生意気な妹がVTuber活動をやってるなんて、冗談だと言ってほしい!

あすぴりん

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第4話 妹がVTuberをやっているのが友人にバレるなんて冗談だと言ってほしい!(前編)

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 学校の放課後、半分寝ている身体でのろのろと俺は帰り支度を整えていた。

 ここ二週間を考えてみる。すみれのVTuber活動を手伝う日々が続き、切り抜き動画以外にも何かとやらされていた。おかげさまで画像編集ソフトや動画編集ソフトの扱いには少し慣れたものもある。そしてVTuber星野宮きらりのチャンネル登録者数はもうすぐ7万人に手が届きそうな勢いになっていた。

 地道に作った切り抜き動画も反響があり、少しずつであるが認知されコメントや評価もされている。自分のチャンネルではないものの、作ったものに誰かの反応があるというのは見てて嬉しいものだ。

「なぁ、お前VTuberの星野宮きらりちゃん見てるか? 今かなり人気出て、めっちゃお勧めだぞ」
「お勧めって、以前は雷桜らいおうつばきちゃん推してたじゃん、お前さ」
「つばきちゃんももちろん良いけど、きらりちゃんも良いんだって。コラボやんねーかなー」

 クラスメイトが星野宮きらりの話をしているの聞いて、ついそっちの方に耳を傾けてしまう。

 と、同時に俺と同じように興味がある人物がいるようだった。妹のすみれだ。ちらちらと様子を気にして耳をそばだてていた。やはり自分の事を話されていると気になってしまうのだろう。

「ちょっとすみれ、聞いてる~?」
「え、あ~ごめんごめん。聞いてなかった。それで何の話だったっけ」
「別に大した話じゃないけど。ねぇ最近どうしたの。もしかして彼氏でも出来たのか、この子は」
「そんなんじゃないって、ほんとに」

 すみれの目線を見て、自分の方を見ていないと気付いた竹中は、からかい気味に言ったものの、当の本人であるは誤魔化すだけだった。そりゃ自分の分身のVTuberの名前が出れば気になるってもんだよな。

「だってすみれ急に最近付き合い悪いから、てっきり彼氏に夢中だと思ったんだけどねぇ」
「その最近ちょっと、色々忙しくてね。あはは……」

 苦し紛れに苦笑いで答えるすみれに、竹中は何か考えているようで、明らかに納得してない様子に俺は見えた。

「へぇ~、忙しいねぇ。ふーん、そっか」
「ほんっとゴメン。また今度埋め合わせするから、ね?」

 すみれが両手を合わせて謝る態度に、竹中は強く責める事が出来ない様で、肩をすくめている。そしてどういうわけか俺の方をちらっと盗み見てきた。どうやらこっちに話を聞くつもりかも知れんな、竹中の奴は。

「良いよ。気にしないで。でも何かあったら相談してよね」
「ありがとう、朱里。その時はちゃんと言うね。じょあ私今日は急いで行く所あるから、お先ね」
「はいよ。また明日」

 ひらひらと竹中が手を振ってく中で、すみれは俺の方を軽く一瞥いちべつして教室を後にした。やれやれ今日も配信関連で忙しいのだろう。

「私も人の事言えないけどね。ほんとは」

 竹中はすみれが去った後にぽつりと呟くのが聞こえたが、内容までは正確には聞き取れなかった。さてと俺も今日は帰るかと思い席を立ったところで、竹中が気付いたら正面に立っていた。やはりこっちに来たか。やれやれまた面倒な事にならなきゃ良いが。

「やっほー。赤坂君。今日ちょっと帰り良いかな?」
「俺に用なんてどうしたんだよ」
「うーん、そのね、今日はちょっとすみれの事で相談がしたいなーってね」

 彼女は眉尻まゆじりげながら俯いている。演技臭さが漂っているものの、さすがに無視は出来ないな。こいつも多分すみれを心配しているのだろう。

「すみれがどうかしたのか?」
「そ。最近何か私に隠し事でもあるのかなって不安で。何か知らないかなって」

 やはり俺が何か知ってると思っているのだろうな。まず間違いなくVTuber活動が原因なのだろうな。絶対に登録者数10万人にしてみせる! と、この前1人で喋って興奮していたのを目撃したしな。

「確かにあいつ最近忙しそうにしているみたいだな。詳しくは知らないけどさ」

 自分の目が泳いでいるんじゃないかと不安になりながら答えると、竹中が怪訝な様子でじろじろ見てくる。これは口止めされてるけど、ついポロッと言わないか気を引き締めないと危ないな。

「あっやしいな~。何か隠してないの。赤坂君何か知ってるでしょ?」

 竹中の顔がグイグイと目と鼻の先まで近づく。近い、近い。竹中にはもうちょっと自分の行動を客観的に見てほしいものだ。

「隠してない、隠してないって。それと近い!」

 必死に顔を反らして俺は距離を取る。竹中も学校の中ではかなり可愛い部類なのだ。すみれが目立って隠れているが、隠れファンもいるのを知っている。

「これは怪しいねぇ~。ならこの後、赤坂君の部屋に行って詳しく問い詰めるとしよう。今日は私時間あるし。決まり!」
「おい、なに勝手に決めてるんだ!」
「もしかして不都合でもあるの?」
「別にそんなんじゃないけど、また急だな」

 渋ってる俺の背中を竹中が押して、強引に教室を出ようとしてくる。

「ほらほら細かい事気にしないの。さっさと行きましょ」

 そうして何故か2人で一緒に家へと帰ることになったのだった。

  

