生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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ルシアスの診察

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sideリラ


「喋るな、痛いだけだぞ。」


ルシアスはそう言って私の背に優しく触れる。


「ははっ、完全にいってるな。」


ルシアスは呆れたように笑った。



「主に胸椎だな…。で、肩まで脱臼か。」


え!?


私、肩脱臼してるの!?


背中が痛すぎて気づかなかった。


「とりあえず、痛い事から先に終わらせる。」


痛い事…やっぱり痛いことするんだ…



どうしよう、泣いちゃダメ。


私は大丈夫だって。



さっき散々痛いことされてきたんだから。


我慢できるよ…!



「何か噛んどくか?相当痛むぞ。」



そ…相当痛む……?



「い…嫌です……痛いのは、嫌です。」




**********************

sideルシアス


リラは俺の忠告に怯み上がってしまった。


「そんなに泣くなよ、可哀想になるだろうが。骨を戻したらすぐに痛みは治る。」


骨がくっつけばこっちのもんだ。



「だって…だって……」


大人びたとこもあると思えばこんなところは子供だな。


「ギャン泣きされても骨は戻す。背骨がちゃんとしてないと出産の時に苦労するからな。」



俺がそう言うとリラは泣くのをピタリとやめた。



「ただでさえ苦しいのに、骨格が歪んでいて難産になるのは嫌だろ?」


リラに負担をかけることにはなるが、子供が欲しい。


誰だっていいわけじゃない。


リラとの子供が欲しいんだ。



「あ…あの……ルシアス…その……言い難いんですけど…私はまだ、妊娠してません…。」


「知ってる。俺は未来の話をしてんだ。」



これから先ずっと一緒にいるからな。



子供はそのうちできる。



「それは…ものすごく幸せな未来ですね…。」



そりゃそうだろうな。


最愛の妻がいて、可愛い子供がいて、不幸なはずがない。



「あぁ、だからここで踏ん張ってくれ。できるな?」


リラが泣くのをやめた。


腹を括ったらしい。



「はい!」



さすがは俺の妻だ。



「よし、じゃあ歯食いしばれ。一気にやる。」




***********************

sideリラ


ルシアスはどんな苦痛の中でも私に幸せな夢を見せてくれる。


私は将来、ルシアスの子をお腹に宿したら絶対に産むと決めているから、そのためにも痛いことは我慢する。



大丈夫、これで終わりだよ。



「3でやるぞ。1…2…」



大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫!!!!


「3。」パキッ!!!!
「ぎゃっ!」


絞められた鳥のような声が出た。



「っ!!!」
「リラ、深呼吸だ。痛みが引く。」



言われた通り、深呼吸をした。



本当に骨が元の位置に戻ってる。


さっきは深呼吸すらできなかった。



「はぁ……はぁ………」


ぽろっと片目から涙が溢れた。



これは生理的な涙だ。



「よく頑張った。」



ルシアスはそう言って私の頭を優しく撫でてくれた。



「ルシアス…ありがとうございます。」



本当に頼りになる人だ。



「どういたしまして。それより、リラ。お前はここで寝とけ。いくら骨を戻したからと言ってすぐに動き回れる訳じゃない。
骨に入ったヒビもまだ完全には治っていないはずだ。」



詳しい、お医者さんみたい。



「はい。」



ルシアスに頭を撫でられると本当に安心する。



「また後で来る。」



ルシアスと抱き合って眠りたいけど、それはダメだよね。


ルシアスにはやる事がある。



「はい…待っています。」


私も言うことを聞いてここにいよう。



あなたが帰ってくるこの部屋に。
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