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第25話 取り戻した笑顔
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スープをペロリと平らげてしまったティアとティナは、ぽっこりと膨れた自分達の腹を撫でていた。
「結構多めに作ったんですけど、あっという間になくなってしまいましたね……」
エルシアがそう言い、廊下に置いてあった鍋を持って来た。
二人が食べるには多すぎる大きさで、鍋に入る限界の量を考えれば四人分くらいだろうか? それを二人はぺろっと食べてしまった。
余程腹が減っていたのか、それともただ単に二人が大食いなのか。
……だがまぁ、どっちでも良いな。
見ているこちらも微笑んでしまいそうなほど、二人は幸せそうな表情をしている。
それを目にしてしまえば、細かいことを考えるのもバカバカしくなってしまう。
「……ぁ、スープ、おいしかった、です……あおいお姉ちゃん、ありがとうございます」
「……ありがとう、ございました。……さっきは……ごめんなさい」
ティアは律儀に頭を深く下げ、ティナもそれに倣う。
青いお姉ちゃんというのは、エルシアのことだろう。最初はエルシアと姉妹は剣呑な雰囲気だったが、スープを口にしたことで警戒心が和らいだらしい。……餌付け成功ってところか。
礼儀正しく感謝され、姉妹にとびきりの笑顔を向けられたエルシアは「はうっ……!」と胸を掴んでよろめき、床にへたり込んだ。
「お、お姉ちゃん……!」
「だいじょうぶ!?」
姉妹が慌ててベッドの上から動こうとするのを、私が手で制する。
「エルシアは……ちょっと、興奮しているだけだから」
「「……?」」
「問題はない。ということよ」
私は姉妹を安心させ、エルシアの肩を叩く。
「お、お嬢様……私、なんかとても興奮しています」
「母性本能が盛り上がりすぎよ。ちょっとは落ち着きなさい」
はぁはぁと息が荒くなっていて……正直気持ち悪い。
だから落ち着かせるために何度か背中をさすっているが、それでも落ち着く気配はない。
…………もう、放っておこう。
「それじゃあご飯も食べたし、次はお風呂に行きましょう」
「お、ふろ……?」
「ええ、そうよ。二人は女の子だもの。汚れたままは嫌でしょう?」
「入って、いいの?」
「ここは二人の家でもあるのよ? 入っちゃダメなんて、誰にも言わせないわ」
──さ、行きましょう?
私は二人の手を取り、今も変に息を荒くしているエルシアを放置して風呂場に向かう。
屋敷は広いから病み上がりには厳しいかと思ったが、そこは獣人。ちょっと食べればすぐに体力が回復するらしく、逆に私の手を引っ張って歩くほど元気だった。
まだ遠慮している雰囲気はヒシヒシと感じるが、それでもお風呂の魅力には勝てないらしい。キャッキャッと笑いながら廊下を歩くその姿は、子供らしくて可愛らしいと思う。
「こらっ、よそ見して廊下を歩くと危ないわよ」
「……あ……ごめんなさい」
注意を飛ばすと、見るからにシュンと大人しくなる。
「ふふっ……せめて前を向いて歩きなさい」
つい甘やかしてしまいそうになるが、二人はまだ常識をあまり知らない子供だ。保護すると言った手前、私にはこの子達を教育する責務がある。
だから心を鬼にしてダメなことはダメだと言ってやらなければならない。
「注意しなきゃ誰かにぶつかっちゃうし、怪我するのもさせるのも嫌でしょう?」
「……うん」
「……はい」
「だったら気をつけなさい。他人に迷惑を掛ける行為だけはしちゃダメよ。わかった?」
「うん!」
「わかった!」
「……よし、良い子ね」
頭を撫でてあげると、二人は表情をふにゃりと柔らかく崩した。
それがとても可愛らしくてずっと撫でていたい気持ちになるが……二人を禿げさせるわけにはいかないので、ちょっとやって手を離す。
再び姉妹の手を取り、様々なことを話しながら風呂場に到着した。
「ほら、さっさと脱いだ脱いだ」
「んぐっ……」
「むぎゅ」
ボロボロな服を半ば強制的に脱がし、素っ裸にする。
「…………ふむ、傷は綺麗に治っている。私の回復魔法が上手く効いたようね」
あの時は相当焦っていたから、かなり高位の回復魔法を使ってしまった。
普通に治すだけなら【かの者を癒せ】くらいで十分だった。あれでは過剰だったが、ついでに体の損傷を全て治せたのだから、むしろあれで良かったのか?
