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人質
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sideリラ
一言で言うと大変なことになった。
ライアスは普段こんなに喧嘩っ早くないのに。
「ライアス、なんて惨めなんだ。弟の妻に横恋慕か?」
ライアスの瞳孔が一瞬にして開く。
普段感情をあまり表立たせないライアスにしては珍しい。
そしてその怒った顔は少しルシアスに似ている。
ライアスは絶対に王様を殴る。
そう思った私は飛び出して、ライアスと王様の間に割って入った。
「ライアス。」
ライアスを見上げてもこっちを見てくれない。
いつもなら優しく笑って私の目を見つめてくれるのに。
「ねぇ、ライアス。」
少し私の悪口を言われただけだよ。
そんなに怒ってくれて私は少し嬉しいけど、ここで事を荒立ててもライアスが損をする。
「ライアス、こっち向いてよ。」
私はライアスの頬を両手で包む。
ライアスは渋々私の目を見た。
「ライアス、怒ってくれてありがとう。大事に思われていて嬉しいよ。だけど今は落ち着いて。何かされたわけじゃないよ。…ね?」
ライアスの瞳から怒りが削がれていく。
よかった、ちゃんと宥めることができた。
「リラ。」
ライアスも子供みたいな顔をするんだね。
おもちゃを取られた子供みたいない顔だ。
「自分のお父さんでしょう?いくらなんでも殴ったらダメだよ。殴りたい気持ちはよく分かるけどね。」
私の言葉にライアスと真横にいるルシアスが少し笑った。
「お願い、私のお願いを聞いて?」
ライアスが私のお願いに弱いのはよく知ってる。
「全く、末恐ろしいね。」
私はずるいよね。
ライアスの好意を知っていてお願いなんかするんだもん。
だけど、そんな私を責めないのはあなたの優しいところだよ。
「ライアス程じゃないよ。」
私がそう言うとライアスは王様の胸ぐらから手を離した。
それと同時に私は振り返る。
ちゃんと私たちの意向を伝えないと。
でも今日は無理だね。
荒れすぎちゃった。
「陛下。」
そう言うと王はニヤリと笑う。
「本日はいきなり押しかけて大変失礼いたしました。
後日、こちらから出向きます。互いに落ち着いてからまたお話をさせていただきたく存じます。いかがですか?」
私がつらつらとそう語るものだから、ルシアスもライアスも驚いている。
「口の利き方が分かっている者の提案くらいは聞いてやろう。次はこんな即興の場ではなく、正式な場を用意する。
今日は大人しく返してやろう、そのかわり愚息たちの騎士は交渉成立まで俺が預かっておこう、お前たちがここへ攻め入ってくる可能性もある。
こちらとしても保険は欲しい。」
キジャさんとルルドさんを人質に取る代わりに無傷で返してくれるらしい。
あの2人がいる限り私たちは下手には動けない。
人質を取られたら不利なのはこっちだ。
それに、あの2人が今ここから抜けるのは正直厳しい。
「キジャさんとルルドさんは返してください。その代わり、私が保険になります。」
「ダメだよ。」
「却下だ。」
私が人質交換を申し出ると、ライアスとルシアスが即座にダメだと言った。
「いいのか?そんな安易なことを言って。俺はお前を殺すかもしれないぞ?」
こんな脅されたら怖いに決まってる。
今にも私の膝は笑い出しそう。
「いいですよ。でも、このお城で私が死んだら困るのは陛下の方です。」
「ほう、なぜそう思う?」
もうこうなったら強気に出るしかない。
ここで引いたら隙を突かれる。
「私が死んでいると分かった瞬間、ここにいる全員が陛下を殺すからです。」
衛兵たちがざわついた。
「きっと、口にはできないほど酷い殺され方をするでしょう。それでもよければ私を殺してください。」
だめよ、絶対に弱みを見せないで。
大丈夫、私のそばにはライアスとルシアスがいる。
絶対、この2人が私に何もさせない。
2人はきっと、命に変えても私を守る。
だから、怖がらなくていい。
「なるほど、ただのお姫様ではないらしいな。お前は。」
そうだよ、私だってやる時はやる。
「どうなさいますか?陛下。」
私が人質になった方がことがうまく進む。
いざと言う時も、助け出すなら1人の方がルシアスたちも楽だ。
「いいだろう。2人を解放しろ。」
王は私から目を逸らすことなく近くの兵に命令した。
「いいわけないだろ、そんなこと俺が絶対許さない。」
ルシアスが私を引っ張り背に隠す。
「もう決めたことだ、女を渡せ。それとも王である俺の決定に不満があるのか?」
「あぁ、大ありだ。人質なら俺でいいだろう。」
は!!?
「だ!ダメですよ!ルシアス!」
何で主戦力が人質になろうとしてるの??
「もう決めたことだ、お前の意見は聞いていない。」
「俺もてめぇの意見を聞く気はねぇよ。」
ダメだ……ルシアス、キレてる。
「ルシアス!!」
私が大声を上げるとルシアスが少しだけ振り返る。
「私の決めたことです、手を離して。」
「断る。」
断る?
じゃあ仕方ない。
私は拳を握り、ルシアスの手の甲めがけて思い切り拳を振り下ろした。
「っ!!!」
バキッ!!!
