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Act.0
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桜の花が咲きこぼれ、花びらが踊る。これからやってくる未来に心躍らせ、軽快な足取りで乙女たちは門を潜る。
ここは九蘭女子音楽学校。美しく、時に激しく、そして儚く。舞い落ちる桜の花びらはまるで少女たちのこれからを表しているかのような・・・
ワックスがけされて艶々と綺麗な板張りの床は一般的なフローリングのそれではなく、焦茶色でクラシカルな雰囲気。均等に並べられたパイプ椅子に掛け直そうものならギシリと音が響き渡り、動いた本人に一瞬緊張が走る。それほどに厳粛という言葉そのものを表している入学式はないだろう、とその場にいる誰もが思うほど、九蘭女子音楽学校とはそういう場所だった。
(あ、焦ったあ・・・)
校長先生の話は最後まで聞くべきだと、皆が一字一句聞き漏らすまいとする中、今しがた物音を立ててしまった少女、茅野ひなたはひとり目をキョロキョロとさせる。普通に考えればなんてないようなことでも、ここの雰囲気はひなたを挙動不審にさせるには十分すぎた。
(ひなた・・・)
(ああ、落ち着きないなあ・・・)
(まあ、恥ずかしいわよね・・・)
(余計目立ってるし・・・)
(あの子・・・あれで舞台なんて立てるのかしら・・・)
そのように思われているとは露知らず、その後もひなたは式典が終わるまでずっと落ち着きのない様子だった。
長い入学式も終わり、講堂の外へ出た瞬間、ひなたは大きく深呼吸した後、これまた大きなため息をついた。これは大袈裟ではなく、先ほどまでの時間がひなたにとってはとてつもなく居心地の悪い時間だったのだ。その様子に周りはクスクスと笑っていたが、それに気づくことはなく、すぐに親友の姿を探した。
「あおいー!」
「ちょっ駄目!・・・列に戻って・・・!」
「そこ!列を乱さない!あと私語は慎む!」
自分を見つけ駆け寄ろうとする親友をこちらに来させまいと必死に首を振るも虚しく、教室へ引率してくれている本科生に咎められてしまう。今にも泣きそうなひなたの顔を見て、千草あおいは苦笑いする他なかった。
教室へ着き、各々が席に着いたのを確認すると、引率していた本科生は後ほど担任の教師が来ることを伝えてその場を去った。すると、やっと式から解放されたという安堵の顔が教室中に広がる。単にひなたが分かりやすいだけで、実のところ内心同じ気持ちだったものは少なくなかったのだ。当然とばかりにずっと落ち着いた様子で静かに教師を待つもの、見知った仲でお互いに手を振り合うもの、これから始まる日々に期待し心躍らせるもの…様々な思いが渦巻く中、ひなたは一際目立っていた。
「あおい・・・。もうずっと爆発しそうだったよお!」
「ひなた・・・わ、分かったからもう少しトーンを下げて・・・。」
隣の席になって安心したのか、ますます騒がしくなるひなたを宥めることにあおいは必死だった。周りの緊張が少し和らいだとはいえここは普通の学校とはわけが違う。ぐるりと見渡せばテレビで見たことのあるもの、名のある家柄のものや有名なスクールに通っているものなど、これから同じ土俵で競い合う仲間だとしても一歩引いて見てしまいそうなそんな人たちばかりで、気を引き締めないとすぐに置いていかれそうな気持ちになった。
「あーあかんあかん、そんないかにも周りに置いてかれそうみたいな顔してたらホンマに置いてかれるで?千草さん。」
ひなたと同じく人懐っこそうだが、少し吊り上がった力強い目が印象的な少女があおいの前の席からこちら側を向いて話しかけてきた。
「あとあんた、周り見てみ。式の時から思ってたけど、ずっと目立ってんで。」
そう言われてひなたが伏せていた顔をあげると、殆どのものと目が合った。自分が注目を浴びていることに気付き一旦落ち着いたひなたを見て、あおいはほっとした。
「うう・・・教えてくれてありがとう。えーっと・・・?」
「うちは紫桃かおる。よろしくな!茅野さん、千草さん」
「へ・・・?何で私たちの名前を知ってるの?」
「なーふーだ!私のこれになんて書いてる?」
「し、とう・・・」
「あんたのは?」
「かやの・・・」
何だか見知ったような懐かしいようなその光景に、一人張りつめていたあおいはようやく普段通りの面持ちとなった。そしていつでもぶれない素直さを見せるひなたが羨ましく感じた。
「そういえば茅野さんって・・・」
「あ、あんまり呼ばれなれないからひなたでいいよ!」
ひなたに続きあおいもそうしてほしいと伝えると、かおるは言葉を続けた。
「OK。私もかおるって呼んで。で、ひなたとあおいは同じスクール出身とかなん?」
「そうだよ!あと幼馴染で家が隣同士なんだよね!」
「うん。」
「じゃああの伝説の歌姫、白鳥みやびの影響やな・・・って、ひなた、そんな驚かんでも・・・。」
芸名・白鳥みやび、本名・千草みやび。104期生の首席入学、卒業者であり、現在九蘭歌劇団花組で幕間後やフィナーレ前に独唱を担当するヴィーナス候補に挙がるのも目前といわれている実力者。そして千草あおいの姉だ。
「みやびさんってあおいのお姉さんなんやろ?似てるし苗字も同じやからそうなんかなって。それに白鳥みやびってゆうたら数年に一度あるかないかって言われる黄金期・・・「盛り上がっているところ悪いが、黄金期の話はまた後ででもいいか?紫桃かおる。それに茅野ひなた、千草あおい。」」
