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12 リン
しおりを挟む涼太は、病院の屋上で空を見上げている。
いつかは来るかもしれない不幸は、いつの時も突然のように顔を見せる。
「なぁ、ジュリア、お前、あの星になったの? どの星なの? 俺に見えるかな? どの星よりも強く輝いて、何処にいるのか教えてくれよ」
そう言って泣き崩れた。
その頃、ぺペンギンは涼太の家を探り、
「あった、これや」
ジュリアは涼太の家に泊まりに来たことがあると聞いていた。
「この化粧箱の中に、なんやこれ? 爪削りか? よっしゃ、これでなんとかなるやろ」
同じ頃、チャイナタウンの漢方専門診療所の前に小型のトラックが止まった。
そして、どんどん荷物が診療所内に運び込まれた。
早々にぺペンギンが診療所に戻ると、
「マルセリーノ統括教授、セッティングは全て完了しました」
とリンが言った。
「すまん、リン。迷惑かけてもうたな」
「いえ、ではお願いします」
「なぁ、リン。ワイら三人で、あの保育園で一緒に暮らすことはできひんのか?」
「はい、私は母星の禁を破りました。その責任を取らなければなりません。お願いします」
そう言うと、リンは大きなケースの中に、自ら横たわり、
「では統括教授、あなたと過ごせた日々は、幸せでした」
マルセリーノは、リンの胸の扉を開けると、メインスイッチを切った。
リンの目の輝きが完全に消えた。
「なぁ、リン、最後に、幸せでしたって、それ言うたらあかんやろ」
そう呟いたマルセリーノは、リンが組み立てた大きな機械の前に座り、その機械へ爪削りに残ったジュリアの爪の粉をセットするとその機械の電源を立ち上げた。
「ちゃんと働いたれよ! これは、リンの思いじゃー!」
そう叫ぶと、マルセリーノはスタートボタンを押した。
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