生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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闘志

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sideクロウ


気絶して起きたら大変なことになっていた。


そこは乗り越えたとして、問題は山積みだ。



「ライアス、死体がどうとか言ってたな。」


ルシアスほどバテてはいないな。


「あぁ、僕の家にあるよ。全員休憩がてらおいで。」


嘘だな、ライアス。


休憩なんてできるはずない。


お前の家には死体がゴロゴロ転がっているんだろう?


そんな中で休憩とはとても思えない。


が…



「いくか。」



こんなどこかも分からないとこにいても仕方がない。














ライアスの家に到着したのはいいが………



「派手にやったな……」



ライアスの家に入るや否や、首のない死体が1人。



「そう?奇襲を仕掛けてくるくらいだから、本人もこれくらい覚悟しているはずだよ。」


王子はみんなこう残虐なのか?


王族の教育はどうなってる?


「お前、顔は残しとけよ。調べんのに苦労するだらうが。」


「どうせすぐ腐るから関係ないんじゃない?」


「まぁ、それもそうか。」


本当に大丈夫か?王族。


俺は一般家庭に生まれてよかった、本当によかった。


ライアスに案内されリビングに行く。


「っ!!!」


そこで目にしたのは、逆さ吊りにされた男だ。



天井から吊るされて血まみれで死んでいる。



「拷問したのか?」


奇襲されたのに拷問する余裕があるとは……


「あぁ、これは別口だよ。気にしないで。」


ライアスはなんてことないと言いたげだがおかしいだろ。


リビングに男の死体が吊るされているんだぞ?


「これくらいで驚いてたらこの先もたないぞ。」


ルシアス、何を言ってる?


この先なんてないだろう、十分残酷だ。


「子供たちには見せられないから、調査と片付けを同時進行で頼むよ。休憩はそのあとね。」


ライアスがリビングを通り抜け俺たちを客間へ案内する。


そのドアを開けて本当に後悔した。



「なんだ…これは。」


無数の肉塊と、腕とか足とか目とかその他諸々。


とにかくひどい。


「一応、木っ端微塵にはしてないから。手がかりはあるはずだよ。」


木っ端微塵にしてない?


どこがだ。


全員細切れだ。


「僕はこの後美味しいランチが待ってるから、早く終わらせたい。みんな協力して。」


もう、本当に大丈夫か?


これを見て片付けた後でランチ?


ルシアスの言う通り、ライアスはイカれてる。



******************

sideリラ


ルシアスとライアスがこの家を出てから約1時間。


私が呑気にビーフシチューを作っていたら事件は起きる。


外で誰かの足音が聞こえた。


それに知らない匂いもする。

誰?


ルシアスのお知り合い??


「くそっ!鍵が閉まってる!!」
「退け!!そんなもんぶっ壊せばいいんだよ!!」
「早くしろ!!帰ってくるぞ!!!」


呑気に考えていた私だけど、大変なことになっていると理解した。


私は咄嗟に包丁を取り身構える。


ガン!!!ガン!!!


玄関のドアを蹴っている音だ。


相手はおそらく男3人。


どんな人たちか知らないけど、私じゃ太刀打ちできないのは確か。


隣の部屋の窓から逃げればきっと…


ガシャン!!!!


ダメだ!入ってきた!!!


「探せ!一緒には出てきてない!絶対にいるはずだ!」

「くそ!どこに居る!」

「あの女がいないとを打ってもらえない!」


私はすぐさまフライパンを手にして、キッチンを抜け出して客間へ行く。


カーテンの後ろに隠れてなんとかやり過ごした。


「おい!中から防御魔法を張れ!!この家にあの女を閉じ込める!」


狙いはどう考えても私。


さらには家に閉じ込められている。


防御魔法は目に見えるものだった。


窓にピンク色のおかしな模様がいくつもまとわりついている。


完全にこの屋敷は魔法にかかったらしい。


状況は絶体絶命。



どうしよう……。



フライパンを持つ手がガタガタ震える。


私はヴァンパイアよ、これくらいで怖がってどうするの。


私は強くなった。


絶対に殺されない、もう何もできないお荷物じゃないんだから。


これからはルシアスの役に立つように頑張る。


ここはルシアスの家で私は間取りを知り尽くしている。


向こうは……


「くそっ!部屋が多すぎる!」
「手分けして探すぞ!」
「見つけても殺すなよ、気絶させるだけだ。」


ほら、間取りどころか部屋の数もわかってないじゃない。

それに男たちは私を殺す気はないらしい。


それさえわかれば私の勝ちよ。



冷静に状況を判断したら一つ考えが浮かんだ。



このお屋敷は広い。


数では私が不利だけど、この場所では私が有利だ。


そもそも3人一気に相手をしようとするから無理なのよ。


一人一人確実に倒していけばいい。



私は今客間にいて、音からして1人はキッチン、もう1人はリビング、さらにもう1人は今まさに階段を上がっていた。



ちょうどいいくらいにバラバラになってくれてる。



まずは一番近いキッチンから攻める。


少し怖いけど大丈夫、敵の場所が分かっている以上私が負けることは絶対にない。



侵入者たち、覚悟して。



ルシアスの妻の本気を見せてあげる。
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