を指でクイっと上げる。



「これはまた随分と可愛いのがついてるな。」


手を外そうとしてもルシアス様は力を緩めてくれない。


私の口の中は何かおかしいのかな?


「仕方ない、しばらくは雛の餌付けだな。」


雛の餌付け??


何が雛??


「リラ、約束守れるよな?」


ルシアス様との約束なら守れるよ。


優しく、優しく、だよね。


私が頷いたらルシアス様が自分の首筋を引っ掻いて血を出す。


「じゃあ、召し上がれ。」


私はその血に魅せられ…


「そうそう、ゆっくり、優しく。」

「っ!!んっ…ンンッんくっ…!!!」


溺れていく。



ルシアス様の血は暖かくてさっぱりしていて美味しい。


クセがなくて私の体によく馴染む。


大好きな味だ。



このままルシアス様が死ぬまでこの血を飲み干したいけど、それはダメ。


どんなに血に溺れた怪物になっても一線はわかる。



絶対に殺しちゃダメ。


誰に言われたでもないけどちゃんとわかってるよ。


絶対に誰かを殺したりしない。


だけど、ルシアス様の血は……


「ん~/////」

 たまらない。


*******************

sideダリア

ルディ達と連絡をとってからすぐにリラちゃんに会いに行った。


するとリラちゃんはお食事中。


ルシアス様からがっつりもらっている最中だった。


「気にせずその辺に座っててくれ。そろそろ終わる。」



ルシアス様が私たちに声をかけたら、リラちゃんがルシアス様から牙を抜いた。


私のことをじっと見ている。


「リラ?」


そして…


「っ!!」


一瞬で私の目の前に現れた。


「リラ!やめろ!」


クロウさんがリラちゃんを止めようとするけど、やっぱりヴァンパイアの速さには敵わない。


リラちゃんは私に思い切り抱きついてきた。


「っ!!」


いつものリラちゃんの力じゃない。


しっかり体を締め付けられてる。



「リラちゃん?」 


だけど怖くはなかった。


リラちゃんは牙を剥き出すどころか、私をぎゅっと抱きしめているだけだから。


私に牙を突き立てる気はないみたい。


「不思議だな。俺はそんな風に抱きつかれたことはない。」


ルシアス様は首元を拭きながら私たちの近くに来た。



「そもそも、どうしてリラは人間である俺を襲わない?」


クロウさんがものすごいところを突いた。


「確かに妙だ。リラは俺とライアス以外の血を飲んだことがないな。試しに食いつくかどうかやってみるか?」


ルシアス様の提案はちょっとした実験みたなもの。


「じゃあ、私からやってみます。」

私は自分の爪で手のひらを切った。


誘うには十分な血の量だけどリラちゃんは見向きもしない。



「リラちゃん、ほら。飲んでみる?」


私の血ならいくらでもあげれるよ。


リラちゃんは一度私の手を見て傷口を見つめた。


これはもしかしたら食いつくかも。


リラちゃんが私に抱きつくのをやめて私の手を取った。


うん、これは食いつくね。


そう確信したのに、リラちゃんは驚きの展開を見せてくれる。


「え?」


リラちゃんは私の手のひらにキスをして傷を治した。



そして再び私に抱きついた。


「こんな事、ありえるのか?」


私もクロウさんもルシアス様も驚きが隠せない。


「さぁな。とりあえず近いうち、城に入ってこの手の本を取ってくる。そしたらみんなで勉強会だ。楽しみにしとけよ。」


ルシアス様はどうやってお城の本を盗み出すつもりだろう。

それはお任せするとして…勉強は嫌だな。
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