私の恋が実るまで

榊原慎也の昔話

その後榊原くんは
「柊さんになら話してもいいかな」
と言って自分の話をし始めた。
友達になるのならお互いのことを知るべき、俺は柊さんの事を勝手に知ってしまったから俺の事情も知るべき、そうなればお互い様。
という理由で
「これって特別扱いになる？
嫌な思いとかしない？」 
彼が不安そうに言うので
「ならこうしよ、私が不安に思ったらはっきり言う。場合によったら強い口調になるけど…」
「分かった。それで行こ」
そうしてる榊原くんは話してくれた。自分の話を。


話を聞くと榊原くんの両親は榊原くんが子供の頃父親は事故で、母親は疲労が重なり続け重い病気になり亡くなったと言う。
その後親族中をタライ回しのようにされ、挙句の果てにはどこの家も子供が産まれたなどで榊原くんのことを邪魔者扱いし
近くの寮のある学校に送られる羽目になり、学費と寮など、生活にかかるお金は榊原くんの両親の遺産で払うことになったと言う。
必要なお金は全て遺産から、足りなければバイトをして払うように、らしい。
あの時、街を案内する時の見返りを要求した時の榊原くんの顔が蘇った。
「じゃあ私、榊原くんにとって失礼な事を」
「大丈夫、あれはまだお父さんとお母さんが生きてた頃、コツコツ貯めたお年玉とお駄賃を貯めたものだから。
それに経済的にしんどかったら断ってる」
と私の言葉を遮るように榊原は言う。
「じゃあ今度私の奢りでご飯行こ？
そうなったら逢いこだし」
「うん、ありがとう。
それとさ、おすすめのバイトとかない？」
と榊原くんは言うのだった。