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第23話 面会
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最初から狙っていた『言質』も取ったところで、タイミングよく扉が外側からノックされた。
「エルシアです。お話中、申し訳ありません」
入って来たのは、姉妹の様子を見るようにお願いしたエルシアだった。
彼女がここに来たということは…………。
「目を覚ましたのね?」
「はい」
「ではお父様。私はこれで失礼します。……先程お願いしたこと、忘れないでくださいね?」
私は最後にその言葉を付け足し、執務室を出る。
向かうのは件の姉妹が居るであろう医務室だ。
体調が心配だというのもあるが、彼女らに聞きたいことがあるのだ。
「エルシア、二人は?」
「酷く衰弱していましたが、少し眠ったら顔色は良くなりました。……ですが」
「……? 何か問題が?」
「はい。獣人は警戒心が強くて一言も口を開いてもらえず、やっと話したと思ったら『あの人に会わせて』と。それだけです」
「…………ふむ」
獣人は知らない環境では警戒心を剥き出しにすると聞いている。
初めて出会うエルシアに警戒するのも当然だ。
にしても、あの人……か。
それに該当する人物で考えられるのは『私』なのだが、どういった用件だ?
一応私は、姉妹にとっての命の恩人だ。開幕襲い掛かられるということは無いと思うが、少し心配だな。
こちらも聞きたいことがあるため、二人と何事もなく会話出来るといいのだが……それは彼女達の様子を見てからじゃないとわからない。
「とにかく、急ぎましょう」
私は足早に医務室へ向かう。
中に入った瞬間、二人分の鋭い殺気を向けられた。過去に数々の猛者と死闘を繰り広げた私にとっては、そよ風程度の殺気だったが……。
それを向けてきたのは件の姉妹だと理解したと同時に、私の後ろの後方からそれよりも濃厚な殺気が部屋に流れ込んだ。
振り向くと、エルシアが鬼の形相で姉妹を睨みつけていた。
「お嬢様に助けられた分際で……」
「エルシア。抑えなさい」
「ですが、お嬢様」
「急に知らない場所に連れて来られて混乱するのは仕方のないことよ。だから抑えて……ほら、二人が怯えているわ」
「…………申し訳ありません」
私は姉妹と何事もなく会話することを望んでいる。
なのに互いに殺気をぶつけ合っていたら、安心して話すことすら出来ない。
エルシアもそれを察してくれたのか、殺気はすぐに消え失せた。
「さて、具合はどうかしら?」
路地裏で私が治したのはいいが、時間が無くて治し切れていない部分もあるかもしれない。それを心配しての言葉だったのだが、二人の様子を見るに問題はなさそうだ。
「喉は、大丈夫?」
「「…………(こくん)」」
「そう、なら良かった」
大丈夫ならば喋って元気な声を聞かせてほしいところではあったが、どうやらまだ警戒されているようだ。
……これは、エルシアのせいだな。
「エルシア。悪いけど席を外してくれるかしら? ……ああ、それと温かいスープをお願いするわ」
「……かしこまりました。問題はないかと思いますが、十分お気をつけて」
これで医務室には私と姉妹の二人だけとなった。
「……失礼するわね」
私は警戒させないように気を付けながら、ベッドの側にある椅子に腰掛けた。
ここで攻撃を受けたらどうしようかと心配だったが、どうやら私に対しての敵意は無いようだ。
「私の名前はシェラローズ・ノーツ・アトラフィード。あなた達の名前は?」
名乗られるとは思っていなかったのだろう。
姉妹は顔を見合わせてから、おずおずと口を開いた。
