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第1章 宿敵の家の当主を妻に貰うまで
第30話 彼女に会わせたい人の元へ
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「それにしても、ユティさんの部屋は本当に本が多くてすごかったね」
「ユティお姉様はずっとそうらしいわよ。でも部屋に入るのは久しぶりだったから、ちょっと新鮮だったわ」
中庭に戻ってきた俺達。椅子に座る前に背もたれにかかるコートが目に入る。シアと再会して、サリアの街とノーザンプションの街でシアの事を知って、そしてこの屋敷に来てユティさんからシアの事を聞いた。
さっきのユティさんの言葉が、俺の頭の中でもう一度蘇る。
『きっとあなたがあの子の問題を解決したその日から、あの子はあなただけを見てきているんです』
これまでずっと、シアは俺の事を待っていてくれた。それはよく分かっている。そんな彼女を、これ以上待たせるわけにはいかない。俺の中で、もう答えは出ている。
でもその前に、彼女に会わせたい人がいた。今回シアの家族に会わせてくれたから、そのお返しってことになるかもしれない。
「シア、この後時間あるか?」
「? はい、今日は一日、特に予定入れていませんので」
「なら、一緒に行きたい場所があるんだ」
「どこでしょう? 行ったことがある場所なら、ゲートを開けますよ」
「フォルス家の実家に繋いでもらえるかな。会わせたい人がいるんだ」
「フォルス家の屋敷ですね。了解です」
快く了承してくれたシアの隣では、オーロラちゃんが手を振っていた。
「ノヴァお兄様、今日はありがとうね。また来てよね」
「うん、今日はありがとうオーロラちゃん。今度は俺の屋敷に招待するよ」
「本当!? それは楽しみだわ」
オーロラちゃんと微笑みあいながら、俺は席を立つ。少し離れたところでは、シアがゲートを開く準備をしていた。椅子の背にかけていた上着を手に取って羽織り、彼女に近づくと同時に、金色の光が中庭を照らした。同じように上着を着たシアの手を握れば、彼女は体を硬直させる。
「……どうして手を繋いでいるの?」
見送りに来ていてくれたのか、横からオーロラちゃんに質問された。どうやら彼女はシアと一緒にゲートを使用したことがないらしい。幼いうちから楽を覚えさせないというのがシアの方針なのかもしれないな。
「実は、ゲートを二人で使うにはシアと手を繋がないといけないんだ」
「???」
首を傾げていたオーロラちゃんは、突然はっとすると満面の笑みを浮かべた。
「そうなのね! 知らなかったわ!」
やや大きな声でそういうオーロラちゃんは笑顔で手を振る。俺も空いている手で振り返すが、隣に立つシアは目を瞑っている。ゲートを維持するのも魔力の消費が激しいってオーロラちゃんは言っていたから、すぐに使わないとな。
そう思うと同時、シアに手を引かれて俺は光の中へと入っていく。結局最後まで、シアはオーロラちゃんの方を見なかった。
「ユティお姉様はずっとそうらしいわよ。でも部屋に入るのは久しぶりだったから、ちょっと新鮮だったわ」
中庭に戻ってきた俺達。椅子に座る前に背もたれにかかるコートが目に入る。シアと再会して、サリアの街とノーザンプションの街でシアの事を知って、そしてこの屋敷に来てユティさんからシアの事を聞いた。
さっきのユティさんの言葉が、俺の頭の中でもう一度蘇る。
『きっとあなたがあの子の問題を解決したその日から、あの子はあなただけを見てきているんです』
これまでずっと、シアは俺の事を待っていてくれた。それはよく分かっている。そんな彼女を、これ以上待たせるわけにはいかない。俺の中で、もう答えは出ている。
でもその前に、彼女に会わせたい人がいた。今回シアの家族に会わせてくれたから、そのお返しってことになるかもしれない。
「シア、この後時間あるか?」
「? はい、今日は一日、特に予定入れていませんので」
「なら、一緒に行きたい場所があるんだ」
「どこでしょう? 行ったことがある場所なら、ゲートを開けますよ」
「フォルス家の実家に繋いでもらえるかな。会わせたい人がいるんだ」
「フォルス家の屋敷ですね。了解です」
快く了承してくれたシアの隣では、オーロラちゃんが手を振っていた。
「ノヴァお兄様、今日はありがとうね。また来てよね」
「うん、今日はありがとうオーロラちゃん。今度は俺の屋敷に招待するよ」
「本当!? それは楽しみだわ」
オーロラちゃんと微笑みあいながら、俺は席を立つ。少し離れたところでは、シアがゲートを開く準備をしていた。椅子の背にかけていた上着を手に取って羽織り、彼女に近づくと同時に、金色の光が中庭を照らした。同じように上着を着たシアの手を握れば、彼女は体を硬直させる。
「……どうして手を繋いでいるの?」
見送りに来ていてくれたのか、横からオーロラちゃんに質問された。どうやら彼女はシアと一緒にゲートを使用したことがないらしい。幼いうちから楽を覚えさせないというのがシアの方針なのかもしれないな。
「実は、ゲートを二人で使うにはシアと手を繋がないといけないんだ」
「???」
首を傾げていたオーロラちゃんは、突然はっとすると満面の笑みを浮かべた。
「そうなのね! 知らなかったわ!」
やや大きな声でそういうオーロラちゃんは笑顔で手を振る。俺も空いている手で振り返すが、隣に立つシアは目を瞑っている。ゲートを維持するのも魔力の消費が激しいってオーロラちゃんは言っていたから、すぐに使わないとな。
そう思うと同時、シアに手を引かれて俺は光の中へと入っていく。結局最後まで、シアはオーロラちゃんの方を見なかった。
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