「い゛っ!!」
見事にルシアスの手の甲が折れた音がする。
その一瞬できた隙を生かして私はルシアスの背から出て、近くの衛兵の元へ移動した。
「捕らえろ。」
王がそう言った瞬間、兵が私を拘束し私の首元にナイフを突き付けた。
一言で言うと大変なことになった。
ライアスは普段こんなに喧嘩っ早くないのに。
「ライアス、なんて惨めなんだ。弟の妻に横恋慕か?」
ライアスの瞳孔が一瞬にして開く。
普段感情をあまり表立たせないライアスにしては珍しい。
そしてその怒った顔は少しルシアスに似ている。
ライアスは絶対に王様を殴る。
そう思った私は飛び出して、ライアスと王様の間に割って入った。
「ライアス。」
ライアスを見上げてもこっちを見てくれない。
いつもなら優しく笑って私の目を見つめてくれるのに。
「ねぇ、ライアス。」
少し私の悪口を言われただけだよ。
そんなに怒ってくれて私は少し嬉しいけど、ここで事を荒立ててもライアスが損をする。
「ライアス、こっち向いてよ。」
私はライアスの頬を両手で包む。
ライアスは渋々私の目を見た。
「ライアス、怒ってくれてありがとう。大事に思われていて嬉しいよ。だけど今は落ち着いて。何かされたわけじゃないよ。…ね?」
ライアスの瞳から怒りが削がれていく。
よかった、ちゃんと宥めることができた。
「リラ。」
ライアスも子供みたいな顔をするんだね。
おもちゃを取られた子供みたいない顔だ。
「自分のお父さんでしょう?いくらなんでも殴ったらダメだよ。殴りたい気持ちはよく分かるけどね。」
私の言葉にライアスと真横にいるルシアスが少し笑った。
「お願い、私のお願いを聞いて?」
ライアスが私のお願いに弱いのはよく知ってる。
「全く、末恐ろしいね。」
私はずるいよね。
ライアスの好意を知っていてお願いなんかするんだもん。
だけど、そんな私を責めないのはあなたの優しいところだよ。
「ライアス程じゃないよ。」
私がそう言うとライアスは王様の胸ぐらから手を離した。
それと同時に私は振り返る。
ちゃんと私たちの意向を伝えないと。
でも今日は無理だね。
荒れすぎちゃった。
「陛下。」
そう言うと王はニヤリと笑う。
「本日はいきなり押しかけて大変失礼いたしました。
後日、こちらから出向きます。互いに落ち着いてからまたお話をさせていただきたく存じます。いかがですか?」
私がつらつらとそう語るものだから、ルシアスもライアスも驚いている。
「口の利き方が分かっている者の提案くらいは聞いてやろう。次はこんな即興の場ではなく、正式な場を用意する。
今日は大人しく返してやろう、そのかわり愚息たちの騎士は交渉成立まで俺が預かっておこう、お前たちがここへ攻め入ってくる可能性もある。
こちらとしても保険は欲しい。」
キジャさんとルルドさんを人質に取る代わりに無傷で返してくれるらしい。
あの2人がいる限り私たちは下手には動けない。
人質を取られたら不利なのはこっちだ。
それに、あの2人が今ここから抜けるのは正直厳しい。
「キジャさんとルルドさんは返してください。その代わり、私が保険になります。」
「ダメだよ。」
「却下だ。」
私が人質交換を申し出ると、ライアスとルシアスが即座にダメだと言った。
「いいのか?そんな安易なことを言って。俺はお前を殺すかもしれないぞ?」
こんな脅されたら怖いに決まってる。
今にも私の膝は笑い出しそう。
「いいですよ。でも、このお城で私が死んだら困るのは陛下の方です。」
「ほう、なぜそう思う?」
もうこうなったら強気に出るしかない。
ここで引いたら隙を突かれる。
「私が死んでいると分かった瞬間、ここにいる全員が陛下を殺すからです。」
衛兵たちがざわついた。
「きっと、口にはできないほど酷い殺され方をするでしょう。それでもよければ私を殺してください。」
だめよ、絶対に弱みを見せないで。
大丈夫、私のそばにはライアスとルシアスがいる。
絶対、この2人が私に何もさせない。
2人はきっと、命に変えても私を守る。
だから、怖がらなくていい。
「なるほど、ただのお姫様ではないらしいな。お前は。」
そうだよ、私だってやる時はやる。
「どうなさいますか?陛下。」
私が人質になった方がことがうまく進む。
いざと言う時も、助け出すなら1人の方がルシアスたちも楽だ。
「いいだろう。2人を解放しろ。」
王は私から目を逸らすことなく近くの兵に命令した。
「いいわけないだろ、そんなこと俺が絶対許さない。」
ルシアスが私を引っ張り背に隠す。
「もう決めたことだ、女を渡せ。それとも王である俺の決定に不満があるのか?」
「あぁ、大ありだ。人質なら俺でいいだろう。」
は!!?
「だ!ダメですよ!ルシアス!」
何で主戦力が人質になろうとしてるの??
「もう決めたことだ、お前の意見は聞いていない。」
「俺もてめぇの意見を聞く気はねぇよ。」
ダメだ……ルシアス、キレてる。
「ルシアス!!」
私が大声を上げるとルシアスが少しだけ振り返る。
「私の決めたことです、手を離して。」
「断る。」
断る?
じゃあ仕方ない。
私は拳を握り、ルシアスの手の甲めがけて思い切り拳を振り下ろした。
「っ!!!」
バキッ!!!
「い゛っ!!」
見事にルシアスの手の甲が折れた音がする。
その一瞬できた隙を生かして私はルシアスの背から出て、近くの衛兵の元へ移動した。
「捕らえろ。」
王がそう言った瞬間、兵が私を拘束し私の首元にナイフを突き付けた。
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