生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

文字の大きさ
上 下
318 / 471

窓の外

しおりを挟む
sideダリア


想像の10倍上手く入った。


限界まで拳をめり込ませたらアルテがさらに血を吐く。


もう一発殴ろうとしたら…

ゴツッ!!
「きゃっ!!!」


アルテに頭突きをお見舞いされた。


私は床に吹っ飛んで額を抑える。



一撃の精度が高い。


今ので額がぱっくり割れた。


「ぅ…っ…」


血が溢れてくる。


久々の大怪我だ。


「ぐはっ!!」


私の隣に吹っ飛んできたのはルディ。


お腹を押さえて口から血を流してる。


きっとアルテに腹を殴られたんだ。


「ゲホッ…ゲホッ…」


これは私よりも重症だ。


「きゃっ!!」


リラちゃんの悲鳴を聞いて私とルディは勢いよく飛び起きる。


頭をかち割られている場合じゃない!!


リラちゃんは首を掴まれて宙ぶらりんにされている。



「アルテ!!!」



私の顔ときたらとても人様には見せられない。



「リラちゃんに!!」



ルシアス様みたいに額に筋が入っているのがよくわかる。



「触るな!!!!」



私はすぐにアルテに飛びついた。



リラちゃんの首を掴んでいる手を離させるために、アルテの腕に噛み付いた。


「くっ!この!!」


アルテが怯んだ隙に賢いリラちゃんはアルテを押しのけて距離を取る。


相当痛かったみたいで、リラちゃんは首を押さえながらアルテを睨みつけていた。



そして、アルテにとって私の毒は最悪の相性だったみたい。



表情を見ればすぐにわかる。


冷や汗が出てるね。


相当キツいんだ。


こんなにも相性が悪い人がいるんだ。


という事は逆も然り。


私も噛まれないようにしないと。


私がアルテに噛まれたら今度は私が冷や汗を流すことになる。


それにしたって…


「あんた……どんだけ不味い血してんのよ。」



こんなの、口に入れるようなものじゃない。


レディーの品格なんて忘れて私は口に残ったアルテの血を床に吐き捨てた。



「お前もなかなかの毒だ。品性のなさが伺える。」


ブチッ!!!!
「っ!!!」

「??」
「えっ!」



私とルディは急に起きた出来事についていけない。



どうしてアルテの肩に、リラちゃんのヒールが二つ刺さっているの?



「品性がないのはあんたの方でしょ。」


リラちゃんは怒ってる。


靴を脱いでアルテに投げたのは紛れもなくリラちゃん。



リラちゃんの目は血走り、私と同じように額に筋が入っている。


「あんただけは絶対に殺すから。」


リラちゃんは怒ると怖い。


夫婦でそっくりだ。


「それはそれは、楽しみだな。」


アルテは完全に私たちを馬鹿にしている。

 

リラちゃんが不敵に笑うと、何故だかこっちまで色々なことができる気がする。



「私たちもだよ。」



私たちはリラちゃんの殺意を感じ取り、さらに勢い付いた。



**********************

sideリラ


この研ぎ澄まされた闘志と殺気。


人間の時には感じなかったものだ。


私はヴァンパイアになって心も体も強くなった。


この研ぎ澄まされた感情を忘れない限り、私はきっとどこまでも強くなれる。


「っ!!!」


私たち4人は一斉に走り出した。



アルテに攻撃を出させないように、嫌なタイミングを掴んでこっちが攻撃を繰り返す。


今もそう、ラルフがアルテの足を噛み私が顔に殴りかかる。


残念ながらその手は取られてしまったけど…


バキッ!!!「っ!!!」


後ろから来たダリアちゃんがしっかりと殴ってくれた。



アルテの手から逃れようと掴まれている方の手をグッと自分の方へ引く。



驚いたことに、アルテは私の手を離さない。



おかげで、私はアルテと一緒に仲良く吹っ飛ぶことに。


あろうことか…



「きゃっ!!!」


アルテは私を窓の方に投げ飛ばした。



かなりの衝撃で大きな窓にぶつかり、窓が粉々に割れる。



それでも私自身の勢いは止まらずにそのまま窓を突き破る形となった。


落ちていくのは一瞬だと言うけど、これは少し違う。


何故かみんながゆっくりに見える。


頭で理解できてないのね。


私は落ちるんだよ。


この高いお城の窓から。


頭で理解した瞬間、視界からみんなが切り離された。


ゆっくりだった時間は終わり、本当に一瞬で体が重力に勝てなくなる。


落ちていく浮遊感と強風に私は体を硬直させた。



*******************

sideルシアス


首を掴まれたまま全てを見ていた。


アルテが俺の最愛の女を窓に投げ飛ばす瞬間だ。


窓は簡単に割れて、リラの体は外へ放り出される。


一瞬にしてリラは見えなくなって…


ボトッ!!バキッ!!!!


と嫌な音が俺の耳にはっきりと伝わる。


ヴァンパイアだから死ぬ事はない、だが相当痛いことに変わりもない。


おそらく内臓は破裂して、いろいろなところが折れている。


リラを気にしないと言う集中力が一気に切れた。



「離せ。」


リラを助けに行かないと気が済まない。


動かなかった体は簡単に動き、俺は咄嗟に目をついた。


「っぎゃっ!!!」


父親から聞いたことのない悲鳴が聞こえる。


いくら再生するとは言っても痛いよな。


知ってるよ、俺だって目ん玉潰されたことは何度もある。


俺の首はあっさり離されて自由に動けるようになる。


目ん玉押さえて悶絶している父を蹴り飛ばしてすぐにリラの元へ向かった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:97,030pt お気に入り:2,168

自由に語ろう!「みりおた」集まれ!

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:22

あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,640pt お気に入り:37

処理中です...