生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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会心の一撃

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sideリラ


「さて、作戦は俺が立てる。こう見えて騎士団長だからな。」


ルシアスは、ルディとラルフとルーカスにゲンコツを入れてそう言った。



「まず、陽動はライアスと誰か1人でいい。俺がやりたいところだが、グリモワールを探している時にもしも敵に見つかった場合に俺が相手をしないといけないから俺は無理だ。」



今ここにいるのは、ルシアス、ライアス、クロウ先生、キジャさん、ルルドさん、チーム☆ゴーストの5人。


計、10人。



8人でグリモワールを探すなら簡単に見つかりそう。



「誰か陽動の立候補者はいるか?」


私は考えた。


ライアスが陽動という事は、ライアスのレベルに合わせて敵の魔女も動くという事。


そんな攻撃に耐えられるのはおそらく、クロウ先生とルシアスくらい。


だけど、クロウ先生はグリモワール探しに絶対に必要だし、ルシアスも護衛として絶対に必要。


次に動けるのはキジャさんとルルドさん。


だけど、ただでさえよくわからないグリモワール探しだから大人の2人も抜けることは厳しい。


となるとチーム☆ゴーストの出番。



ルーカスは絶対的に、グリモワール探し。


頭のいいラルフもきっと捜索隊に入れられる。



残るは私とダリアちゃんとルディ。



この2人のどちらかが陽動作戦の一員になるとして、私は悠長に本探しなんかできるだろうか。


心配で作業が手につかないに決まっている。


ここまできたら答えは決まった。



「はい。」
「却下。」



私が勇気を出して手を上げたらルシアスに1秒も経たずに却下された。



「ど、どうしてですか!!」
「常識だ。」



常識で返されたら私はなんと言い返せばいいの?


「私がやります!」
「他は?誰がやりたい?」



そしてルシアスは聞いてくれない。



かくなる上は……



「ライアス!ねぇ、お願い、ルシアスを説得してよ!」
「リラは連れて行かない。」



私はすぐにライアスに駆け寄った。



「ライアス、お願い。」



ライアスの服の裾を掴み、上目遣いとかをしてみた。



正直あまり上手ではないけど、こんな分かりやすくあざといことをしているんだから察してほしい。


「私、頑張るから…連れて行って!」



********************

sideダリア


ライアス様に致命傷の攻撃が3回も入った。


1度目の攻撃は、リラちゃんがライアス様の裾を掴んだとき。


2度目は、あの可愛い上目遣い。


そして最後はあのセリフ。


連れて行って!って!


何あれ!!可愛い!!!!

私も言われたい!!!



「いいよ。」



あんなに頑なに否定していたライアス様がコロッと落ちてしまった。



「よくねぇよ、惑わされんな。そして、リラ。お前も惑わすな。」



ルシアス様がリラちゃんの赤い頬を優しくつねる。



「ライアスがいいって言ったからいいもん!!」


リラちゃんはムキになり子供のようにルシアス様に言い放った。


もちろん、これがルシアス様にとっての会心の一撃となる。



「……(絶対にダメだ。)可愛いな、おい。」



ルシアス様、ルシアス様、逆です、言いたいこと逆です。


もうダメだ。



ルシアス様までリラちゃんの可愛さに飲まれてしまった。


正直私はリラちゃんに陽動はやってほしくない。


ライアス様が一緒にいるなら、きっと命に変えてもリラちゃんを守ってくれるけどやっぱり心配だから。



「ルディ、あんたリラちゃん説得しなさいよ。」

「……………」


ここは説得役のルディに声をかけた。


けど…



「ルディ?無視してんじゃないわよ、駄犬の分際で!!」


私が勢いよく振り返ると、ルディは血溜まりの中で倒れていた。



「は!!?」

「ルディ、鼻血出して倒れた。この出血量、死ぬんじゃ…」

「いい、もう放っとけ。死なせろ。」




ルーカスはルディが鼻血を出して倒れた現場を見たらしい。


おそらくラルフもだけど、相当自分の相棒に呆れていると見える。




もちろん私も呆れた。


そして奇しくも、陽動作戦はリラちゃんとライアス様で決定してしまった。
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