「ティナ」
「……ティア」
ティナにティア。
まだ少し観察した程度ではあるが、ティナの方がまだ元気がありそうで、ティアは人見知りがあるのかビクビクしている。
「二人は姉妹? 顔が同じだけど、双子かしら?」
本題に入る前に、まずは軽い話題から入った。
お互いを知らない状況であるならば、他愛ない話から入った方が友好的に話しやすくなる。
「……ふた、ご。ティアが、おねえちゃんで……わたしが、いもうと」
「あら、やっぱり双子だったのね。そっくりだから驚いたわ。二人して可愛いのね」
白い髪と獣人特有の耳や尻尾。それらは長い間手入れがされていなかったのかボサボサで汚れが目立っていたが、ちゃんと洗って手入れしてあげれば見違える可愛さになるだろう。
そう考えていた私は、双子が不思議そうにこちらを見つめていることに気が付き、首を傾げる。
「どうしたの? そんなに見つめて、何か変なのでも付いているかしら?」
「シェラローズ、さまのほうが、かわいい」
「……ふふっ、ありがとう。お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいわ」
そうすると同時に首をブンブンと振られた。
「おせじ、じゃない。こんなにきれいで、かわいいひと……はじめてみた」
恥ずかしげもなく、そう言われてしまった。
双子はまだ子供だから素直にそんなことが言えるのだろう。
……私? 中身は大人だから照れるに決まっている。
「シェラローズさまは、おひめさま?」
「お姫様じゃないわ。私は公爵家の娘よ」
「こうしゃく……きぞく、さま? おひめさまじゃないの?」
「お姫様というのは、この国で一番偉い人の娘……つまり王女様のことね」
「おひめさま、は……シェラローズさまよりもかわいいの?」
「……うーん、どうかしら。この目でお姿を見たことが無いからわからないわ」
「いちばんえらいひとが、おひめさま……シェラローズさまは、えらくないの?」
「公爵家だからそれなりに偉いわよ。でも、一番ではないの」
「「…………?」」
「まぁまぁ偉いってことよ」
「「おー……」」
二人が質問をして、私が答える。
それを何回か繰り返しているうちに、姉妹の口数も増えてきた。
まだ若干距離を感じるが、最初に殺気をぶつけられたよりはマシだと思えるようにはなった。
最初の殺気も、私が急に入って来たのが原因だったのだろう。
あれは入る前にノックするのを忘れていた私の落ち度だ。二人の容態が心配だからと焦っていたのもあるが、流石に配慮が足りていなかった。
だが、双子はそれを気にしていない様子だったので、一先ず安心した。
「エルシアです。お話中、申し訳ありません」
入って来たのは、姉妹の様子を見るようにお願いしたエルシアだった。
彼女がここに来たということは…………。
「目を覚ましたのね?」
「はい」
「ではお父様。私はこれで失礼します。……先程お願いしたこと、忘れないでくださいね?」
私は最後にその言葉を付け足し、執務室を出る。
向かうのは件の姉妹が居るであろう医務室だ。
体調が心配だというのもあるが、彼女らに聞きたいことがあるのだ。
「エルシア、二人は?」
「酷く衰弱していましたが、少し眠ったら顔色は良くなりました。……ですが」
「……? 何か問題が?」
「はい。獣人は警戒心が強くて一言も口を開いてもらえず、やっと話したと思ったら『あの人に会わせて』と。それだけです」
「…………ふむ」
獣人は知らない環境では警戒心を剥き出しにすると聞いている。
初めて出会うエルシアに警戒するのも当然だ。
にしても、あの人……か。
それに該当する人物で考えられるのは『私』なのだが、どういった用件だ?
