生まれ変わってでも結ばれたいっ!〜前世を覚えていませんけどっ!?〜

宮沖杏

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◆◆◆
私は告白もできないまま刻々と日々が過ぎていった。ルーカスがここに来てから1年が経つだろう。

最近じゃ回復魔法もすっかり板につき最近じゃ1日10人ほどを回復してもいいようになっていた。時には高回復魔法も使うこともあり、その度にお礼を貰えるのはとても嬉しくなる。


今日の最後の治療をする男の人は目の下のクマが酷く、げっそりとしているとのの、体はどこか傷付いている様子も病気をしている様子もない。
格好からするに食べ物に困る感じでもないし、指や胸に光る装飾類は私が一生掛けて働いても手に入るかわからなそうな位大きな宝石がついてる。
きちんと寝てしっかり食べれば体調だってすぐ戻りそうなものだ。


綺麗な格好をしたその人は顔を顰めた神父を気不味そうな顔で見つめた後、おずおずと自分の服をべろりと捲り体を見せてきた。

その体には蔦が這ったような黒い痣みたいな跡が体に張り巡らされているかのように伸びていたのだ。


「…これは呪いの跡!?話が違うではありませんか!?」

その跡を見た神父は一気に血相を変えて、その人に怒りを見せた。だがその人は頭を低くし、神父と私に息を荒げながら話す。

「お願いしますっ…。どうか、どうか直して頂きたいのですっ…。」
「だがっ…さすがに呪いとなると……。」

私を焦ったようにチラッと見てくる神父に私はキョトンとしながら尋ねる。

「この跡を消せばいいの?」
「ロティ…!」

「ひぅっ、で、でも消せばいいんでしょ…?ちょっと…。」


″はい、神父様″以外の言葉を話して、怒られそうになり身をすくめながらも私はその人の方へと近づき呪いの跡をまじまじと見つめた。

呪いの跡に手を当てると、一瞬その人が怯えたようにびくついたが私は気にせずにその跡に神経を集中させる。


「なんとなく…だけど消せそうな気がする。」

そう言って手を離し、神父を見ると見た事がない複雑な表情をしていた。
怒られるのではないかと肩をすくめていると、神父は私の肩に手を置きその人に硬い表情で伝えた。

「………少しお待ちを。ロティこちらへ。」

そう言われ素直に神父の後に続いて部屋を出て隣の執務室へと入る。

ご丁寧に執務室の鍵まで閉めると神父は小声で私に尋ねてきた。

「本当なのか?あの跡は呪いだぞ?」
「呪い?…やってみないとわからないけど、多分消せると思う…。」

顔が怖い神父に目が合わせられず泳がせながらも答えると眉間に皺を寄せたまま執務室の鍵を開け、ドアノブに手を掛けた。

「なら交渉してくる。数分静かに待ってなさい。」

交渉とはなんだと思い聞こうとしたが、神父はそう言うと足早に執務室から出て行ってしまった。



無駄に怒られまいと執務室の扉の横にちょこんと座り待っていると、数分後に再び扉が開かれた。

開いた扉の向こうには神父が居て私を手招きしているため素早く立って招かれるまま治療室にまた入る。

男の人は先程と変わらず、眉を下げたまま何かに怯えたような、気不味そうな顔をしていた。

私の背中をぽんっと神父が押すと低い声で私にぼそりと話す。

「やってみなさい。」

神父の悪魔のような恐ろしい顔を見ながらそんなに怖い顔しなくてもいいのに、と思いつつ私はその人に近づき、さっきと同じように跡に手を当てた。
蔦のように這った呪いの跡をじっと見ながらその人に尋ねる。

「おじさん、どうしてこの跡付いたの?」
「え、あ、ああ。
ちょっと…恨みを買ってしまったようでね…。あまり…子供に詳しく言えることでもないが…。借金の取り立てに向かって、少し強引な手を使ってしまったから…とだけ。」

「…そうなんだ。
…あまり意地悪はしないでね。」

事情を聞いたからだろうか。
呪いの跡のその蔦が引っ張りとれる気がする。
私はその人の呪いの跡を摘み引っ張ってみた。

するとどうだろう。
本当にずるずると取れていくではないか。
家の壁に這った蔦を取り除くように、引っ張った分その人の体から離れていく。

私は魔法を使っている感じがしないものの、緑と黒い光も呪いと共に出てきたところを見るとこれも魔法なんだろう。

両手で素早く剥がすとその人の体から綺麗さっぱり呪いの跡が消えたのだ。


「っっっ!!消えた!!呪いが!消えた!」
「この呪い、寝てる時に勝手に体が動いちゃうんだね。怖いねー…おじさん、よかったね。」
「っっ!そうなんだ!怖かったんだ…ありがとう…!」

涙ぐみながら今にも私を抱きしめてこようとするその人に手で拒否を見せながらお礼の言葉だけを受け取った。

その人が体の他の部分も確認したが、やはり綺麗に呪いは無くなったようで凄く喜んで最後までお礼を絶やさずに帰って行く。

お礼を言われるのは私も嬉しいため顔が綻んでしまうが、神父はそうもいかないのかずっと複雑な表情をしていた。


その人が去るとすぐに執務室に移動し、神父は1人椅子に座りながら立ちすくんだ私に難しい顔を向けている。
良いことをしたはずなのにどうしてこう、怒られる感じなのか意味がわからず縮こまってしまう。


「先程のはどう言う事だ。説明しなさい。」
「私だってわからないけど…。
あの跡は消せるみたいだったから消したの…。引っ張ったらどんどん消えたし…。でもなんだか不思議な感じで…あの呪いの跡はなんか他の人にも付けれそうな気がする…。」

