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土曜日5
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「あの、そもそも昨夜のこともさっきのことも、私としては一生の不覚というか、忘れていただきたいといいますか……」
仕事場と同じように、つい丁寧語で話しかけてしまう。
「一週間、毎日って約束ですよ。先輩が負けた罰ですから」
端正な顔がにっこり笑う。首から下に服がないのが気になって仕方ない。
「……って、そんな罰、私が受けなきゃならない理由はないでしょう!?」
「口約束でも法的に契約が成立しますから」
「不服を申し立てます! だいたいあれは強迫や強要の要件に含まれると……」
「あはは、やっぱり先輩は騙されませんね」
テヘペロ、くらいのノリで言われて拍子抜けする。なんだ、冗談だったのか。
「あ、冗談じゃないですよ。いいじゃないですか、一週間くらい」
「よくないです!」
「気持ちいいこともっとしたくないですか?」
するり、と背中を撫でられたところから、波のように快感が広がる。
「んっ」
「俺はもっと可愛い先輩を見たいんですけど」
さらに背中を撫でられて、身動きができずにいるうちに手はお尻を伝って足の間に滑り込む。さっきまで彼のモノが入っていたそこは十分に緩み潤っていて、簡単に指を飲み込んだ。
(これ以上はダメだ……。これ以上流されたら、絶対に後悔する。彼に近づいちゃダメ)
震える手で必死に彼の腕を押さえる。
「ダ、ダメです。私、セフレとか無理ですから」
「セフレ? いや、そんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どういうつもりで一週間なんて言ったんですか」
そう尋ねると、遠矢くんは思いの外真面目な顔で返事をくれた。
「杏奈先輩の恋人になりたいのに、全然隙がないから焦ってたんですけど、昨日は隙だらけでびっくりして、今だ! と思って食らいついた感じですかね。まさか今朝あんなに流されてくれるとは思いませんでしたけど。……本当に間に合ってよかった」
「なっ……、なっ……」
さらりと言われた言葉に愕然とする。最後に言われたことはよくわからなかったけど。
「ひとまずこのまま一週間くらい身体から攻略したら、絆されてくれないかなー、と思っています」
「ぶ、ぶっちゃけすぎでしょ!?」
「言えって言ったの先輩じゃないですか」
「そうだけど! 言い方!」
「それで、先輩は今すぐ俺と付き合ってくれますか? それとも一週間トライアルしますか?」
「そんな二択……、どちらもしません!」
「あ、引っかからなかった」
そう言って楽しそうに笑う。口約束の件といい、二択を提示して他の選択肢を見えなくさせる手法といい、遠矢くんは思ったより腹黒いのかもしれない。
そうだとしても、そもそもこんなキラキラした生き物が私のベッドの上に半裸で寝そべっていることが信じられないのだ。付き合うなんて無理に決まっている。周囲の女性たちのギラついた目を思えば苦労ばかりが思い浮かぶし、万一付き合って好きになってしまったあとで飽きられた時のダメージを想像するだけで出家したくなるレベルだ。
一生懸命彼と物理的に距離を取りながら、気が遠くなるのを感じる。
「でも、先輩も満更じゃないことは確認できたことですし、俺はしつこいので、どちらかの選択肢しかないですよ」
「強引です!」
「そういうの嫌いじゃないと思ったんですけど」
「うっ」
遠矢くんが不思議そうに首を傾げると、柔らかそうな髪の毛が頬にかかって可愛い。キラキラな生き物はこれだからよくない。すべてを許してしまいそうになる。
「とりあえず、先輩が快楽に弱いのは予想外の僥倖だったので、その線で行きたいと思います」
私が固まっているうちに再び抱き込まれ、今度は腕が動かないように固定された。必死に脚を閉じたけれど、後側から回された手はあっさりと私の一番弱いところにたどり着き、くぷりと指が沈められる。
無防備な耳も舐められ、齧られ、自分でも情けないほどあっという間に骨がなくなったように身体が蕩けてしまった。困ったことに、彼との行為は嫌ではないから、身体が素直に受け入れてしまうのだ。
「杏奈さん、たくさん気持ちよくなってくださいね」
耳に吹き込まれた渾身のエロボイスに、私は全面降伏した。
解放されたのは夕方になってからで、遠矢くんは起き上がれない私を介抱すると嬉しそうに言って、シーツを替えて、買い物をして、ごはんを作って、結局もう一泊泊まっていったのだった。その甲斐甲斐しさと体力に、私はちょっと恐怖を覚えた。あと、料理うまくて嫉妬した。
