生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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報復三銃士

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sideリラ


鋭い痛みから逃れられない。


肺に血が溜まっているのがわかる。


首が動かない、きっと折れているからだ。



「リラ!!!」



飛び降りてきたのはルシアスだった。


これは幻覚?


私の割れた頭が覚えているのは、ルシアスが実の父親に首を掴まれたまま釣り上げられていたこと。


違ったかな?



「リラ……。」


ルシアスの顔を見て自分がいかに重症かわかった。


なかなか酷いみたいだね。



「る……ゲホッ!!」


一言も発することができない。


それどころか口から血を吐く大惨事。


それを見たルシアスがもっとつらそうな顔をした。


「リラ、俺の血を飲め。」


ルシアスは自分の手首を噛んで私の口の中へ垂らす。


自分の血とルシアスの血が混ざり合った。


その中でも一際甘くて美味しい血が私の喉を通り、体中を巡る。

 
驚くほど治癒能力が向上した。



「っ…」



折れていた骨は瞬時に治り、痛みが引いていった。


体が動くようになると私はルシアスの首筋に飛びついた。


その姿はきっと、躾のなっていない犬と同じだ。


甘くて美味しい……この血にずっと溺れていたい。


ルシアスの首から牙を抜いて高揚感に酔いしれる。


指についた血ですら美味しくてたまらない。



体もぽかぽかして気持ちいい。



「ったく、こんな時でもお前はそんな可愛い顔をするんだな。」


ルシアスは私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


まだ血が欲しくてルシアスに近づくと、ルシアスはそれを手で制した。




「勝ったらやる。もう少し頑張れそうか?」


小さい子を相手にしているみたいだね、ルシアス。


「もちろん、頑張れるよ。」


むしろ、頑張らないわけないよ。



「だから、ご褒美はたくさん頂戴?」



そしたら今の100倍頑張るから。


「大喰らいだな。でもそこも好きだ。」

「///////」



なんて珍しい。


ご褒美は先払いだったみたい。


「わ…私も…す……」


こんなところで言うのは嫌だ。


なんかこう、もっとロマンチックなとこがいい。


「そこまで言ったなら言えよ。」


私がモジモジしているとルシアスが振り返って私が突き破った窓を眺める。



「リラ、やっぱりその続きは後で聞かせてくれ。」



ルシアスはずっと窓から目を離さなかった。


「全く、報復三銃士だな。」



ルシアスが何を言っているかさっぱりわからず、私は首を傾げる。



「そろそろ来るぞ。」



私はニヤニヤとしているルシアスの顔を見た後に、再び窓を見た。


すると………



「「「せーのっ!!!!」」」



ダリアちゃんとルディとラルフの声が聞こえてきた。



あれ??


ラルフもう人の姿に戻ってるの??



そうかと思えば…



「えっ!!?」



私が突き破った窓からアルテが放り投げられている。



アルテはそのまま真っ逆さまに落ちて私みたいな状態になった。


バキッとかベキッとかいろいろ痛そうな音がする。


さっき私が感じたあの痛みをアルテはきっと今まさに味わっている。
 

耐え難い苦痛に、血だらけのアルテの顔が歪んでいた。

 
「トドメを刺してやらないところがまたえげつないな。」



ルシアスはアルテな顔を覗き込んで笑った。



「さて、俺はまた上に戻って気の狂ったお父様をぶっ殺してくる。この哀れな騎士を頼んだぞ。」


ルシアスが私の頭をポンポンと撫でて、一瞬で消えてしまう。


その入れ替わりで、ダリアちゃんたちが地面に着地した。



「リラちゃん!」

「リラ!」

「あーあ、こりゃ酷い。」



ダリアちゃんとルディは血だらけの私を見てすぐに駆け寄ってきた。



珍しく半裸のラルフはもちろん、アルテを見てニヤニヤしてる。



「大丈夫だよ、ルシアスが血を飲ませてくれたから回復した!」



だからもう、この通り元気いっぱい。


「本当に心臓が止まるかと思ったよ!!ルシアス様がいてくれてよかった!!!」

「本当!アイツたまには役に立つじゃん!!」



2人は感極まって泣きそうな勢いだ。



「2人とも感動するのは後だ。コイツをどうにかしたら好きなだけ感動してくれ。」



ラルフが指さしたアルテはいまだに回復していない。


もう本当に哀れだよ。



「あ、捨てるだけ捨てて忘れてた。」


「私もー。」



投げ捨てて忘れるなんてすごい神経だけど、それだけ私を心配してくれたんだと信じよう。



「よし、じゃあ手始めに逆さ吊りにしてみるか。ライアスの得意技を真似しよう。」



ルディが名案を出した。



吊るすだけじゃ緩いけど、手始めにって言ってるくらいだし準備運動みたいな感じだよね。



「ルディのくせにいい案出すじゃん!あ!見てよ!コイツ腰にこんなのぶら下げてる~♡」



ダリアちゃんは可愛く笑ってアルテの腰に巻いている鎖を取った。



「わざわざ自分の鎖を用意してるなんて感心するな。せっかくだから使ってやるか。」



ラルフは心底嬉しそうにアルテの足に鎖を巻きつける。



「ラルフ、パス。」


「ほら。」



ラルフから鎖の先を受け取ったルディはアルテのその鎖を近くにあった木にひっかけて、テコの原理で吊し上げた。




アルテは見事に逆さ吊りだ。



「うっ………」



アルテは苦しそうに唸っている。




そこで、親切な私はちゃんと教えてあげることにした。



「まだまだこれからだよ、騎士団長様。」



あなたに最高の苦痛を教えてあげる。
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