宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

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第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから

第155話 アークゲート家の、フォルス家の太陽

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 レイさんとベルさんの結婚式典からそれなりの月日が流れた。俺はいつも通りフォルス家当主として仕事をしているし、周りも変わりはない。オーロラちゃんも継続して俺達の助けになってくれている。

 オーロラちゃんも16歳になり、そろそろシアから領地を与えられる頃合いだとか。彼女としてはもう少しフォルスの屋敷に居たいみたいで少しだけ不満そうだったけど、実は俺からしても彼女は優秀なため、もう少し居てもいいんじゃないかと思ったのはここだけの秘密だ。

「旦那様、貴族のメローピー家からお手紙が届いています」

「ありがとう、ターニャ」

 普段通り俺の補佐をしてくれているターニャから手紙を受け取って、中身を確認する。メローピー家は南側の貴族で、フォルス家とは長い付き合いのある家だ。
 手紙を確認すると、少し遅れたけど俺が22歳になったことのお祝いの言葉や、メローピー家が管理する領地の状況、そしてこれからも交流を増やしていきたいといった旨が書かれていた。

「嬉しいことが書かれていますね」

「ああ、そうだね」

 ターニャの言葉に微笑んで頷き返すと、同じように俺に近づいてきていたオーロラちゃんが声を挙げた。

「これもアランさんのお陰かもしれないわね。彼がメローピー家に足を運んだことが耳に入っているわよ」

「相変わらず情報が早いね、アークゲート家は」

「ノヴァお兄様に関わるかもしれないことだもの、当たり前よ」

 何でもない事のように言うオーロラちゃん。その言葉に苦笑いをしながらも、俺はメローピー家からの手紙に目を落とす。
 彼女の言う通り、アランさんは南側の多くの貴族と積極的に交流を持っている。俺も新しく当主になったときはあいさつ回りをしたりしたけど、アランさんはそれ以上に精力的に動いていた。

 しかも話を聞いてみると、彼は他の南側の貴族に対して俺の話を出してくれているらしい。今回のメローピー家のみならず、今までも多くの家から手紙が来ているし、サリアの街と共同で事業を行ったりする家もあるくらいだ。

「……正直、アランさんは領地経営や外交に関してはお姉様と並ぶか、それ以上の才覚の持ち主よ。たった1年足らずでここまで多くの貴族と次々と交流をもって、しかもノヴァお兄様の考えを広めるなんて。……本当、良い友人を持ったわね」

「……友……人……」

 オーロラちゃんの言葉を少し繰り返す。アランさんにはとても感謝している。彼のお陰で、助かっている部分は計り知れないほどだろう。けど、だからってそれが友人なのか、俺には分からなかった。

 だけどオーロラちゃんは少しだけ首をかしげて、口を開く。

「たまにここにきて一緒にお酒を飲んだり、将来の事を話したりしているでしょ? その時のノヴァお兄様、結構楽しそうよ。お姉様と一緒にいる時とはちょっと違う笑顔を浮かべているし、本で読んだことしかないけど、ああいうのが友達っていうものじゃないの?」

 ――ああ、そうなんだ

 オーロラちゃんの言う通り、アランさんと俺はたまに会って一緒に過ごす。この屋敷で、あるいはアランさんの屋敷で。
 剣の模擬戦をしたり、将来の事を話したり、一緒に美味しい酒や料理を食べたり、共同で事業をやらないかと考えたり。
 そういうのが友人っていうものなのかもしれない。オーロラちゃんが言うように、アランさんと一緒にいると楽しいし。

「アランさんが長を務めるサイモン家も旦那様のお陰ですさまじい勢いで成長していますし、互いに助け助けられ、良い感じですね」

「流石にアランさんの手腕が大きいけど、ノヴァお兄様と関係が深いっていうのが追い風になっているのは間違いないわね」

 ターニャとオーロラちゃんの言葉に俺は頷く。アランさんは優秀だけど、サイモン家は彼の代になるまで没落寸前だった。それに彼はゼロードと交流はなかったし、もし俺が当主にならなかったら今ほどの勢いはなかっただろう。
 そう考えると少しでもアランさんの、サイモン家の人達の助けになれたのは良かった。

