生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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火事

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sideリラ

火は近くにあった絨毯を燃やしていく。


消そうと火を踏んでみたけど…


「あつっ!!!」


私は足を火傷して終わり。


火はどんどん燃え移る。


ふと前を見ると男がまた炎を手に宿していた。


「生きたまま焼け死ね!!!」


男は笑いながら開いたままの玄関から火を投げ入れる。


間髪入れずに火を投げるから、家の中にさらに火が燃え広がった。


「けほっ…けほっ…」


轟々と燃え広がる火に恐怖を覚える。


とりあえず水をかけようとキッチンに急ぐ。


倒れた男たちを踏んでキッチンにたどり着いた頃には…


「ははっ、残念!!」


男がすでにキッチンの外に移動していた。


男は小さな窓から私を覗いている。


水を取る前にさっきと同様、その小さな窓から火を投げ入れられた。


「きゃっ!!」


寸前で避けたはいいものの、キッチンはみるみる内に火に飲まれていく。


私に顎を割られた男は目を覚さない。


助けている暇はなく私はすぐにリビングに逃げた。


「はぁ、はぁ、はぁ。」


どうしよう、きっとここもすぐに火に飲まれる…


パリン!!とガラスが割れて火の塊がまた投げ入れられた。


リビングのカーテンに火が燃え移りすぐにここも火で囲まれる。


すぐに逃げようとしたけど私を引き止めたものがある。


ルシアスの剣だ。


ルシアスがよく手入れをしている大切な剣。


それもそのはず。


ルシアスは王子様でもあり騎士でもある。


そんな剣をほったらかしにして逃げるのは気が引けた。


壁にかかっている剣を取るにはサーカスの虎のように私よりも背の高い火を潜らないといけない。


絶対に火傷する、そんなことはわかってるけどルシアスの大切な剣のためだ。


怯むな!!私!!


気合を入れて…


「っ!!!!」


一気に火の中へ飛び込む。


気合いで何とかなるようなものじゃない。


「い゛っ!!!!」


ジュッ!!と音がして頬が焼けた。

耐え難い痛みだ。


痛みに耐えきれず涙が出る。

それでも剣を取りまた火を潜る決意をした。


「っ!!!ぎゃっ!!!」


本日2回目の火潜りは大失敗、次は反対側の頬が焼けた。


そのままリビングを走り抜け、廊下に出た。


私の両頬はチークを塗ったように爛れている。


「うっ…ひくっ…ぅっ…」


痛くて涙が出る。

それが頬を伝うとさらに激痛が走った。


泣いてる場合じゃない、今は助かることだけを考えなさいよ!!


火はもう止められない、燃え方を見ればわかる。


私がさっきまでいたリビングからは火が暴れるように燃え広がっていた。


ここじゃダメだ、せめて2階に逃げよう。



「リラちゃん!!!!返事してー!!!リラちゃん!!!」


開け放たれた玄関から奇跡的にもダリアちゃんの声がした。


「ダ、げほっ…げほっ!!」


煙を吸い込んで咽せてしまう。


でもこんな事じゃ諦めない。


助けが来たんだ!!


私は廊下を走り玄関へ向かった。



「あ!!いた!!リラちゃんいた!!!」



ダリアちゃんの姿が見えた。


「ダリアちゃん!!!ルシアスかクロウ先生呼んできて!ライアスの家にみんないるから!魔法がかかってて家から出られないの!」


「大丈夫!今ルディがライアス様のお屋敷に行ってるどこだよ!ルディは足が速いから絶対に間に合う!気をしっかり持って!」



ルディが走ってくれているなら大丈夫。


本当にびっくりするくらい足が速いからきっと間に合う。


「ありがとう!ダリアちゃんは離れてて!もしも崩れて巻き込まれたら大変だから!」


そんな事になれば私が耐えられない。


「それから、変な男がいるから本当に気をつけて!その男に火を投げ入れられたし閉じ込められたの!」


私が必死に説明してると…


「そのイカれ野郎ってのはこいつか?」


ダリアちゃんの隣にラルフが現れた。


ラルフはさっきの男をボコボコにしたらしく、男の顔はどこに目があるか分からないくらい腫れていた。


「そう!」


ありがとう、私の代わりにボコボコにしてくれて。


「え、ちょっと待ってよ。こいつ気絶してるから、こいつが魔法を使ってリラちゃんを閉じ込めたならとっくに魔法は切れてるはずだよ?」


ダリアちゃんの発言に肝を冷やした。


「まだ…誰かいるってこと?」


私が聞くとラルフが男を離して警戒する。


この家の中には絶対にいない。


「いや、こいつらの匂いしかしない。」


ちょっと待って、落ち着いて。


「あ、そうだ。そういえば、この男が自分で魔法を貼りなおしたとか何とか言ってた。だから誰かいるってことは無いと思うよ!」


変なこと言って怖がらせて私は馬鹿ね。


「そっか、それならいいけど…」


ダリアちゃんの言いたいことはわかる。


私は振り返った。


火が着々と迫ってきている。


「大丈夫……ルディが絶対に助けを呼んでくれる。」


ルディなら大丈夫、私だってヴァンパイアだし大丈夫。


ちゃんと強くなってたでしょう?


そう自分に言い聞かせていないと泣き出しそう。


「ルディを信じてないわけじゃないけど、私もできる限りのことをするよ。」


ダリアちゃんはそう言って拳を握った。



「うん……」


物理的にこの魔法を壊そうとしている。


すごく嬉しいけど……


「怪我しない程度でお願いします。」
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