生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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扉の先

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sideリラ


お互いラブパワーをチャージしたから私はすっかり元気になった。


だからって、ルシアスを見ると不安に駆られるけど。



「リラ。」


ルシアスが私の目の前に来る。


この人は本当にいつ見上げても格好いいな。


顔がすごく格好良くて、背も高くて、何なら王子様で、騎士団長で…


とにかく何が言いたいかって、この人が私だけで収まるとは思えない。


だって、ルシアスだよ?


ルシアスを好きなのが私だけなわけないじゃん。


こんな格好いい人は他にいない。


浮気されてた?


別にいいよ。



すごく悲しいけどルシアスは今ここに、私の目の前にいる。


回り道をしても私のところへ帰ってきた。


そう思っていいんだよね?


最後は私を選ぶって、そう思わせてよ。


「私、ちゃんと待ちますから……最後は私のところに帰ってきてください。…あと、できれば、子供は他で作らないでください。」


本当は私だけの人でいてほしいけど、縛り付けれるような人じゃないから。


だから、これくらいのお願いは聞いてほしい。


「…壮大な勘違いかまされた挙句に俺は下半身の節操がないと思われてんのか?それ以上言ったらいくら俺でも泣くぞ。」


壮大な勘違い?


「はい?」


それは誤魔化し?それとも本当のこと?


「浮気もしてなけりゃダブってもない。」


ルシアスははっきりと私にそう言う。


「で、でもさっきルディが…」

「俺はお前以外の女に興味がない。」


このはっきりとした物言いも好きだったりする。



「で、でも」「浮気なんかするかよ、そんな事したらお前に嫌われるだろうが。」



ルシアスは普段こんな事は言わない。



みんなの前なら尚のこと。


「そんなに不安なら今ここで言ってやるよ。ここにいる全員が証人だ。」


全員が承認?


一体何を言うつもり?




「誰よりも愛してる。」



みんなの前で言われたのと、真っ直ぐに届いた言葉に私は頬を染めた。


真っ赤な私を見てルシアスが満足げに笑う。


「分かったんならさっさと行くぞ。」


固まっている私の隣を通り過ぎてお城へ向かっていった。



それについて行く大人たちとラルフとルディ。


ダリアちゃんはニヤニヤしながら私の腕を突いた。



「ちょっと~、大丈夫??」


大丈夫じゃないよ。


幸せすぎて吹っ飛びそう。



「あの言葉は……」



一番最初に私に想いを伝えてくれた時のセリフだ。



私がクロウ先生の毒入りキャンディーで死にかけていた時に言ってくれた言葉だった。


「ルシアス様って意外とロマンチックなんだね。」


そう、そうなんだよ、ダリアちゃん。


「どうしよう………もう……狡い、好き。」


真っ赤になった顔を両手で隠すと、隣でダリアちゃんが大笑いした。


*******************

sideダリア

リラちゃんってばドレスよりも真っ赤になっちゃって。

でもよかったね。


浮気されてなくて。


そもそもリラちゃんより素敵な人なんていない。


ルシアス様には謝らないとね。


でもこの際、ちゃんと知っててもらったほうがいいかな?


もしも浮気なんてしたらリラちゃんが許しても私は許さないって。



私の大事な大事な大事な(×100)友達を悲しませたらどうなるか。



でも今回はそれをお披露目するまでには至らなかったからなぁ…。

そんな日が来たら困るんだけどね。


お城の大きな扉の前で男たちは待っている。


どうやらレディーファーストらしい。



この先は一筋縄ではいかない。


ラルフが私に手を差し出してきた。


私はそれを取り、リラちゃにはルディが手を差し出す。



「ルシアスがよかっただろうけど、とりあえず俺で。」


ルシアス様がリラちゃんをエスコートしないのはきっと中にいる者たちを刺激しないためね。


王族の兄弟と入ってきた、それだけで中にいる人たちは騒ぐ。


エスコートされていたら僻みの対象になる。


無駄な悪意は買わない、そのスタンスでいくみたい。


「ありがとう、ルディ。」



リラちゃんも喜んでルディの手を取った。


「じゃあ、皆さん、ここから先はおふざけ禁止ですよ。」


キジャさんがそう言ってお城の扉の片方に手をかける。


ルルドさんもそれに合わせてもう片方の扉に手をかけた。



「そして、お行儀よくお願いします。」


ルルドさんの言うお行儀よく、は苦手かも。


2人は大きな扉を開けて私たちに中の景色を見せる。


煌びやかで日常ではない世界だった。


それでも私とリラちゃんは顔を見合って不敵に笑う。


大丈夫だよね、私たちなら。


蹴散らしてやろうよ、貴族も令嬢も王様でさえも。
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