仕事場と同じように、つい丁寧語で話しかけてしまう。
「一週間、毎日って約束ですよ。先輩が負けた罰ですから」
端正な顔がにっこり笑う。首から下に服がないのが気になって仕方ない。
「……って、そんな罰、私が受けなきゃならない理由はないでしょう!?」
「口約束でも法的に契約が成立しますから」
「不服を申し立てます! だいたいあれは強迫や強要の要件に含まれると……」
「あはは、やっぱり先輩は騙されませんね」
テヘペロ、くらいのノリで言われて拍子抜けする。なんだ、冗談だったのか。
「あ、冗談じゃないですよ。いいじゃないですか、一週間くらい」
「よくないです!」
「気持ちいいこともっとしたくないですか?」
するり、と背中を撫でられたところから、波のように快感が広がる。
「んっ」
「俺はもっと可愛い先輩を見たいんですけど」
さらに背中を撫でられて、身動きができずにいるうちに手はお尻を伝って足の間に滑り込む。さっきまで彼のモノが入っていたそこは十分に緩み潤っていて、簡単に指を飲み込んだ。
(これ以上はダメだ……。これ以上流されたら、絶対に後悔する。彼に近づいちゃダメ)
震える手で必死に彼の腕を押さえる。
「ダ、ダメです。私、セフレとか無理ですから」
「セフレ? いや、そんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どういうつもりで一週間なんて言ったんですか」
そう尋ねると、遠矢くんは思いの外真面目な顔で返事をくれた。
「杏奈先輩の恋人になりたいのに、全然隙がないから焦ってたんですけど、昨日は隙だらけでびっくりして、今だ! と思って食らいついた感じですかね。まさか今朝あんなに流されてくれるとは思いませんでしたけど。……本当に間に合ってよかった」
「なっ……、なっ……」
さらりと言われた言葉に愕然とする。最後に言われたことはよくわからなかったけど。
「ひとまずこのまま一週間くらい身体から攻略したら、絆されてくれないかなー、と思っています」
「ぶ、ぶっちゃけすぎでしょ!?」
「言えって言ったの先輩じゃないですか」
「そうだけど! 言い方!」
「それで、先輩は今すぐ俺と付き合ってくれますか? それとも一週間トライアルしますか?」
「そんな二択……、どちらもしません!」
「あ、引っかからなかった」
そう言って楽しそうに笑う。口約束の件といい、二択を提示して他の選択肢を見えなくさせる手法といい、遠矢くんは思ったより腹黒いのかもしれない。
そうだとしても、そもそもこんなキラキラした生き物が私のベッドの上に半裸で寝そべっていることが信じられないのだ。付き合うなんて無理に決まっている。周囲の女性たちのギラついた目を思えば苦労ばかりが思い浮かぶし、万一付き合って好きになってしまったあとで飽きられた時のダメージを想像するだけで出家したくなるレベルだ。
一生懸命彼と物理的に距離を取りながら、気が遠くなるのを感じる。
「でも、先輩も満更じゃないことは確認できたことですし、俺はしつこいので、どちらかの選択肢しかないですよ」
「強引です!」
「そういうの嫌いじゃないと思ったんですけど」
「うっ」
遠矢くんが不思議そうに首を傾げると、柔らかそうな髪の毛が頬にかかって可愛い。キラキラな生き物はこれだからよくない。すべてを許してしまいそうになる。
「とりあえず、先輩が快楽に弱いのは予想外の僥倖だったので、その線で行きたいと思います」
私が固まっているうちに再び抱き込まれ、今度は腕が動かないように固定された。必死に脚を閉じたけれど、後側から回された手はあっさりと私の一番弱いところにたどり着き、くぷりと指が沈められる。
無防備な耳も舐められ、齧られ、自分でも情けないほどあっという間に骨がなくなったように身体が蕩けてしまった。困ったことに、彼との行為は嫌ではないから、身体が素直に受け入れてしまうのだ。
「杏奈さん、たくさん気持ちよくなってくださいね」
耳に吹き込まれた渾身のエロボイスに、私は全面降伏した。
解放されたのは夕方になってからで、遠矢くんは起き上がれない私を介抱すると嬉しそうに言って、シーツを替えて、買い物をして、ごはんを作って、結局もう一泊泊まっていったのだった。その甲斐甲斐しさと体力に、私はちょっと恐怖を覚えた。あと、料理うまくて嫉妬した。
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