生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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隠し扉

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sideリラ


ルシアスが怖気付くことなく先へどんどん進む。


「ルシアス、もう私歩けます。」

 
ずっと抱っこされてたら恥ずかしい。


「やめとけ、お前いきなりぶっ飛ぶだろ。」


それはあなたの顔がよすぎるせい。


「もう大丈夫です、ぶっ飛びませんから下ろしてください。」


ルシアスの顔を見なければ私だってぶっ飛ばずに済む。


「なぁ、いつまで敬語を使う気なんだ?」


ルシアスはいきなり話題を変えて来た。


「え?」


それはあまりにもこの状況とかけ離れた質問で普通に間抜けな声が出る。


「おかしくねぇか?俺ら夫婦なのに。」



夫婦の響きがまだ慣れない。



「え?あの…それは…王子様…ですから////」


唐突な質問に一番簡単な答えを出す。


「品性がかなり疑わしいが、ライアスも王子だ。それなのに俺だけ敬語なのか?」

「僕、真後ろにいるんだけど?」



ルシアス、失礼だよ!


「ダメですよ!そんなこと言ったら!」


ライアスが怒ったらどうするの!?


「あぁ、わかった。ライアスには品格も王子らしさもないから普通に喋ってるんだな。よく理解できてるじゃないか。」


え!?

飛び火もいとこだよ!


「そんなことありません!!!」


ちゃんと弁解しないとライアスに私の性格を疑われる。


「ライアスは友達だからです!」


私が言い切ったらいきなりライアスが真横に現れた。


「僕らは友達じゃない。もっと深い関係のはずだけど?」


は!!?

ライアス!?

ご乱心なの!?なんで嘘つくの!?
 

「ち、ちが」「ほら、僕はリラの間男だから。…あの夜のことは忘れないよ。」


ライアス!!?
 
 
「一度きりの夜でそんなに張り合うな、ライアス。見ていて悲しいぞ。」


ルシアスは変なところで勝ち気になった。



「一度?誰が一度なんて言った?リラはルシアスと出会う前から僕といろいろなことをしてるよ。ねぇ、リラ。」


人間だった頃の記憶がふと蘇る。


確かに私はライアスとギリギリなことをしていた。


しかも、それを喜んでいた次期もあったっけ?


「///////////」

「何赤くなってんだ?」


ルシアスは笑顔で聞いてくるけど、その笑みの裏にとんでもない殺意を感じる。


「ルシアス、そう嫉妬しないで。僕の方が色々上手だったから未だに忘れられないだけだよ。」


ライアスはそんな恐ろしいルシアスを簡単に煽る。


「あ?」

ルシアスの額に一瞬筋が入ったのを私は見逃さなかった。


戦いの火蓋が切られた!!!


そう思っていると、何やらおかしな音がする。


ドドドドドドドドド!!!!


後ろから聞こえる。


ドドドドドドドドド!!!!


しかも音が大きくなってない?


「あの…何か聞こえたような…」


私がそう言うとルシアスとライアスは一度振り返った。



「だぁあぁぁあ!!!!!全員逃げろー!!!!」


ルディが大声を上げて走って来ている。


その横にはクロウ先生とダリアちゃんとラルフ。


そしてその後ろが問題。


私たちをまとめて潰せるくらいの丸い岩が転がってきていた。

「えぇ!?早く逃げましょう!!」

「俺は今両手が塞がってるからあとは任せた。」


ルシアスは何一つ焦ることなくライアスに何かを頼む。


そんなことしてる場合じゃないよ!?

早く逃げないと!!


「全く、どうして何も起こせずにいられないかな。」


ライアスも別段、焦っている様子はない。


それどころかみんなのいる方に走って行ってしまった。


「ライアス!!」


いきなり死ぬつもりなの!!?



ライアスは軽々とみんなを飛び越えて岩に向かって拳を握る。

何をするかと思えば、ライアスはそのままあの大きな岩を殴りつけた。


ドーン!!と大きな音がして岩は簡単にバラバラになってしまう。


それを見ていたチーム☆ゴーストとクロウ先生はひたすら驚くばかり。


「これでいいかな?」


ライアスも馬鹿力の持ち主みたい。


見た目は優雅な王子様なのに…


「かっこいい…。」


私もいつかあんな大きな岩を割れるようになるかな。


「あぁ、俺のことか。知ってる。」

ルシアスの顔を見ると額にもう一本線が追加されていた。


「……はい。」


口が裂けてもライアスとは言えない。


そんなことを言ったら口が裂けるだけでは済まされない。


私がルシアスをかっこいいと認めたら、ルシアスは満足そうに笑って先へ進む。


「しかし暗いな……」


ルシアスはそう言って私を降ろすと大きな手に虹色の炎を灯した。


いつ見ても綺麗なその炎は私を簡単に魅了する。


あまりに綺麗だからつい手が伸びてしまう。


「火傷したいのか?」


ルシアスは私が炎に触らないように手を遠ざける。


「綺麗だったからつい…ごめんなさい。」


ずっと近くで眺めていたい。


「今度触っても大丈夫なようにしてやるから、それまではお預けだ。」


ルシアスはそう言って私の頭を優しく撫でた。



「ふふ////////」


ルシアスはやっぱり優しい。



好き。


何が好きかって、ルシアスの目だ。


ルシアスの目を見ていると暖かい感情が胸に広がる。


私はこの熱が好き。


だけど……


ちょっと恥ずかしくなって来た……


「そろそろみんな来ますから、その辺で」カチッ!!


ヤバイ、何か踏んだ。


ギギ!!

後ろから音!!


「っ!!!」


私は思ったよりも反射神経が良かった。


即座に飛び退きバク転をする。


さっき私が立っていたところを見たら、鋭い木の棒が正面の壁から突き出ている。


私の隣にいたルシアスはもっと簡単に避けていたみたいで、首を傾けているだけだった。


数秒経つとその棒は壁に戻っていく。


「少しはヴァンパイアらしくなったじゃねぇか。」


ルシアスに褒められて私は上機嫌。


「えへへ…////」


今絶対、だらしない顔になってるよ。


「ん?これ壁じゃないな。」


ルシアスが何か気付いたみたいで、さっき私が押してしまったスイッチを避けて壁に近づいた。


ルシアスはその壁に触り何かを調べてる。


「あー、なるほどな。これは専門外だ。」


専門外?


「ただの壁に専門とかあるんですか?」


「これは壁じゃない、扉だ。魔法で隠されてる。」


魔法で?


それなら…


「クロウ先生の出番ですね!」
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