「シェラローズさま……? どうしたの?」
「っ、ああ、ごめんなさい。……もう痛む部分はない?」
「うん。シェラローズさまの、おかげ!」
ティアは恥ずかしがりながらも、笑顔でそう言ってくれた。
強がっている素振りもない。きっと本心で思ってくれていることなのだろう。
なら良かったと笑いかけ、私もドレスを脱ぐ。
「「わぁ……!」」
と、そこで姉妹から感嘆の声が上がった。
「シェラローズさまの、はだ……きれい!」
「すごいすべすべで、まっしろ……!」
「そう? ありがと……って、あははっ、そんなに触られるとくすぐったいわ」
姉妹は興奮したように私の肌をツンツンと触る。それが妙にくすぐったくて笑いそうになるが、止めるように言っても二人は集中しているのか耳に入っていない様子だ。
「ちょ、本当に──ひゃっ! ──!」
自分から出た変な言葉に、自分自身が驚いた。
こんな色っぽい声が出るとは思わず……これを他の者に聞かれたら…………
「……あ」
嫌な予感がして視線をぐるりと見回すと、扉の向こう側から顔だけを覗かせていたエルシアを見つけ、私は己の体が石になったようにピシリと硬直した。
「…………(ニヤァ)」
──あ、逃げた!
「ちょぉっと待てぇええええ」
ドレスを着直す時間なんてない。
私はバスタオルを体に巻きつけ。エルシアを追いかけた。
「エルシアぁああああ!!!」
その後、私達の追いかけっこを目撃したローナに「裸で廊下を走り回るのは淑女としてどうなのですか!」と怒られたのは、また別の話だ。
「結構多めに作ったんですけど、あっという間になくなってしまいましたね……」
エルシアがそう言い、廊下に置いてあった鍋を持って来た。
二人が食べるには多すぎる大きさで、鍋に入る限界の量を考えれば四人分くらいだろうか? それを二人はぺろっと食べてしまった。
余程腹が減っていたのか、それともただ単に二人が大食いなのか。
……だがまぁ、どっちでも良いな。
見ているこちらも微笑んでしまいそうなほど、二人は幸せそうな表情をしている。
それを目にしてしまえば、細かいことを考えるのもバカバカしくなってしまう。
「……ぁ、スープ、おいしかった、です……あおいお姉ちゃん、ありがとうございます」
「……ありがとう、ございました。……さっきは……ごめんなさい」
ティアは律儀に頭を深く下げ、ティナもそれに倣う。
青いお姉ちゃんというのは、エルシアのことだろう。最初はエルシアと姉妹は剣呑な雰囲気だったが、スープを口にしたことで警戒心が和らいだらしい。……餌付け成功ってところか。
礼儀正しく感謝され、姉妹にとびきりの笑顔を向けられたエルシアは「はうっ……!」と胸を掴んでよろめき、床にへたり込んだ。
「お、お姉ちゃん……!」
「だいじょうぶ!?」
姉妹が慌ててベッドの上から動こうとするのを、私が手で制する。
「エルシアは……ちょっと、興奮しているだけだから」
「「……?」」
「問題はない。ということよ」
私は姉妹を安心させ、エルシアの肩を叩く。
「お、お嬢様……私、なんかとても興奮しています」
「母性本能が盛り上がりすぎよ。ちょっとは落ち着きなさい」
はぁはぁと息が荒くなっていて……正直気持ち悪い。
だから落ち着かせるために何度か背中をさすっているが、それでも落ち着く気配はない。
…………もう、放っておこう。
「それじゃあご飯も食べたし、次はお風呂に行きましょう」
「お、ふろ……?」
「ええ、そうよ。二人は女の子だもの。汚れたままは嫌でしょう?」
「入って、いいの?」
「ここは二人の家でもあるのよ? 入っちゃダメなんて、誰にも言わせないわ」
──さ、行きましょう?
