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垣間見えた過去
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sideライアス
「禁断の果実の血、そんなにほしかった?」
僕らが必死に隠してきた血はもう既に失われてしまったよ。
皮肉にも、君が使ったであろうカレンによって。
「私は諦めない。必ずこの子を人間に戻してその血を一滴残らず搾り取るわ。その腕に抱いていられるのはいつまでかしら?」
僕から奪い取る?
そんな事できると思ってるの?
リラはヴァンパイアになった。
僕らはどんな形であれ永遠に一緒にいられるようになったんだ。
人間に戻る術があったとしても、僕がそんなことはさせない。
「っ!!!」
僕はリラを抱いたままタランテラの首を掴む。
「1人で来たのは迂闊だったね。」
僕は容赦しないよ。
どこまでも無慈悲に、冷酷にお前を苦しめることができる。
「でもそのおかげで…」
バキッ!!!!ゴキッ!!
僕はこの魔女の首を折ることができた。
首が折れた途端、魔女の体から力が抜ける。
それを放り投げて再びリラを両手で抱きしめた。
この魔女はどう処理しようか。
変に死体を残しておくのは嫌だ。
300年生きてきたんだから、何かしらその体に秘密があるはず。
死体は燃やして灰にしてしまった方がいい。
結局、無に帰せばいいだけなんだから。
でも、案外簡単だった。
あの伝説の魔女はこの程度か。
そう思ったけど………
「吸血鬼はいつもそう。気に食わなければ殺す、遊び飽きればゴミのように女を捨てる。牙を隠した小賢しい獣よ。」
違う声がして部屋に新たな女が入って来る。
次は黒髪の女だった。
「お前達のような汚らわしい種族は私が必ず滅ぼす、特にお前の一族はね。」
憑依でもしてるのかな?
本人の体じゃないってこと?
じゃあ僕がさっき殺した子は誰なんだろう。
何にしても、埋めてあげないとね。
「フラれたんだっけ?可哀想にね。」
お祖父様はこの女のどこに魅力を感じたんだろう。
完全にイカれてる、それ以外の言葉が見つからない。
「えぇ、可哀想でしょう?私だけこんなボロボロにされていいはずがないわよね?だから……ふふっ…あの女を殺したのよ。」
顔しか知らない祖母の話だ。
可哀想に、きっと惨い殺され方をしたんだろう。
王宮でも、その話をする人はいない。
ただ、殺された。それしか伝えられてこなかったけど、目の前のこの女が憎い女をあっさりと殺すはずがない。
「捨てられ化け物に堕ちてもまだ先代を求めて彷徨ってる。見苦しいね。」
先代の国王はもうこの世にはいないと言うのに。
「なぜ私がガイウスを求めるの?」
ガイウスは祖父の名前だ。
「あんな男は興味ない、私を殺したから殺してやったけどね?私がこんなにも心を痛めているのは…カルロスに酷い仕打ちをされたからよ?」
その名を聞いて驚いた。
カルロスは僕の父の名。
現国王の名前だった。
「私を愛していると言って…あの男は私を殺そうとしたのよ!!!私だけを愛していると言ったのに!!あの忌々しい女さえいなければ全て上手くいったのに!!!」
金切声を上げる女は完全に壊れている。
300年も生きているとこうなるんだろうか。
「絶対に殺してやるわ…絶対…絶対絶対絶対殺してやる。」
興奮させない方が良さそうだね。
僕だけならいいけど、ここにはリラがいる。
何かされたらたまらない。
「っ………ん」
女の大声にリラが気づいて目を覚ました。
「リラ、ごめんね。うるさくて目が覚めたんだね。」
僕はすぐにリラを強く抱きしめた。
この状況を見てリラが取り乱すかもしれない。
「まだ夜中だから目を閉じて、安心して眠るといいよ。」
リラは僕の首筋でクスクス笑う。
こんな状況じゃなければ、純粋に愛しいと思えたんだけどね。
「おやすみ、リラ。」
でもこれでいい、リラに悍ましいものは見せたくない。
リラはすぐに眠りに堕ちた。
それを見たタランテラがにっこり笑う。
「大切にしてね…その子は私のもの。傷つけたら許さないからね?」
「黙れ、この子は僕」
腹の立つ物言いに言い返してやろうと思ったけど、僕はすぐに口を閉じた。
もうタランテラはこの場にいない。
元々そこにいなかったかのように消えていた。
まさか僕の妄想だった?
そんなことはないよね?
ベッドの下を覗けば僕が殺してしまった子が横たわっている。
どうやら妄想ではないみたいでよかったよ。
それにしても…
「面倒だなぁ。」
みんなリラが大好きなんだから。
とりあえず、タランテラはすぐにでも殺しておかないと。
リラを人間に戻す方法はどんなに探したって見つからなかった。
けど、あの女はきっと見つけ出す。
借り物の体からでも伝わった禍々しい魔力と殺気。
今まで出会った中で最も重い。
そんなものをリラに向けられているんだから僕も構えているだけじゃいられない。
何を犠牲にしてもあの女を殺す。
そうとなれば明日はリラを連れて王に会いに行こうか。
今のこの状況なら、親子で手を取り合える。
僕もつくづく性格が悪い。
でも仕方ないよね。
あのイカれた女を一瞬でも恋人にした、趣味の悪い男の血を1番に受け継いだ男なんだから。
「禁断の果実の血、そんなにほしかった?」
僕らが必死に隠してきた血はもう既に失われてしまったよ。
皮肉にも、君が使ったであろうカレンによって。
「私は諦めない。必ずこの子を人間に戻してその血を一滴残らず搾り取るわ。その腕に抱いていられるのはいつまでかしら?」
僕から奪い取る?
