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第67話 面白い二人
しおりを挟む次の日、約束通りサイレスは私に地下室を用意してくれた。
思った以上に広く、様々な研究が出来そうな場所だったので、私は嬉しさのあまり大喜びで飛び跳ねた。
早速動き出した私はまず、魔法具を作るのに必要な機材を地下室──もとい研究室に運び込んだ。
機材は事前に私が魔法で作っておいた。
これを作るのにも時間が掛かるので、すぐに次の工程に移れるようにと、先に屋敷の方で準備しておいたのだ。
中にはかなり大きな物があるが、それは『収納』という魔法で全て一気に運んでしまえるので問題ない。
大変だったのは機材の組み立てだが、そこは配下達のサイレス率いる暗殺者ギルドの者に手伝ってもらいながら、どうにか完成させた。
「よしっ! 準備完了!」
一時間ほど準備に費やしてしまったが、最高の魔法具を作るためには必要な消費だ。
むしろ、この時代でここまでの施設を用意できたことは、素晴らしい幸運なのだと思うことにしよう。
私がまだ機材の仕組みを覚えていて良かった。
それを忘れていたら、魔法で作り出せず、魔法具を作ることなんて到底叶わなかっただろう。
「ようやく始められるわね!」
私は腰に手を当て、意気揚々とそう言った。
「…………それで、何をするおつもりなのですか」
そこで呆れを隠さない女性の声が、私の背後に投げかけられる。
私は「ふっふっふっ」と含み笑いをあげながら、専属の侍女エルシアに振り返った。
「見てのお楽しみよ!」
「教えられないってことですね。はぁ……来て正解でした」
ここに彼女が居る理由は、私の護衛兼、私の監視だ。
協力者のところに行くとはいえ、公爵家の令嬢が一人で行くのは危険だ。しかも数時間は帰って来ないと言えば、無理矢理にでも付いて来ると言われてしまい、仕方なく同行を許可したのだ。
どうせ、いつかはバレることだ。
遅くても、私の誕生日には必ずバレる。
双子には二つの魔法具をプレゼントとして渡すのだ。
たとえ公爵家の人間だとしても、それは異常なことだとサイレスは言っていた。
なら、それを見た両親やエルシアが疑問に思わないわけがない。
どうせ隠しても怪しまれるなら、思い切って教えてしまおう。
そう思い、私はエルシアをここに連れてきた。
先程答えを適当にはぐらかしたのは、完成品を見せて驚かせるためだ。
「……うちのお転婆お嬢様が迷惑をかけて、本当にごめんなさい」
「俺は気にしていない。それに、お前が謝るようなことでもないだろう」
…………ん?
「何、やけに親しげだけど、二人は知り合いだったの?」
「……ええ。古い知人です。まさか彼がこんな店で働いていて、しかもお嬢様が言っていた協力者だったなんて知らず、驚きました」
「それは俺もだ。まさかお前が公爵家のメイドをやっていたとはな。主人がシェラローズとは、流石に予想外だったが……なるほど。こいつの情報を掴みづらかったわけだ」
「お嬢様のことをコソコソと嗅ぎ回っていたのは、貴方だったのですね。なんか見たことがある手口だと思っていたら……どうりで」
知り合い……ではあるようだが、何か訳ありな感じか。
これは下手に突っ込まない方がいいな。
「それじゃ、私は早速作業に取り掛かるから、二人は自由にしていて構わないわよ」
「そうはいきません。お嬢様を監──んんっ! お守りするために、お側に控えさせていただきます」
「シェラローズから目を離したら何をやらかすかわからない」
エルシアは『監視』と言いかけているし、サイレスはいっそ潔い。
「サイレス。その言葉はお嬢様に失礼です。謝ってください」
「お前の方が十分失礼だろ。主人に監視と言っていいと思っているのか?」
なんか一触即発の雰囲気になっているぞ?
「私はお嬢様のためを思って言っているのです」
「俺も同じだ。シェラローズのためにこの地下室を用意した」
「……先程からお嬢様を呼び捨てにして、従者なのだから『様』くらい言えないのですか?」
「あいつ自ら呼び捨てを許可してきたのだ」
「なんですって!? それは羨ま──いえ、やはり無礼です!」
「俺はどうすればいいのだ?」
今にも掴み合いになりそうなほど、二人の距離は近い。
「喧嘩するほど仲が良いってことかしらね」
「「仲良くなんてない!」です!」
「わーお、息ぴったり」
まぁ、ここで暴れるのはダメだと、二人も理解しているだろう。
放っておいても大丈夫だが……一応、釘を刺しておくか。
「喧嘩するなら外でやってね」
「俺の方が強いのだから喧嘩にならん」
「私の方が強いのですから、喧嘩になりません」
「「あぁん?」」
「…………仲良いじゃない」
──何こいつら、面白い。
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