生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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sideリラ

二人には無理を言ってついてきてもらった。


「こっちです!早く!!」


焦る私とは正反対の二人。


「新妻さーん、俺らが言ってもできる事はありませーん。」


キジャさんは相変わらずこんな様子。


「絶対にそんな事は」「お前ら何やってるんだ?」


背後からルシアスの声が聞こえた。


私はすぐに振り返り現状に驚く。


「……ルシアス。」


肩にライアスを担いでいる。


「殺しちゃいました?」


キジャさんが縁起でもないことを聞いた。


「いや、殺してない。……多分な。」


ルシアスは手加減しなかったと言うことだ。


「大丈夫です、息はしてます。」


ルルドさんがすぐさま気絶したライアスの確認をした。


「それはよかったとして、ライアス様をどこへ連れて行くんですか?」


キジャさんがルシアスに聞くと、ルシアスは床を指さす。



それってまさか……



「地下牢?」


私はまさかと思いながら聞いたけど、ルシアスは頷いた。


「あぁ、もちろん目が覚めるまでぶち込んでおく。」


いくらなんでもそれはやりすぎな気がする。


「ルシアス、それは可哀想ですよ。」


暴れるからと地下牢に入れるなんて。


ライアスは獣じゃない。


「俺がコイツなら喜んで地下牢に入るぞ。お前を殺しかけたんだからな。」



それはルシアスの話でしょう?


「ライアスはさほど気にして無いかもしれませんよ?それに、起きていきなり地下牢に入っていたらきっと混乱します!」


ライアスが取り乱した時、私はどう対処していいか分からない。


「大丈夫だ。弟の俺が大丈夫って言ってるんだから信じてくれ。」



ルシアスが自分のことをはっきりと弟と言った。


普段は滅多に言わないのに。



「…分かりました。」



その物珍しさに完敗して私はそう答えるしかなかった。



でも、やっぱり心配だ。


「でも…地下牢に一人って寂しくないですかね?」


もしかしたら寒いかもしれない。


毛布を持っていってあげよう。


「一人?何寝ぼけてるんだ。もう一人いるだろう?」



私は本当に寝ぼけているんだろうか。



「あ!」



そうだ。



地下牢にはもう一人いる。




あの怒り狂った魔女。




あの魔女とルームメイトだなんて、起きたらきっと地獄ね。


**********************

sideライアス


「っ……」


硬い床で目を覚ました。


「ん…。」


ここは、地下牢かな。



「いたた……」


体はかなりよくなったみたいだね。


きっと、リラの血のおかげ。



「穢らわしい!!触るな!!」


それはいいとして…



「騒がしいね。」


僕の隣の牢の住人は。




「あ!!ライアス起きた!!」


ルディの元気な声が地下牢に響く。


「ちょっと!駄犬!ちゃんと押さえなさいよ!!」
「喧しい!誰もがゴリラ並の腕力を持っていると思うな!!」
「いいから二人とも押さえろ!!」


はっきり言って状況が読めない。


鎖に繋がれた魔女を抑えるルディとラルフとダリア。



「お目覚めかよ、お兄様。」


そして、その目の前で注射器を構えている僕の弟。


「うん…………で、何してるの?」



もうこの質問に尽きる。



「見ればわかるだろ。」


わからないから聞いてるのに。


「まぁいいや、後でちゃんと説明してね。」



どうしてか、僕は記憶が曖昧だ。


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