生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

文字の大きさ
上 下
299 / 471

壁の中の視線

しおりを挟む
sideカレン

何よ、こいつら!


そもそもどうして生きてるの、ヴァンパイアになってるなんて聞いてない!


「ちょっと!いきなり現れて何なの!カレン嬢は下品な方々とはお話にならないのよ!」


私の取り巻きが言い返した。


「いいのよ、こんな楽しいお茶会でそんなことを言ってはいけないわ。」


私が言い返すわけにはいかない。

ここはあくまで淑やかに。


この女達の少し後ろにルシアス様とライアス様がいる。


こんな安い挑発に乗る女だと知れれば面倒だ。


そうだ、いいこと考えた。


私はルシアス様にキスを許された女よ。


気に入られているはず。


こんな下品な女達よりも絶対にね。


ルシアス様に助けを求めればいい。


私が泣けば、ルシアス様に庇ってもらえるはず。


この女達にも恥をかかせてやるわ。


不意にルシアス様と目が合った。


するとルシアス様は私の方へ歩いてきた。


ほら、やっぱり彼は私が好きなのよ。


私を助けに来る王子様なんだから。


ルシアス様が私の元へ来たら言ってやろう。


この2人が私をいじめるって。



*******************

sideリラ

いきなりカレン嬢が私の後ろに視線をやり勝ち誇った顔をした。


私の真後ろでルシアスが止まり私の両方にポンと手を置く。


「ルシアス、様。」


危ない、うっかり公衆の面前でルシアスを呼び捨てにするところだった。


「様?おかしなことを言うな。」


ん??

ルシアス、なんかニヤニヤしてない?



「呼び捨てにしてくれと何度も頼んでいるのに、は強情だな。」


俺のハニー?


私の両隣にいるダリアちゃんとルディが肩を震わせ笑う。



「ベッドじゃあんなに素直なのに。」

 

突然の公開処刑に固まる私。


でも私よりもいい表情をしている人がいる。


カレン嬢だ。


絶望と憎しみ、その表現が一番近い。


「こんなところでやめてください、恥ずかしい。」


わざと照れて見せたらカレン嬢の顔がびっくりするほど恐ろしい。


カレン嬢の真似をしたのがばれたかな??


そんな彼女を嘲笑したら、ルシアスが私の頭を撫でる。


「お友達とお話しも済んだことだ、偉大な偉大な俺のお父様にご挨拶に行くとするか。」



全てが皮肉めいているルシアスの言葉。


何故か嫌な男には映らない。


惚れた弱みかな。


「はい、ルシアス。」


私がルシアスを呼び捨てにするとさらに周りが騒ついた。


*******************

sideカレン

ルシアス様達はあっけなく私を置いて王の間へ行く。


この大広間から一行が出て行った瞬間……


「カレン嬢、お可哀想。」

「きっと遊ばれてたのよ。」

「仕方ないわ、カレン嬢よりあの方の方が美しかったもの。」

「ちょっと、聞こえてしまいますわよ?」

「どこのご令嬢かしら?ぜひお友達になりたいわ。」

「ねぇ、誰かカレン嬢に声をかけてあげたら?」



クスクスと私のことを笑う女達。


私がルシアス様に気に入られていると思っていた時は猫のように擦り寄ってきたくせに。


このままじゃ終わらせない、ルシアス様の隣にいたあの女……


死んでも許さないわ。


*******************

sideルシアス


仕返しはできたみたいだな。


リラはスッキリした顔をしてる。



「やったね!リラちゃん!」

「うん!ぶちかましたよ!」


知らぬ間にどんどん逞しくなっていくな。


「あの女、今頃キレて暴れてるんじゃないか?」


ラルフもかなり楽しめたらしい。


「当然の報いだな!むしろ首をもぎ取ってないだけ感謝して欲しいね!」


ルディが笑いながらリラの肩に腕を乗せる。


「レディの肩に腕を乗せるな。」
「いたっ!」


俺よりも先にクロウがルディをしばく。


よくやった、クロウ。



「緊張感皆無ですねー。」

「お前もな。」


キジャの発言にルルドがツッコむ。

コイツら仲悪いと思ってたけど意外と仲いいんだな。


「ねぇ、ルシアス。」


ライアスが俺を呼んだ。


穏やかな声ではない。

それもそのはず。


「あぁ、わかってる。」


今俺たちが通っている廊下は王の間へと続く廊下だ。


それがただの廊下であるわけがない。


ここの廊下の壁は空洞になっていて常に王直属の護衛、シャドウが入っている。


今もそうだ。


息が詰まりそうな程の殺意と視線。


キジャとルルドとクロウはもう気付きはじめたな。



じゃあそろそろ向こうも仕掛けてくるだろう。


「チーム☆ゴースト。」


俺が足を止めて声をかけると4人は不思議そうに俺の顔を見る。


「何があっても絶対に動くな。約束してくれ。それから手を上げて頭の後ろに。」


俺がこのポーズをすると4人はもっと困惑した。


「何これ、俺ら銃でも向けられてんの?」


ルディにしてはなかなかいいことを言った。


「まぁ、そんなところかな。」


ライアスもそう言って俺と同じ格好をして、それを見たキジャとルルドとクロウも次々と同じ格好をした。


「いいか?絶対に抵抗するな、運良くすぐに起きれても絶対に逃げようとしないこと。」


とりあえず変な動きをしなければ殺されはしない。


多分な。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:97,260pt お気に入り:2,210

自由に語ろう!「みりおた」集まれ!

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:22

あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:2,087pt お気に入り:37

処理中です...