生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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休憩

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sideルシアス


「団長、ダリアとラルフがイカれ魔女の資料よこせって言ってます。」


キジャは今しがた集中力が切れた俺に話しかけた。



「あぁ、あれなら図書室にある。」


「休憩がてら案内してあげてください。」



休憩がてら、な。



休憩なんてしてる暇ないってのに。


チーム☆ゴーストの誰からもリラがおかしくなったとか、そう言ったことは聞いてないからまだ大丈夫なんだろう。


正直、手詰まりだ。



何としてもあの女の汚い血液を取り除いてやらないといけないのに。


「…あぁ。」


でも、リラの顔は見たい。



一瞬なら…許されるか?



「案内してくる。」



リラに会えると思うと、眠気や疲労が吹っ飛んだ。


顔を見る前からこれなら、会えば全開するかもな。



辛気臭くて、薬品臭い部屋を出ると手を繋いでいるラルフとダリアがいた。


「へぇ、やるな。ラルフ。」


ついにダリアを手に入れたか。


「残念ながらまだだ。」



まだなのかよ。


「あんまり長引かせるもんでもねぇぞ。さっさと食っちまえよ。」

「なっ////ルシアス様//////」

「あんたみたいにか?」



俺みたいに?


たしかに、順番から言ったらリラを食ったのが先だったな。


「あぁ、男ならそれくらいしないとな?」


手が早いと言われればそれまでだが、俺は待つのは嫌いだ。


「王子様って優しくて誠実だって昔話で読んだけど、何一つ当てはまらないんだな。」

「そんなつまらん奴を主役にした作者が悪いだろ。ほら、立ち話なんてしてねぇでさっさと行くぞ。」



俺は1秒でも早くリラを助ける方法を探したい。


*********************

sideリラ

「んー………」


とてもじゃないけど集中できない…


心なしか頭が痛い気がする。


「そんなに唸ってたら狼になっちまうぞ。」


大好きな声が聞こえて、大きな手が私の頭を撫でた。


「ルシアス!」

目があった時に驚いた。


ルシアスの目の下のクマがすごいからだ。


「見たところピンピンしてるな、どこかおかしいところは?」


おかしいところか……


「特には…見ての通り元気ですよ!」


ルシアスに心配をかけたくなかった。



「ルシアス、いちゃついてないで案内しろよ!」


ルディがルシアスに言うと、ルシアスは意地悪な笑みを受かべた。


「なんだ、孤独な狼。うらやましいのか?」

「はぁぁあっ!!?羨ましいに決まってんだろ!!
早く案内しろや!!!」

「ははっ、うるせ。」


ルディの反応を見てルシアスが子供みたいに笑った。



可愛い、やっぱりルシアスが大好きだ。



ほんとに、心の底から。



私…助かるかな?



「リラ。」



ルシアスは私の不安を見透かしたようだった。



「大丈夫だ、どんな方向に転んでも絶対に助けてやる。」



どんな方向に転んでも…


それは私がおかしなことになってもってことだ。


「心臓が破裂したら助かりませんよ…。」


私の言葉にここにいる全員が押し黙った。


最悪だ、空気を悪くしてしまった。



「破裂しない、その前に助ける。ったく、俺の妻はそんなに弱虫なのか?」

「きゃっ!」



ルシアスはみんなの前で私を担ぎ上げた。



「お前らいい子で待ってろ、邪魔すんなよ。」



「「「はーい。」」」


チーム☆ゴーストのみんな!


助けてくれてもいいんだよ!?


そう思っていると、ルシアスはスタスタ歩き始めた。



「ちょっと!ルシアス!どこに行く気ですか!またへ、部屋に連れ込むんじゃ…」


私がそう言うとルシアスがため息をついた。



「この変態、こんな時に何考えてるんだ。あのイカれ女の載ってる本を取りに行くんだ。」



変態!?
私が!?



「変態はルシアスの方です!!…あぁ、もう!この話は終わりです!!!」



私が真っ赤な顔をしてバタバタしてもルシアスはビクともしない。



「はいはい、癇癪姫。」



癇癪姫って…



「誰のせいですか!!!」 

「ほら癇癪出すだろ。」



ルシアスは私を揶揄い続けて私をたくさん笑わせた。



今思えばルシアスなりの気遣いだったのかな。



だってその人は世界で一番、私に優しい人だから。
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