生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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因果応報

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sideリラ

すごく煌びやかな世界だ。


いつ来てもここには汚いものはない。


人も食べ物も装飾も何もかも。


ルシアスとライアスに頭を下げる場内の者。


どうやらお茶会の真っ最中みたい。


その中でも一際目立つ美しい女性がいる。


私を殺したひとだ。


私を見て困惑している。


だから私は微笑んだ。


自分が殺したはずの女がヴァンパイアに生まれ変わった様はどう?


皮肉にも、あなたのおかげでルシアスと同じ種族になれた。



感謝するべきなのかな?


「リラ、ご挨拶する?」


ルディは私の視線の先を見てすぐにあれがカレン嬢だと分かったらしい。


「そうだね、ちゃんと挨拶はしないと。レディの嗜みですもの。」


私がルディに笑いかけると、ルディは悪戯っ子のような顔をする。


「悪い子のリラも俺は大好き。」


悪い子だなんて失礼な。


「じゃあ、エスコートをお願いできます?」


わざとお嬢様のように言ってみればルディがたまらず噴き出した。


「もちろん、喜んで。」


私がルディとカレン嬢に近づくと、彼女の綺麗な顔に戸惑いが浮かぶ。



「ご機嫌よう、カレン嬢。」


私がそう言うとカレン嬢の笑みが引き攣った。


「えぇ、ご機嫌よう……前にどこかでお会いしましたかしら?」


そう来るのね。


性格の悪い人。


「ふふ、カレン嬢はまだ寝ぼけていらっしゃるのかしら。この間お会いしたのに。」


この会場にいる女たちは私たちの会話に釘付けだ。



それもそのはず。


ルシアスとキスをした女に喧嘩を売っているんだから。


「私は家柄のいい方々と毎日よくお会いするの。あまり会わない方は少し覚えが悪くて…。
あぁ、決してあなたの家柄が悪いとかそんなことは言っていないわ。」

 
本当にこの人友達いるの?大丈夫?



「顔覚えも悪くて、交友関係も狭いだなんて…毎日退屈しませんの?」


私の言葉にざわっとする大広間。


ズケズケとものを言う私を見てルディが笑いを堪えてプルプル震えている。



「ま…まぁ、退屈だなんて、とんでもないわ。それより隣の従者の方は気分がよくないんじゃありませんの?」

「まぁ!」


私が大声を出すとカレン嬢が目を見開いて驚いた。


「従者?彼は私の大切な友達よ。そうそう、従者と言えばあの方。私も名前は存じ上げないのだけれど、あなたが人間を殺すように命令したあの方は元気?」


カレン嬢は顔を真っ青にした。


そうよ、あなたが私に仕向けたってもう知ってるの。


ここで化けの皮を剥いだっていいのよ?



「な…何のことかしら。それより、お茶はいかが?ちょうど皆様と飲んでいたところなの。」



お茶?

あなたと?


「せっかくですけどやめておきますわ。ねぇ、ルディ。」

「その方がいいだろうね。従者と友達を見間違えるような節穴とお茶を飲んだってきっと楽しくない。」


ねぇ、ダリアちゃん見てる?



私とルディ、今すごくいい顔してるよ。



********************

sideダリア


あぁ、もう、本当に2人ともいい顔してる。


楽しそう、私も混ざりたいなぁ~。



「リラとルディ結構言いますね。」


キジャさんは少し引いてる。


「きっと、ルシアス様に元気付けられたんですよ。」


カレン嬢に取られるなんて不安はきっと吹っ飛んじゃったんだろうね。


「見てみろよ、あの女の顔。最高だな。」


ラルフも楽しそうにリラちゃんとカレンの会話を観戦していた。


「ねぇ、いいこと思いついた!ラルフ一緒に行こ!?」


あの女がリラちゃんにしてきたことを私が許すはずない。


「全く、お前もなかなかいい顔してるな。」


もっともっと追い詰めてやる。


本当は首をへし折って殺しちゃいたいけど、リラちゃんがそれをしないなら私だってしない。


さて、爆弾投下だ。



「あ!カレン嬢~!」


私はラルフの手を引いてリラちゃんの真横に行く。


「あ…あら、あなたは……」


あんたが淫乱だと馬鹿にした元踊り子だよ。


「お久しぶりですね!あの時はどうなるかと思いましたわ!」


オロオロしてる。


そうよね、あんた日頃の行いが悪いんだから。


「あの時?」


そうそう、初めて会った時よ。


「はい!誘拐されたあの時です!同じ牢屋に入っていたじゃないですか!…自分だけ助かろうと必死でしたから覚えてないんじゃないかしら?」


私が言い切ってやると辺りが騒ついた。


「キーキー猿のように騒いで、人を蹴り飛ばして自分だけ逃げて……あれは見ものでしたわ。」


私はリラちゃんよりも酷くなじってやる。


私やリラちゃんが受けた屈辱はこんなもんじゃない。


「ダリアちゃんそんなに言うものじゃないわ、見てよ。カレン嬢、猿のお尻みたいに顔が真っ赤よ?」


「あら本当ー!さすが猿真似が似ているだけあるわ!」


クスクスと嘲笑されるカレン。


私とリラちゃんは周りには悪魔のように映っているかも。



別にそう見られたって構わない。


だって、私たちを悪魔に変えたのはカレンだから。


自業自得だよ。


これを機に覚えておいたらいい、やられたらやり返されるって。
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