いつの間にか教壇に立っていた人物に3人は慌てて前を向く。ひなたの目に映ったのは、すらりとした長身に栗色のショートヘア、整った顔立ちの綺麗な男性・・・否、女性と顔を真っ赤にして口をパクパクとさせて凝視しているかおるの様子だった。
「知っている者もいると思うが・・・今日からこのクラスの担任を務める常陸圭だ。元星組で4年前に退団してからここで演技の指導をしている。君たちがここで過ごす時間は濃いが長くはない。各々無駄に過ごすことなく、励んでほしい。」
「「「「はい!」」」」
そして常盤先生の言葉の後、予科Aクラス25名の自己紹介が続いた。
ここは九蘭女子音楽学校。美しく、時に激しく、そして儚く。舞い落ちる桜の花びらはまるで少女たちのこれからを表しているかのような・・・
ワックスがけされて艶々と綺麗な板張りの床は一般的なフローリングのそれではなく、焦茶色でクラシカルな雰囲気。均等に並べられたパイプ椅子に掛け直そうものならギシリと音が響き渡り、動いた本人に一瞬緊張が走る。それほどに厳粛という言葉そのものを表している入学式はないだろう、とその場にいる誰もが思うほど、九蘭女子音楽学校とはそういう場所だった。
(あ、焦ったあ・・・)
校長先生の話は最後まで聞くべきだと、皆が一字一句聞き漏らすまいとする中、今しがた物音を立ててしまった少女、茅野ひなたはひとり目をキョロキョロとさせる。普通に考えればなんてないようなことでも、ここの雰囲気はひなたを挙動不審にさせるには十分すぎた。
(ひなた・・・)
(ああ、落ち着きないなあ・・・)
(まあ、恥ずかしいわよね・・・)
(余計目立ってるし・・・)
(あの子・・・あれで舞台なんて立てるのかしら・・・)
そのように思われているとは露知らず、その後もひなたは式典が終わるまでずっと落ち着きのない様子だった。
長い入学式も終わり、講堂の外へ出た瞬間、ひなたは大きく深呼吸した後、これまた大きなため息をついた。これは大袈裟ではなく、先ほどまでの時間がひなたにとってはとてつもなく居心地の悪い時間だったのだ。その様子に周りはクスクスと笑っていたが、それに気づくことはなく、すぐに親友の姿を探した。
「あおいー!」
「ちょっ駄目!・・・列に戻って・・・!」
「そこ!列を乱さない!あと私語は慎む!」
自分を見つけ駆け寄ろうとする親友をこちらに来させまいと必死に首を振るも虚しく、教室へ引率してくれている本科生に咎められてしまう。今にも泣きそうなひなたの顔を見て、千草あおいは苦笑いする他なかった。
教室へ着き、各々が席に着いたのを確認すると、引率していた本科生は後ほど担任の教師が来ることを伝えてその場を去った。すると、やっと式から解放されたという安堵の顔が教室中に広がる。単にひなたが分かりやすいだけで、実のところ内心同じ気持ちだったものは少なくなかったのだ。当然とばかりにずっと落ち着いた様子で静かに教師を待つもの、見知った仲でお互いに手を振り合うもの、これから始まる日々に期待し心躍らせるもの…様々な思いが渦巻く中、ひなたは一際目立っていた。
「あおい・・・。もうずっと爆発しそうだったよお!」
「ひなた・・・わ、分かったからもう少しトーンを下げて・・・。」
隣の席になって安心したのか、ますます騒がしくなるひなたを宥めることにあおいは必死だった。周りの緊張が少し和らいだとはいえここは普通の学校とはわけが違う。ぐるりと見渡せばテレビで見たことのあるもの、名のある家柄のものや有名なスクールに通っているものなど、これから同じ土俵で競い合う仲間だとしても一歩引いて見てしまいそうなそんな人たちばかりで、気を引き締めないとすぐに置いていかれそうな気持ちになった。
「あーあかんあかん、そんないかにも周りに置いてかれそうみたいな顔してたらホンマに置いてかれるで?千草さん。」
ひなたと同じく人懐っこそうだが、少し吊り上がった力強い目が印象的な少女があおいの前の席からこちら側を向いて話しかけてきた。
「あとあんた、周り見てみ。式の時から思ってたけど、ずっと目立ってんで。」
そう言われてひなたが伏せていた顔をあげると、殆どのものと目が合った。自分が注目を浴びていることに気付き一旦落ち着いたひなたを見て、あおいはほっとした。
「うう・・・教えてくれてありがとう。えーっと・・・?」
「うちは紫桃かおる。よろしくな!茅野さん、千草さん」
「へ・・・?何で私たちの名前を知ってるの?」
「なーふーだ!私のこれになんて書いてる?」
「し、とう・・・」
「あんたのは?」
「かやの・・・」
何だか見知ったような懐かしいようなその光景に、一人張りつめていたあおいはようやく普段通りの面持ちとなった。そしていつでもぶれない素直さを見せるひなたが羨ましく感じた。
「そういえば茅野さんって・・・」
「あ、あんまり呼ばれなれないからひなたでいいよ!」
ひなたに続きあおいもそうしてほしいと伝えると、かおるは言葉を続けた。
「OK。私もかおるって呼んで。で、ひなたとあおいは同じスクール出身とかなん?」
「そうだよ!あと幼馴染で家が隣同士なんだよね!」
「うん。」
「じゃああの伝説の歌姫、白鳥みやびの影響やな・・・って、ひなた、そんな驚かんでも・・・。」
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