「おじゃましまーす。ここが赤坂君の部屋か~」

 部屋に入って早々、竹中が興味津々に辺りをキョロキョロと見渡す。

「勝手にくつろいでてよ。飲み物でも取ってくるから」
「あ、そんな気使わなくても良いのに」

 俺は一階のキッチンに二人分の缶ジュースと茶菓子を取って戻ってくると、こっちにお尻を突き出してベッドの下を覗き込んでいる人物がいた。また時代錯誤な事をして、そんな所を探しても、お目当ての物なんざ無いのだよ。時代はパソコンにダウンロードして、フォルダに鍵を付けてあるからな。

「おい、そんな所で何してるんだよ?」
「そりゃエロ本を探してたに決まってるじゃない。なのに出てこないなんて、男として大丈夫?」
「すごい失礼な事言ってる自覚あります、竹中さん? ったく男の部屋にやって来て早々エロ本探す女の方が変だろ。お前ネタが古いぞ」

 トレーを机に乗せ、竹中にジュースを渡し、自分の分のジュースのプルタブを開けて口を付ける。

「もうっ、反応薄いとつまらないな~」
「そりゃ悪かったな」
「まぁいいや。本題に入るけど、すみれの事で。教室でも言ったけど、最近忙しそうだし。何かあったのかなって」
「そ、そうだったな。何か勉強でもしてるんじゃないか。英会話とか茶道とかテニスとか?」

 俺は本人から、VTuber活動の事を周りに口外しないで欲しいと言われている。だからおいそれと兄の俺がそれに繋がる事は言えないのだ。

「ふーん、そっか。赤坂君も詳しくは知らないのか。それは残念」
「そのうち、竹中にも言うんじゃないのかな……。きっと」

 竹中は納得してないだろうが、さすがにVTuberの事は言いたくないのだろう。友人に見られたくない気持ちは少し分かる。恥ずかしいのだろう。親友なんだし、気にし過ぎだと思うのだが。それはこっちが押し付けて良いもんじゃないしな。

「そっかー。まぁ良いけどさぁ。おや、このノートパソコンやけに可愛いじゃん。これって赤坂君の?」

 ピンクのノートパソコンに目が惹かれて指さす。

「いや、それは。すみれのパソコンで、たまに使わせてもらっててさ」

 どうやらその机に置かれたパソコンが気になり、竹中がさり気なく閉じてある上蓋を開けると画面が起動した。勝手に開けられたらちょっと困るぞ、やばい。

「ちょっと、何勝手に触ってるんだよ」

 しまった。最近頻繁に動画の編集などでスリープ状態にしていて、パスワードも掛らないようにしていたと気付く。とっさに俺はパソコンを取ろうとするものの、一瞬遅く竹中がしっかりと持ってしまった。

「おやおや、見られて困る物でも映ってるのかな~?」

 開かれたパソコンの画面にはVTuber雷桜らいおうつばきのトップページが映っている。別に見れれてやましい画面ではないが、かと言ってあまり見られたい画面じゃないのも事実なんだよな。

 VTuber雷桜らいおうつばき。最近見始めたばかりだが、なかなか魅力的な、個人勢のLive2D型のVTuberだ。特徴なのが見た目のポイントに、青い瞳、青い髪の頭に小さな角が二つ生えている。設定では200歳の鬼となっていて、少し悪戯好きな性格だった。

「おい、別に良いだろ。それ返せって」

 こっちの言葉には目もくれず、竹中が夢中でずっと画面を見つめている。

「この子ってもしかしてVTuberの雷桜らいおうつばき?」
「そうだけど。なんだよ、竹中も知ってるんだな。VTuberとか」
「うん、結構好きだね。でも赤坂君がこの子のファンだったとはね~」

 妙にニヤつくので不審に思ったが、

「……まぁそのちょっと前から見ているかな。ファンって言うと語弊があるような」

 ぽりぽりと頬を掻きながら、ちょっと恥ずかしいので小声で答える。

「なぬ、ファンじゃないの? チャンネル登録してるくせに。む~。素直に大ファンって言っても良いのだよ?」

 どうしてそんな拗ねているのか理由に苦しむが、こいつもきっと雷桜つばきが好きなんだろう。なら別に大した事じゃない。安堵して俺は飲んでるジュースを最後まで飲み干した。

「おや、このチャンネルは何かな。『星野宮きらり専属/切り抜き動画チャンネル』ってこのパソコンからアップしてるようだけど。何かな」

 竹中がマウスでポチポチと操作していく。やばい、そのチャンネルが他人のページではなく、そのパソコンからアップされたページだと確実に気付く前に止めなくては!

「待て待て待て。それ以上いじるな、返すんだ」
「どうしたの、そんなに焦って。なになに、急に」

 俺は竹中からパソコンを取り上げようと手を伸ばす。しかし向こうもしぶとくパソコンから手を放そうしてない。2人が取り合う中で、どんどんエスカレートして互いの身体が密着していく。

 故意ではなく、偶然胸のふくらみが腕に当たる。これは思いの他大きくて、つい何カップか考えてしまう男としてのさがが恥ずかしい。

「今私の胸に触れたでしょ! 離れてってば!」
「ふ、触れてないって。良いから、そのパソコンを返すんだ!」
「そんな事言われて、はいそうですかと離す私じゃないんだな」
「このっ!」

 この時夢中になって俺達がパソコンを取り合っていたので、誰かが急ぎ足で階段を上がる音は聞こえていなかった。段々と音が近づくが未だに取っ組み合っていて。その足音の主はもの凄い勢いで俺の部屋の扉を開け放った。

 ガチャンッ!

 ハッとなって俺達は開け放たれた扉の方に振り向くと、

「こ、これは一体どういう事か説明してくれるかしら、お2人さん?」

 鬼の形相で睨むすみれの姿がそこにはあった。
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