私は二人の手を取り、今も変に息を荒くしているエルシアを放置して風呂場に向かう。
屋敷は広いから病み上がりには厳しいかと思ったが、そこは獣人。ちょっと食べればすぐに体力が回復するらしく、逆に私の手を引っ張って歩くほど元気だった。
まだ遠慮している雰囲気はヒシヒシと感じるが、それでもお風呂の魅力には勝てないらしい。キャッキャッと笑いながら廊下を歩くその姿は、子供らしくて可愛らしいと思う。
「こらっ、よそ見して廊下を歩くと危ないわよ」
「……あ……ごめんなさい」
注意を飛ばすと、見るからにシュンと大人しくなる。
「ふふっ……せめて前を向いて歩きなさい」
つい甘やかしてしまいそうになるが、二人はまだ常識をあまり知らない子供だ。保護すると言った手前、私にはこの子達を教育する責務がある。
だから心を鬼にしてダメなことはダメだと言ってやらなければならない。
「注意しなきゃ誰かにぶつかっちゃうし、怪我するのもさせるのも嫌でしょう?」
「……うん」
「……はい」
「だったら気をつけなさい。他人に迷惑を掛ける行為だけはしちゃダメよ。わかった?」
「うん!」
「わかった!」
「……よし、良い子ね」
頭を撫でてあげると、二人は表情をふにゃりと柔らかく崩した。
それがとても可愛らしくてずっと撫でていたい気持ちになるが……二人を禿げさせるわけにはいかないので、ちょっとやって手を離す。
再び姉妹の手を取り、様々なことを話しながら風呂場に到着した。
「ほら、さっさと脱いだ脱いだ」
「んぐっ……」
「むぎゅ」
ボロボロな服を半ば強制的に脱がし、素っ裸にする。
「…………ふむ、傷は綺麗に治っている。私の回復魔法が上手く効いたようね」
あの時は相当焦っていたから、かなり高位の回復魔法を使ってしまった。
普通に治すだけなら【かの者を癒せ】くらいで十分だった。あれでは過剰だったが、ついでに体の損傷を全て治せたのだから、むしろあれで良かったのか?
「シェラローズさま……? どうしたの?」
「っ、ああ、ごめんなさい。……もう痛む部分はない?」
「うん。シェラローズさまの、おかげ!」
ティアは恥ずかしがりながらも、笑顔でそう言ってくれた。
強がっている素振りもない。きっと本心で思ってくれていることなのだろう。
なら良かったと笑いかけ、私もドレスを脱ぐ。
「「わぁ……!」」
と、そこで姉妹から感嘆の声が上がった。
「シェラローズさまの、はだ……きれい!」
「すごいすべすべで、まっしろ……!」
「そう? ありがと……って、あははっ、そんなに触られるとくすぐったいわ」
姉妹は興奮したように私の肌をツンツンと触る。それが妙にくすぐったくて笑いそうになるが、止めるように言っても二人は集中しているのか耳に入っていない様子だ。
「ちょ、本当に──ひゃっ! ──!」
自分から出た変な言葉に、自分自身が驚いた。
こんな色っぽい声が出るとは思わず……これを他の者に聞かれたら…………
「……あ」
嫌な予感がして視線をぐるりと見回すと、扉の向こう側から顔だけを覗かせていたエルシアを見つけ、私は己の体が石になったようにピシリと硬直した。
「…………(ニヤァ)」
──あ、逃げた!
「ちょぉっと待てぇええええ」
ドレスを着直す時間なんてない。
私はバスタオルを体に巻きつけ。エルシアを追いかけた。
「エルシアぁああああ!!!」
その後、私達の追いかけっこを目撃したローナに「裸で廊下を走り回るのは淑女としてどうなのですか!」と怒られたのは、また別の話だ。
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