そんな事できると思ってるの?
リラはヴァンパイアになった。
僕らはどんな形であれ永遠に一緒にいられるようになったんだ。
人間に戻る術があったとしても、僕がそんなことはさせない。
「っ!!!」
僕はリラを抱いたままタランテラの首を掴む。
「1人で来たのは迂闊だったね。」
僕は容赦しないよ。
どこまでも無慈悲に、冷酷にお前を苦しめることができる。
「でもそのおかげで…」
バキッ!!!!ゴキッ!!
僕はこの魔女の首を折ることができた。
首が折れた途端、魔女の体から力が抜ける。
それを放り投げて再びリラを両手で抱きしめた。
この魔女はどう処理しようか。
変に死体を残しておくのは嫌だ。
300年生きてきたんだから、何かしらその体に秘密があるはず。
死体は燃やして灰にしてしまった方がいい。
結局、無に帰せばいいだけなんだから。
でも、案外簡単だった。
あの伝説の魔女はこの程度か。
そう思ったけど………
「吸血鬼はいつもそう。気に食わなければ殺す、遊び飽きればゴミのように女を捨てる。牙を隠した小賢しい獣よ。」
違う声がして部屋に新たな女が入って来る。
次は黒髪の女だった。
「お前達のような汚らわしい種族は私が必ず滅ぼす、特にお前の一族はね。」
憑依でもしてるのかな?
本人の体じゃないってこと?
じゃあ僕がさっき殺した子は誰なんだろう。
何にしても、埋めてあげないとね。
「フラれたんだっけ?可哀想にね。」
お祖父様はこの女のどこに魅力を感じたんだろう。
完全にイカれてる、それ以外の言葉が見つからない。
「えぇ、可哀想でしょう?私だけこんなボロボロにされていいはずがないわよね?だから……ふふっ…あの女を殺したのよ。」
顔しか知らない祖母の話だ。
可哀想に、きっと惨い殺され方をしたんだろう。
王宮でも、その話をする人はいない。
ただ、殺された。それしか伝えられてこなかったけど、目の前のこの女が憎い女をあっさりと殺すはずがない。
「捨てられ化け物に堕ちてもまだ先代を求めて彷徨ってる。見苦しいね。」
先代の国王はもうこの世にはいないと言うのに。
「なぜ私がガイウスを求めるの?」
ガイウスは祖父の名前だ。
「あんな男は興味ない、私を殺したから殺してやったけどね?私がこんなにも心を痛めているのは…カルロスに酷い仕打ちをされたからよ?」
その名を聞いて驚いた。
カルロスは僕の父の名。
現国王の名前だった。
「私を愛していると言って…あの男は私を殺そうとしたのよ!!!私だけを愛していると言ったのに!!あの忌々しい女さえいなければ全て上手くいったのに!!!」
金切声を上げる女は完全に壊れている。
300年も生きているとこうなるんだろうか。
「絶対に殺してやるわ…絶対…絶対絶対絶対殺してやる。」
興奮させない方が良さそうだね。
僕だけならいいけど、ここにはリラがいる。
何かされたらたまらない。
「っ………ん」
女の大声にリラが気づいて目を覚ました。
「リラ、ごめんね。うるさくて目が覚めたんだね。」
僕はすぐにリラを強く抱きしめた。
この状況を見てリラが取り乱すかもしれない。
「まだ夜中だから目を閉じて、安心して眠るといいよ。」
リラは僕の首筋でクスクス笑う。
こんな状況じゃなければ、純粋に愛しいと思えたんだけどね。
「おやすみ、リラ。」
でもこれでいい、リラに悍ましいものは見せたくない。
リラはすぐに眠りに堕ちた。
それを見たタランテラがにっこり笑う。
「大切にしてね…その子は私のもの。傷つけたら許さないからね?」
「黙れ、この子は僕」
腹の立つ物言いに言い返してやろうと思ったけど、僕はすぐに口を閉じた。
もうタランテラはこの場にいない。
元々そこにいなかったかのように消えていた。
まさか僕の妄想だった?
そんなことはないよね?
ベッドの下を覗けば僕が殺してしまった子が横たわっている。
どうやら妄想ではないみたいでよかったよ。
それにしても…
「面倒だなぁ。」
みんなリラが大好きなんだから。
とりあえず、タランテラはすぐにでも殺しておかないと。
リラを人間に戻す方法はどんなに探したって見つからなかった。
けど、あの女はきっと見つけ出す。
借り物の体からでも伝わった禍々しい魔力と殺気。
今まで出会った中で最も重い。
そんなものをリラに向けられているんだから僕も構えているだけじゃいられない。
何を犠牲にしてもあの女を殺す。
そうとなれば明日はリラを連れて王に会いに行こうか。
今のこの状況なら、親子で手を取り合える。
僕もつくづく性格が悪い。
でも仕方ないよね。
あのイカれた女を一瞬でも恋人にした、趣味の悪い男の血を1番に受け継いだ男なんだから。
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