生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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意味のないアドバイス

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sideライアス


本当に僕らはつくづくリラに甘い。


特に僕はそうだ。


嬉しくてたまらなかった。


好きな子に連れて行ってなんて言われて断る男がいるだろうか。


これがこんな危険な場所じゃなくて、もっと楽しいところだったらよかったのに。


「ライアス、どうやって陽動する??私踊ったり騒いだりした方がいい??」


今から僕らが行くのは一寸先は闇と言っても大袈裟ではないようなところなのに。


踊ったり騒いだり?


きっと死ぬほど可愛いけど…



「それはまた今度ね。今回は僕の地位を使おうと思っているよ。」   


僕がそう言うと、リラは分からないと言いた気に首を傾げた。


「なるほどな、王様の急な訪問者ってわけか。それで?はどんな役回りだ?」


ルシアスはまた憎まれ口を叩く。

 
本当はリラには隠れてもらっているつもりだったけど、こうも分かりやすく喧嘩を売られたら買わないとね。



兄弟の間でも礼儀は必要だから。


「もちろん、妻の役だよ。国王が夫婦で親交を深めに来たって言ったら自然でしょ?」


「お前とリラが夫婦?ありえないだろ。」


ありえない事はないと思うけどね。


「そう?こんなに愛しているから十分お似合いだと思うけど?」


僕の言葉にリラが顔を赤くして目を背けた。


可愛い、照れてる。



「どれだけ愛していようが俺の妻だ。」


ね。」



リラの気が変わるかもしれないのによくそんな事が言えるよ。


「あ?」
「何?」


「わかった、わかった、落ち着け。喧嘩は無事に帰ってきてからでもできる。」


クロウが僕とルシアスの間に入った。



「とりあえず、俺たち捜索隊は本が見つかり次第空に花火を打ち上げる。青い花火だと最高、赤い花火は即撤退。
これでどうだ?」


クロウの作戦は本当にわかりやすくていい。


「完璧だと思うよ。」


「異論なし。」


僕らが意見を言って反対する人もいない。


ならこの作戦で決定だ。


「じゃあ北と南に別れるぞ。俺たち捜索隊は北。陽動係は南から頼む。」



僕とリラは北からね。


「了解。」
「はい!」



楽しいデートになるといいけど。



*******************

sideリラ


一時はどうなるかと思ったけど、さすがクロウ先生。


ちゃんと2人を止めてくれた。



「リラ。何かあった時は全力で逃げろ。アイツは1人でもどうにかなる。指輪はしてるな?」


ルシアスは私の頬に軽く触れて、指輪のことを聞いてきた。



私はもちろん、左の薬指に指輪をつけているからそれを見せる。


「さすが、お利口さんだな。これは俺の指輪と連携してる。少しでも危ないと思えば呼んでくれ。いいな?」


心配性すぎて、どれ程愛されているかよく分かる。   


「はい、もしもの時は呼びます。」


ルシアスは名残惜しそうに私の頬から手を離した。


「後でな。」

「はい、また後で。」 


そんな顔をされたら私も切なくなる。


この作戦、失敗は許されない。


もっと集中しなくちゃ。


「じゃあ、陽動2人が入ってきっちり30分で俺たちもグリモワールを探す。
どうにか30分以内に大騒ぎを起こしてくれ。」


クロウ先生の言う大騒ぎってどのレベルだろう。


騒ぐことに関しては、ルディがスペシャリストだからなぁ… 


あ!ルディに聞けばいいんだ!
  

********************

sideルシアス


 
リラは何を思ったのか、とんでもない人物にアドバイスを聞きに行った。


「ルディ!騒ぎ方教えて!」
「俺のモノマネすればいいんじゃね!?」

「それいいね!ありがとう!!」
「おう!気をつけてな!」




そんな適当なアドバイスがあるか。


不安でしかない。

やっぱり今からでも担当を変えるか…

  

「ルシアス、大丈夫だ。リラのハートは強い、ルディのモノマネくらいやってのける。」


ラルフが意味のわからんアドバイスを俺にしてきた。



「そこを心配してるんじゃねぇよ。」


むしろモノマネはうまいだろ。


毎日一緒にいるんだから。
  

「それ以外どこが心配なんだ?」


そうか、ラルフとは論点が違う。


「俺もわからなくなってきた。とりあえず俺らも準備するか。」


「あぁ。」
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