「彼のお陰もあって、南側もだいぶ落ち着いてきましたね。今ではほとんどの貴族と交流がありますし、かつての先代と同じ……いえ、それ以上にまとまっていると思います」

「ローエンさん、ジルさん、ラプラスさん、それにターニャやオーロラちゃんのお陰でもあるけどね。シアっていう後ろ盾もあるし、やっぱり皆のお陰だよ」

 ターニャの言葉にそう答えるけど、まさにそうだと思う。俺一人ではここまで上手くいかなかった筈だ。フォルス家内部を支えてくれたローエンさん達に、外部との交流を円滑にいく影響を与えてくれたシアや、宣伝?をしてくれたアランさん、皆の力があってこそだ。

「コールレイク帝国との国交も良好らしいし、本当に上手くいっているね。……オーロラちゃんはそろそろ領地をシアから貰う頃だしね」

 思い当たったことを上げてみると、オーロラちゃんは大きくため息を吐いた。少しずつ引き延ばしていたオーロラちゃんだけど、そろそろタイムリミットは近い。

「そうねえ……もうノーク叔母様と話はしているらしいし、引継ぎのための準備もそろそろ終わるらしいわ。しばらくは向こうの屋敷に移動して、ノーク叔母様の元で引継ぎね。
 あーあ、そうなるとこの愛しいフォルス家の屋敷ともお別れかぁ……」

 心底残念そうに呟くオーロラちゃん。彼女がこのフォルス家に来てそれなりになるけど、その間彼女はフォルス家の一員のように受け入れられていた。メイドや執事のような使用人とは仲が良いし、兵の中には彼女を先生と呼ぶ人も多い。

 特にソニアちゃんはオーロラちゃんとすごく仲が良くて、遠くから見ている限りまるで姉妹のようだった。ターニャもオーロラちゃんの事は気に入っているし、オーロラちゃんの明るさはこの屋敷全体を明るくした。

 前から思っていたけど、オーロラちゃんは太陽のような子だ。そんな彼女の明るさに照らされて、フォルス家が温かかったのは言うまでもないだろう。

「ねえノヴァお兄様……お願いがあるんだけど……」

「なんなのかはなんとなく分かっているけど、一応聞くよ」

「……領主になるお祝いに、ソニアをください!」

「ソニアちゃんは物じゃないんだよなぁ……まあ、ソニアちゃんが望むならいいと思うけど」

「それじゃあダメなのよ……あの子義理堅いから、絶対にノヴァお兄様の元から離れない、ここに骨を埋めるって聞かなくて」

「骨を埋めるって……」

 すごい覚悟だけど、そこまでここで働くことに強い想いを抱いてくれているのは嬉しいことだ。困ったように苦笑いしていると、オーロラちゃんは難しそうな顔をした。

「これはソニアを手に入れるためにノヴァお兄様に私から宣戦布告して、そして勝ち取るしかないわ。ノヴァお兄様……一騎打ちよ!」

 ビシィ! と音が聞こえそうなほど俺の事を指さすオーロラちゃんを見て、また始まったと思い、笑みをこぼす。オーロラちゃんは出会った頃と比べてかなり成長し、今では体つきは大人の女性に近づきつつある。
 けどこんな風に明るいのは、昔から変わっていない。それが微笑ましくて、返事をする。

「いいけど、何で勝負するの?」

「そうねぇ……模擬戦したら絶対に勝てないから……運要素のある娯楽がいいかも!」

「あ、それなら私も参加します。ソニアや奥様、ローエンさんやジルさんにラプラスさんも参加するでしょう。夜は楽しみですね」

「ふふん、ここで勝利を刻んで思い知らせてやるわ。オーロラの名を」

 いや、オーロラちゃんの名前はよく知っているよ、と内心で笑いながら、俺は思ったことを口にする。

「もはや一騎打ちじゃなくて、オーロラちゃんが楽しく遊びたいだけじゃないか」

「……気のせいよ」

「うん、いいよ。夕食の後皆で久しぶりに遊ぼうか」

 そう言うと、オーロラちゃんは目を輝かせた。

「やった」

 そう言って笑顔で自分の執務机に向かうオーロラちゃんを見て、俺とターニャは顔を見合わせて微笑んだ。
 ああ、今日もフォルス家は平和だ。
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