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第十四章 Execution of Spy Activities
しおりを挟む涼太は、敵を愛する、と言う意味がいまいち分からない。
しかし、戦いの場所は目の前にあるのではなく、自分自身の心の中にある、と言うことはなんとなく分かる、様な気がする。
涼太は、ぺペンギンに必殺技の空中3回転右フックを頂戴してから、毎晩、少しづつ、アメリカに来てからの修行の話をしだした。
今は痛みも引いてはいるが、最初はぺペンギンの小さな翼に捉えられた顎のアザは小さいものの、顎関節が軋む様に痛んだ。
涼太は、さすが宇宙ボクシング何んとか級3位だけのことはあると思いながら、三日三晩流動食で済まさなければならなかった。
流動食を続けている間は、上手く喋れなかったが、顎の痛みが段々と治ってくるに従って、思いをしっかりと伝えられる様になって来た。
「そうかぁ、何んとなく分かってきたわ、そろそろワイも動き出さんとあかんみたいやな」
「え?」
「明日、一緒に仕事に行くわ」
「ええ!」
その翌日からぺペンギンによる工作員活動が始まった。
涼太は、いつもの様に店に出勤し雑用を終えて、今は仕込みを続けながら、客が来るのを待っている。
そして、涼太が着ている板前用の白衣の内側には紐で括り付けた袋がぶら下がっている。
その中にはぺペンギンが準備万端で様子を伺おうとしている。
流石に胸を張ると、お腹がぷっくりと膨らんでしまうので、今日の涼太は、やや前傾姿勢である。
そして最初の客がやって来た。
板前と喋っている言葉からして、イタリア系アメリカ人のようだ。
「流石ブルックリンやな、リトル イタリー から来たんか? ブロンクスも近いし、そんな所やろな」
ぺペンギンは、一人呟くと全宇宙星間翻訳装置のスイッチを入れて耳に差し込んだ。
「ロッソ、ロッソ、ツナ」
「ディオ ミ ペネディカ!」
「メノ マーレ」
「オー、タべナハーレ」
「クイダオーレ」
「ディバルーソ、キョウト ワ キダオーレ」
「・・・・・・・・。」
「あかん、これ、何処の国の言葉? 日本語っぽくも聞こえんねんけど」
そして次に入ってきた客に耳を傾けると、
「ベル、ビー」
「ブロン、ブロン、ドラー ドウ」
「オバハーン ノォ 」
「ナガジュバーン」
「ノン、ノン、ボンボン ワ ハンズボーン」
「・・・・・・・・。」
「あかん、何んやねん此れ、フランス語っぽいけど、日本語にも聞こえるし。やっぱあかん、これ壊れとるやないかい! 宇宙電子工学部の連中、手ぇ抜きよったな」
誰にも聞こえないように小さな声で怒鳴ると全宇宙星間翻訳装置を耳から取り外した。
「まずは、客の反応からやと思ててんけど、これはあかんわ」
そう呟くと、ぺペンギンは、涼太の白衣から首を出して周りを見回した。
すると、横で板前が天麩羅を揚げようとしている。
この店ナンバー1の板前、副板長である。
「よっしゃ、作戦変更や」
またもや、そう呟くと、隣の板前を観察し始めた。
涼太は気が気でない。
もし見つかったら、
「マスコット人形です」
と言おうと思ってはいるが、そんな逃げ口上よりも見つからない方が良いに決まっている。
そんな涼太の思いも気にせず、ぺペンギンは涼太の首の下から顔をのぞかせ、観察を続けている。
そして観察記録を書き留める為に、再び涼太の首からぶら下げられた袋の中に戻ると、手帳にペンを走らせ出した。
一通りの観察と、記録が終わると、ぺペンギンは自分の首から斜めにぶら下げてあるショルダーバッグに全宇宙星間翻訳装置、手帳とペンを仕舞い込み横になった。
涼太が動く度に、ハンモックのようにぶらぶら揺れる袋の中が妙に気持ち良い。
ぺペンギンはやがて眠ってしまった、店じまいまで熟睡した。
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