生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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風の香り

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sideリラ


「リラ、お前白いドレスがよく似合うな。」


ルシアス様は優しい。


私を抱っこしてくれるし、ドレスが似合うと言ってくれる。


嬉しくてルシアス様の首筋に戯れつくと、ルシアス様は小さく笑った。


「俺の花嫁なんだから当たり前か。」


あぁ、幸せ。


ルシアス様とこうして一緒にいられる。


今は何も考えたくない。


ずっとこうしていたい。


「ふふ//////」
「笑った!!」
「また笑った!!」


私は笑っただけなのに、ルシアス様とダリアちゃんは大騒ぎ。


「また!?さっきも笑ったのか??」

「笑いましたよ!!きっと、少しずつ意思が戻ってきてるんですよ!!」


2人が何を言っているかよく分からないけど、楽しそうだしいいか。


日差しも暖かいし今日は何を取っても幸せだな~。


「何もしなくてもこれなら前のリラに戻せる可能性も高くなるな。」

「私はあの本読んでも何一つ分からなかったので、ルシアス様が何か手がかりを見つけてください!リラちゃんのことは私が責任を持って見ています!」


ダリアちゃんとまだ一緒にいられる。


嬉しいなぁ。


「あぁ、任せた。それから、俺が案内したかったのはこのだ。」


「お花畑ですか…こんなところにあったんですね。」



ダリアちゃんが感動してる。


私も何で感動しているのか見たくて顔を上げたら……



「~//////」


声にならないほど嬉しかった。



綺麗な花がたくさん涼しい風に揺れている。


すごくいい香りがして今すぐにでもその花たちに飛び込みたい。


そう思ったら後はやるだけ。


私はルシアス様の腕から飛び降りた。


「リラ、待て。」


私はルシアス様の言葉にちゃんと従う。


ルシアス様が待てと言うなら待たないと。


「ダリアの目の届く所にいること、行儀良くすること。….できるな?」


そんなのできるよ、ルシアス様。


私が頷いたらルシアス様が頭を撫でてくれた。


「よし、なら遊んできていい。」


ルシアス様からお許しが出た瞬間私はお花たちに飛びついた。



**********************

sideルシアス

「ふふっ、リラちゃん可愛い。」


ダリアにもそう見えるか。


「俺の妻だからな。」


可愛くないわけがない。


「惚気は勘弁してください。」


ダリアはくすぐったそうに言った。


「それはご無礼を。任せっきりで悪いな。」


正直助かってる。


見てくれるやつがいなければどこかへ閉じ込めないといけないからな。


「全然、むしろ私がリラちゃんの側にいたいんです。…次はちゃんと守ってあげたい。」


ダリアの表情が後悔で染まった。


責任を感じているんだろう。


あの夜のことを。



「いつも、ちゃんと守ってくれてる。今こうしてリラが花と戯れてるのはお前が全力で守ってくれたからだ。どんな形であれ、リラが生きているんだから俺は感謝している。」


だから負い目なんて感じないでほしい。


「それに、そんな顔してたら俺がお前をいじめたみたいになるだろう?そんな勘違いをリラにされたら俺は殺される。」


冗談を言えばダリアは笑った。


「そうですね、リラちゃんは怒ると怖いから。…すみません、弱気になって。」


「そんな時もある。……じゃあ、俺は本でも読み漁ってくるから、あとは頼んだ。」



ダリアになら安心して任せられる。


「はい、お任せください!」


それに、リラにはダリアが必要だ。


さっきリラが笑ったのはきっとダリアのおかげだろう。


うっかり、ダリアにリラを取られないようにしないとな。












家に戻ると、ライアスとクロウがものすごく真剣に本を読んでいた。


「外に出しても大丈夫なの?」


ライアスはよほどリラが心配なんだな。


「ダリアがいるから大丈夫だ。それに、すぐそこの花畑にいる。心配することはない。」


花に戯れるのに夢中で、きっとどこかへ行こうとも思わない。


「またロマンチックな所へ連れて行ったな。」


ロマンチックなのか?


「ロマンチックも何も、犬は花が好きだから連れて行ったんだ。」


「「ん?」」


何だ、それは。

「ん?」


俺おかしなこと言ったか??



「犬か………まぁ、いい。とにかく手伝ってくれ。この量は結構かかる。」



だろうな。


「それじゃ、大人たちはお勉強会といくか。」


*******************

sideルディ

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、やっと….ついた。」


何日間走った事か…。


「ルディ……お前…はぁ、はぁ、飛ばしすぎだ。」


長旅のおかげで情報は手に入った。


だから急いで帰ってきたんだよ。



「はぁ、はぁ、はぁ、ごめん……。」


俺は早く帰りたかった。


自分の体力がどれだけ削られても確かめたい事があったから。


「クロウさん!!ダリア!!リラ!!」


家の扉には鍵がかかっている。


3人がいないなんてなんか変だ。


「ルディ、ちょっと落ち着け。3人とも出かけているだけだ。」


あの3人が昼間っから仲良くお出かけ?それがそもそもおかしいだろう。



強い風が吹いた。


風はいろいろなことを教えてくれる。



草花の香りや獲物の匂い。


「これは……」


俺が感知したのはその両方ではない。



微かにダリアの匂いがする。


そして、匂いも。


リラの匂いが変わった。


「嘘だろ……嘘だ…そんなの嘘だ!!」

「ルディ、大丈夫だから落ち着け。」



俺にはわかる。


だから落ち着いてなんかいられないよ。


だって、何があったらそうなる?



何度風の匂いを嗅いだって、元のリラの匂いじゃない。




つまり、リラはもう人間じゃないってことだ。



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