私は自分の手を動かして見つめていると神父から笑い声が漏れ、びくりと体を跳ねさせてしまった。

笑っているはずの顔がなにか企んでいる顔に見えてしまって仕方ない。

「はっはっは!!お前は本当に幸運だよ!!お前を拾って正解だった…!
だが、脅威でもあるな。誰か…護衛兼見守り役がいる…。大人がいいところだが、適任がいないな…どうしたものか。」

私が何かの危ない凶器みたいだ。
この呪いを誰かに付けようなんて私は思わないのに。

顔を顰め神父を見たが、私の様子には気付かず顎に手を当て考え込んでいるようだ。



コンコンコンッ

突然執務室の扉が叩かれると神父は難しい顔をしたまま時計をちらりと見た後すぐに返事を返す。

「入れ。」

ガチャリと扉が開かれ、中に入ってきたのはケードとルーカスだった。
ケードがこの時間に来るということは今日の仕事の集金だろう。

ルーカスはそれの付き添いと言ったところか。
執務室が、というより神父が嫌いなのか、ルーカスは全く神父のほうを見ずに私と目を合わせると、ほんの少し顔を赤らめさせていた。

「失礼します。今日の午前の集金分を集めてきました。」
「ああ、ご苦労。ケード。」

ケードから袋を受け取るとその中に入ったお金を見ることもなく、執務室の机の中にしまった神父。

孤児院の皆が稼いだお金は孤児院や協会の運営費に消えているみたいだ。
私が回復魔法で治療した時に貰えているお金があるはずだが、いくら貰えてるかも、どうやって集められているかも詳しくはわからない。

尋ねても教えてもらえなさそうな気しかしないが、聞いてみるべきか。
私は神父に目線をやると神父はケードを見つめ、ゆっくりと口を開いた。

「…ケードは確か魔法はあまり使えなかったな。特殊魔法が得意だったか…。」
「ええ、そうですね。」

「…ルーカスはどうなんだ?」

神父がチラッとルーカスを見たが、ルーカスは何も答えず、てんで違う方向を向いて返事すらする気もないようだ。
ケードは短い溜息と共に肩を少しあげると、神父の問いに答えた。

「ルーカスは魔法はからっきしですが、身体能力が高い上、身体強化が出来るのでここの中じゃ1番強いかもしれませんね。」
「……そうか。

……よし、ならルーカスは今後ロティの護衛役に回れ。」
「「え!?」」

ケードと私が驚きの声を同時にあげてしまった。私はまさかルーカスが護衛になるとは思いもよらなかった。
先程の問いには答えなかったルーカスだが、私の護衛と聞いたからか神父を見て返事をした。

「何の事が詳しく分かりませんが…ロティの護衛はします。」
「し、神父様…やはり僕では駄目ですかっ!?というよりなぜ…ロティに護衛なんて…。」
「お前は稼ぎ頭だろう。抜けたらそれこそ困るし、魔法も腕っ節も戦闘向きではない。

先程…ロティが解術を使える様になった。
更には試してはいないが、呪術まで使える可能性があると話している。
呪術も解術も特殊な魔法で使えるやつは中々いないんだ。
呪術に至っては恨みや妬みなどから発生するものもあるから中々いないと言っても呪いの種類にもよるがな。

解術は解術者自体が希少で、その術者の魔力と力量で解けない呪い術式もある。

ロティがどれくらい出来るかわからないが、これからロティの元に呪い持ちの人間が呪いを消して欲しくて訪ねてくる事だろう。

ロティが欲しくて攫われる可能性も出てくるし、ロティ自体も呪いが使えるなら脅威ではある。
そこで護衛と見守りが必要だったのだ。


戦闘はそっちの方が得意だろう?
自分の命を守ってくれた人の事を守らない奴でもあるまい?しっかりロティを見張って守れ。守れないようなら」
「必ず、僕がロティを守る。」

ルーカスの瞳は真剣で睨む様に神父を見つめていた。揺らがない目に神父は僅かに口角をあげ椅子にもたれ掛かりながらルーカスに言う。

「なら話は早い。
いいか、変な事はするな。
変な事をしたら即離すが、部屋も一緒の方がいい。孤児院の2人部屋があるだろう?
あそこを使う許可を出す。夜間もロティを守れる体制を取っておけ。」
「っ!はい。」

今も2人で寝てますとは口が裂けても言えないが、公式的に認められホッとしてしまいそうになり表情が崩れないように顔に力を込めた。

だが、ケードからあ、え、と小さな声が漏れていて気になりそちらを見るとルーカスを掴みながらわなわなと震えていたのだ。

その表情に私と神父が驚いていると涙目になったケードが口を開いた。

「ず…ずるっ!!ルーカス…やっぱり変わって…。」
「……はぁー…ケード、ロティの護衛はルーカスで決定だ。
お前はロティにさえ執着しなければもっと伸びる奴なのに…。
勿体無い奴だ…。」

頭を抱え神父は呆れた様に話すとケードはルーカスを掴む手を離して、神父に向かってぺこっと頭を下げた。

「っ、す、すみません…。」
「…まあいい。部屋については手配させる。
これから忙しくなりそうだ…。」
「…。」

どう忙しくなるのだろう。
この時の言葉の意味が私には分からず首を傾げてしまった。
それよりもルーカスと一緒に居れる時間が増えた事の方が嬉しくて、私は心の中で飛び跳ねて喜んでいた。
◆◆◆



❇︎ルーカスは神父が自分を殺そうとしたのを頭の片隅で覚えているため嫌っている。

❇︎神父はケードがロティを好きな事を知ってはいるが進展する事が無いため止めに入った事はない。
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