生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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ルーカスの特訓

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sideルーカス

「この森のどこかにある青色の花を取って来い。」


逆さ吊りにされたリラの体から血がどんどん抜けていく。


頼み込んでもきっとリラを返してはくれない。


「花びらが3枚の珍しい花だ。見ればすぐに分かる。」


それに、どこかって……。


どこにあるか分からないからいろんなところに飛び回らないといけない。


確かにこの森はほとんど行き尽くしたけど無理がある。


「さぁ、急いだ方がいいぞ。命には限りがある。」


あわよくば、リラを殺す気だ。


そんなこと絶対させない。


俺が青い花を取ってくればそれでいい。


「……わかった。」



*********************

sideリラ

うっすらと、靄がかかった意識の中で2人のやりとりを聞いていた。


花を取って来いとかなんとか。


それより…


「……っ…。」



全身が焼かれているように熱い。


どうしてこんなにヒリヒリするんだろう。



しかも逆さまになってる。


ほんの少し前の記憶がない。


きっとあの魔女が暴れたんだ。


「目が覚めたか?」


ロレンジアさんが私に話しかけた。


首にまで蔦を巻かれてる私は答える事ができず、軽く一度頷いた。


「悪いがもう少し血を抜かせてもらうぞ。また暴れられたら面倒だ。」



血を抜く…


聞いただけでゾッとするけど、今の状況を考えたらそうしてくれた方が私も安心。


不用意に誰かを攻撃しなくて済む。


それが自分の記憶のない時に起こることだから、暴走するのは本当に怖い。


私がやってるわけじゃないんだけどね。


でも、体は弱らせておいて損はない。


全ての考えがまとまって、もう一度頷いた。



「だが…あの小僧が青い花を持って来なければお前は死ぬことになる。泣き喚かないのか?」



あぁ、2人でしていた賭けのことね。


側でよく聞いていた。


賭けというより、ルーカスは脅されて仕方なくって感じだったけど。


私は一度頷くと、ロレンジアさんは声をあげて笑った。



「大した度胸だ。」


度胸も何も信じるしかない。


ルーカスは必ず持って帰ってきてくれるよ。


必ず身につけるはず。


苦手だった空間魔法を。


私は友達としてそれを信じるしかない。


こんなに冷静なのは、きっとある程度血を抜かれたからだ。



思考が鈍っているのがわかる。



ある意味いいのかも。



恐怖を感じない。


死が怖いとか、苦しむのが嫌だとか、そんなのがどうでもよくなってきた。


血を抜かれるだけで心が死ぬなんてことはあるのかな?



ただ朦朧としているだけ?



どっちでもいい。


恐怖の中でもがく事ほどつらいものはない。



私はその感覚をよく知っている。


これまで何度も命を狙われ、何度も死にかけたんだから。



逆さ吊りにされて、血を抜かれるなんて慣れっこだ。


そう言えば、それこそ変な森で変な老婆たちに血を抜かれたことがあったっけ?



あの時はルディと一緒に捕まった。



懐かしいなぁ……。



ポタッ…ポタッ…


嫌な音が頭の上から聞こえる。


私の血が垂れる音だ。




どれくらい血が出たんだろう。


確認もできない。



それに変な動きはしない方がいい。



首に蔦が巻かれているから絞め殺されるかも。



とにかく今は大人しく、体力を温存して殺されないように。



私はここで生き延びる義務がある。



私の死因がルーカスになってしまったら、優しいルーカスはきっと立ち直れない。



意地でも生きなくちゃ。



まずは眠らないように。



眠れば体温が下がってしまう。



体温が下がれば、もちろん死ぬ確率が高くなる。



けど、縛られていることよりも、吊るされていることよりも、眠気に耐えるのはかなりキツい。




ルーカスを信じてひたすら待とう。



残念ながら今の私にできることはこれしかない。

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