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6 婚約者選定のはじまり(後)
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シシリー様の後ろから謁見の間に入ると、すでに重鎮が数名が並んでいた。周囲の廊下の向こうには、物見高い貴族令嬢の姿がちらほら見えている。
シシリー様がお席に着くと、私はシシリー様のドレスの裾を直して、入り口に近い位置に控えた。あとは王様と王妃様のお越しを待つだけ、となった時、知らない声が控えめな音量に喜びを乗せて私の名を呼んだ。
「ルチア!」
愛おしそうに私を見つめる背の高い男性を、しげしげと見つめ返してしまう。知らないはずなのに、なぜか懐かしい……。金色の巻き毛と、蜂蜜のような瞳……。
「ルチア、僕のこと忘れちゃった?」
小首をかしげるその仕草。
「ア、アレクシオ様!?」
「うん。久しぶり」
私に笑顔を向けているのは、三年前から隣国に留学していたこの国の第二王子だった。シシリー様のお兄様に当たるため、子どもの頃から交流があったのだけど、アレクシオ様は十五歳から十八歳までという成長期に本国にいらっしゃらなかったため、私は今の姿を知らなかった。
「ルチア、会いたかったよ」
「あの、本当に……、アレクシオ様、ですか?」
「うん、そうだってば」
おもしろそうにそう答える彼は、まるで見知らぬ人のよう。
(か、変わりすぎ……!)
まず背が伸びた。私と同じくらいだったのに、今では女性としては背が高い私がヒールの高い靴を履いてもなお、少し見上げなければ視線が合わない高さになっている。
そして声が違う。声変わりが遅かったのをコンプレックスに思っていたのは知っていたけれど、この三年で別人のように低く、セクシーな声になっている。
すっ、と私の手を取って甲に口づけるその仕草も、とても様になっていた。アレクシオ様の唇が触れた場所から熱が広がって、背筋までぞくりとした刺激が這う。
ただ、唇で軽く触れただけなのに。
その感覚に驚きと少しの怯えを覚えて、慌てて手を取り戻そうとするができなかった。
私が焦る様を、アレクシオ様は目を眇めて見ている。その熱の籠もった視線も、思惑ありげな底の見えない瞳も、私が知っているアレクシオ様ではなかった。
(あの可愛いショタっ子が、どうしたらこんな風に成長するのよ!?)
そう、アレクシオ様は飛び切り可愛い、弟系王子様だったのだ。
シシリー様がお席に着くと、私はシシリー様のドレスの裾を直して、入り口に近い位置に控えた。あとは王様と王妃様のお越しを待つだけ、となった時、知らない声が控えめな音量に喜びを乗せて私の名を呼んだ。
「ルチア!」
愛おしそうに私を見つめる背の高い男性を、しげしげと見つめ返してしまう。知らないはずなのに、なぜか懐かしい……。金色の巻き毛と、蜂蜜のような瞳……。
「ルチア、僕のこと忘れちゃった?」
小首をかしげるその仕草。
「ア、アレクシオ様!?」
「うん。久しぶり」
私に笑顔を向けているのは、三年前から隣国に留学していたこの国の第二王子だった。シシリー様のお兄様に当たるため、子どもの頃から交流があったのだけど、アレクシオ様は十五歳から十八歳までという成長期に本国にいらっしゃらなかったため、私は今の姿を知らなかった。
「ルチア、会いたかったよ」
「あの、本当に……、アレクシオ様、ですか?」
「うん、そうだってば」
おもしろそうにそう答える彼は、まるで見知らぬ人のよう。
(か、変わりすぎ……!)
まず背が伸びた。私と同じくらいだったのに、今では女性としては背が高い私がヒールの高い靴を履いてもなお、少し見上げなければ視線が合わない高さになっている。
そして声が違う。声変わりが遅かったのをコンプレックスに思っていたのは知っていたけれど、この三年で別人のように低く、セクシーな声になっている。
すっ、と私の手を取って甲に口づけるその仕草も、とても様になっていた。アレクシオ様の唇が触れた場所から熱が広がって、背筋までぞくりとした刺激が這う。
ただ、唇で軽く触れただけなのに。
その感覚に驚きと少しの怯えを覚えて、慌てて手を取り戻そうとするができなかった。
私が焦る様を、アレクシオ様は目を眇めて見ている。その熱の籠もった視線も、思惑ありげな底の見えない瞳も、私が知っているアレクシオ様ではなかった。
(あの可愛いショタっ子が、どうしたらこんな風に成長するのよ!?)
そう、アレクシオ様は飛び切り可愛い、弟系王子様だったのだ。
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