一応私は、姉妹にとっての命の恩人だ。開幕襲い掛かられるということは無いと思うが、少し心配だな。
こちらも聞きたいことがあるため、二人と何事もなく会話出来るといいのだが……それは彼女達の様子を見てからじゃないとわからない。
「とにかく、急ぎましょう」
私は足早に医務室へ向かう。
中に入った瞬間、二人分の鋭い殺気を向けられた。過去に数々の猛者と死闘を繰り広げた私にとっては、そよ風程度の殺気だったが……。
それを向けてきたのは件の姉妹だと理解したと同時に、私の後ろの後方からそれよりも濃厚な殺気が部屋に流れ込んだ。
振り向くと、エルシアが鬼の形相で姉妹を睨みつけていた。
「お嬢様に助けられた分際で……」
「エルシア。抑えなさい」
「ですが、お嬢様」
「急に知らない場所に連れて来られて混乱するのは仕方のないことよ。だから抑えて……ほら、二人が怯えているわ」
「…………申し訳ありません」
私は姉妹と何事もなく会話することを望んでいる。
なのに互いに殺気をぶつけ合っていたら、安心して話すことすら出来ない。
エルシアもそれを察してくれたのか、殺気はすぐに消え失せた。
「さて、具合はどうかしら?」
路地裏で私が治したのはいいが、時間が無くて治し切れていない部分もあるかもしれない。それを心配しての言葉だったのだが、二人の様子を見るに問題はなさそうだ。
「喉は、大丈夫?」
「「…………(こくん)」」
「そう、なら良かった」
大丈夫ならば喋って元気な声を聞かせてほしいところではあったが、どうやらまだ警戒されているようだ。
……これは、エルシアのせいだな。
「エルシア。悪いけど席を外してくれるかしら? ……ああ、それと温かいスープをお願いするわ」
「……かしこまりました。問題はないかと思いますが、十分お気をつけて」
これで医務室には私と姉妹の二人だけとなった。
「……失礼するわね」
私は警戒させないように気を付けながら、ベッドの側にある椅子に腰掛けた。
ここで攻撃を受けたらどうしようかと心配だったが、どうやら私に対しての敵意は無いようだ。
「私の名前はシェラローズ・ノーツ・アトラフィード。あなた達の名前は?」
名乗られるとは思っていなかったのだろう。
姉妹は顔を見合わせてから、おずおずと口を開いた。
「ティナ」
「……ティア」
ティナにティア。
まだ少し観察した程度ではあるが、ティナの方がまだ元気がありそうで、ティアは人見知りがあるのかビクビクしている。
「二人は姉妹? 顔が同じだけど、双子かしら?」
本題に入る前に、まずは軽い話題から入った。
お互いを知らない状況であるならば、他愛ない話から入った方が友好的に話しやすくなる。
「……ふた、ご。ティアが、おねえちゃんで……わたしが、いもうと」
「あら、やっぱり双子だったのね。そっくりだから驚いたわ。二人して可愛いのね」
白い髪と獣人特有の耳や尻尾。それらは長い間手入れがされていなかったのかボサボサで汚れが目立っていたが、ちゃんと洗って手入れしてあげれば見違える可愛さになるだろう。
そう考えていた私は、双子が不思議そうにこちらを見つめていることに気が付き、首を傾げる。
「どうしたの? そんなに見つめて、何か変なのでも付いているかしら?」
「シェラローズ、さまのほうが、かわいい」
「……ふふっ、ありがとう。お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいわ」
そうすると同時に首をブンブンと振られた。
「おせじ、じゃない。こんなにきれいで、かわいいひと……はじめてみた」
恥ずかしげもなく、そう言われてしまった。
双子はまだ子供だから素直にそんなことが言えるのだろう。
……私? 中身は大人だから照れるに決まっている。
「シェラローズさまは、おひめさま?」
「お姫様じゃないわ。私は公爵家の娘よ」
「こうしゃく……きぞく、さま? おひめさまじゃないの?」
「お姫様というのは、この国で一番偉い人の娘……つまり王女様のことね」
「おひめさま、は……シェラローズさまよりもかわいいの?」
「……うーん、どうかしら。この目でお姿を見たことが無いからわからないわ」
「いちばんえらいひとが、おひめさま……シェラローズさまは、えらくないの?」
「公爵家だからそれなりに偉いわよ。でも、一番ではないの」
「「…………?」」
「まぁまぁ偉いってことよ」
「「おー……」」
二人が質問をして、私が答える。
それを何回か繰り返しているうちに、姉妹の口数も増えてきた。
まだ若干距離を感じるが、最初に殺気をぶつけられたよりはマシだと思えるようにはなった。
最初の殺気も、私が急に入って来たのが原因だったのだろう。
あれは入る前にノックするのを忘れていた私の落ち度だ。二人の容態が心配だからと焦っていたのもあるが、流石に配慮が足りていなかった。
だが、双子はそれを気にしていない様子だったので、一先ず安心した。
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