12 / 21
12
しおりを挟む
「爾名島に遺跡があるなんて話、先輩たちからも聞いたことがないんですが」
インターネットで調べた時もそんな情報はなかったから、行きたい見たいと騒ぐ結人と晴也を幸大が宥めている内に、話の真偽を確かめてみる。
柿下さんはものすごく意味深な笑みを浮かべた。
「まぁそうだろうね。あると言われているだけで実際に見た人がいるかどうかも判らないんだから」
「え」
「運が良ければ見れるよ」
にこりと微笑まれて俺たちは顔を見合わせる。
どうゆうこと……?
スーパーで幸大の昼食を確保したら改めて公民館に向かった。五分くらい歩いたらまずは役場が見えて来て、フェニックスをロゴにしているコンビニがあって、公民館はその奥にあった。
外から見ると、二階建てだけど二階部分があるのは一階の半分くらいで、冠婚葬祭や、災害時には避難所として使われることもあるため、建物も駐車場もかなり大きくて広い。
柿下さんに案内されるまま正面入り口――左右に開く自動ドアから中に入ると、まずは広いホール。あちらこちらに観葉植物が飾られていて優しい雰囲気がある。右手奥に受付っぽいコーナーがあるけど今は無人。代わりに左手前の、ガラス窓から中が見えるようになっている部屋から女性が出て来た。
「あらあらいらっしゃい、青葉高校の生徒さんね」
「こちら受付の朝代さん。この子たちが宿泊中はずっと朝代さんなのかな」
「そうそう。今日から三日間はばあちゃんが当番なの。受付のばあちゃんが日替わりじゃ声掛け難いっしょ」
朝代さんは結人より小柄で、うちの祖母と同じくらいの年齢だろうか。着物というよりは甚平に近い揃いの上下に半纏を着ていて、足元はサンダル。笑い皺が可愛らしくとても柔和な雰囲気のおばあちゃんだ。
順番に自己紹介したら朝代さんはうんうんって聞いていてくれたのだが、
「ばあちゃん、もう年だから名前覚えられんの。お兄ちゃんって呼ばせてね」
うん、仕方ないと思う。
もちろんですって受け入れた後に、施設の説明をしてもらう。
もう先生方は部屋に入ってるそうで、一階は冠婚葬祭用のホールと、親族の人たちが寝泊まりする和室、花嫁さんの着付けやメイクをするための更衣室などの他、会議室と、男女別の洗面所と給湯室がある。
二階は、親族以外の人たちが寝泊まりするための部屋だ。
爾名島にはホテルというものがなく、島の外から来た人たちが泊まれるようになっていて、二階へは外階段で上がるそうだ。
「いまのところ君たちが泊まっている間は冠婚葬祭の予定はないから」
「はい」
朝代さんに一礼してから外に出て、建物をぐるりと回った裏側に設置されていた階段を上がって二階へ。
部屋の配置が変則的なのは冠婚葬祭用のホールの上を人が歩くことのないようにという配慮なんだろうな。
「君たちの部屋は手前から三番目、鍵はこれ。二つ渡しておくね。万が一の時は朝代さんがマスターキーを持ってるけど、朝代さんが此処にいるのは九時五時なので、それ以外のときは僕のスマホに連絡ちょうだい。班長は、えっと……」
「俺です」
幸大が手を上げ、後で連絡先を交換することに決まる。
「一番手前と、二番目には先生たち。四番目は予備で、その奥は空室。もし葬式の予定が入ったら人が入るかも」
話を聞きながら鍵を開けた部屋は、俺たち六人の靴が並んだらそれだけでぎゅうぎゅうになりそうな狭い玄関と、入ってすぐに設置されているキッチン周りは板張りの床、奥は畳。間取りとしては「1K」になる。和室は八畳くらいだろうか。壁に立て掛けられている折り畳み式のちゃぶ台と、座布団6枚。
結人と晴也がどんどん開けられるところを開けていくので、俺たちはその場から動いていないのに中の様子がよく見えた。
狭いけど綺麗なトイレと風呂。
押し入れには真っ白な布団が六組。
キッチンには最低限必要な調理器具と調味料、食器が揃えられているし、食器用洗剤は家でも使っているメーカーのだった。嬉しい。
「あれ、ラジオ?」
結人が天井に近い位置に設置されているそれを指差すと、柿下さんが「町内放送用の戸別受信機だよ」と。それこそ冠婚葬祭がある時なんかは、各家庭に設置されたあれから島の人みんなに情報が伝わるらしい。
「荷物置いたら、お弁当持って下の会議室においで。食事しながら今後の説明をするからね」
「はい」
そこで柿下さんとは一旦別れて、玄関の扉が閉まる。
途端に空気が弛緩する。
「いいじゃんいいじゃん。思ってたより綺麗だ」
「ね」
晴也と結人。
「……洗面所、使って良いかな」
「ああ、もちろん。俺も次」
颯真と幸大。
「あ、押し入れの中にあった」
折り畳み式のX型洗濯物干しを発見した俺が取り出そうとしたら、武尊が手を伸ばして手伝ってくれた。
「ありがとう」
「ああ。そっち、別にハンガーもある」
「ほんとだ」
取り出して、板張りの床の方に広げて設置し終えたら、キッチン設備も確認。
空の冷蔵庫は、しかしきちんと冷えているし、ガスコンロも問題なく着火する。炊飯器と電子レンジはコンセントを差せば使えるようになっている。
「やかん、フライパン、鍋二つ……うん、いいね」
「コインランドリー? それはどこだろな」
晴也が言う。
洗濯当番だから気になるんだろう。
「コンビニの横にあったよ」
「マジ?」
「うん。五分も掛からないよ」
此処に来るまでに気付いたことを互いに共有して、順番に洗面所を使い、荷解きをして弁当を持つ。
「じゃあ行くか、会議室」
「おー!」
「腹減った」
喋りながら部屋を出て、幸大が鍵を閉めた。
と、役場の方から単調なサイレンの音が聞こえ、次第に音量が小さくなっていく。
「何の音?」
「……たぶん正午のお知らせ」
突然の音にビビった結人に、颯真が言う。
スマホを見てみたら確かに十二時ちょうどだった。
インターネットで調べた時もそんな情報はなかったから、行きたい見たいと騒ぐ結人と晴也を幸大が宥めている内に、話の真偽を確かめてみる。
柿下さんはものすごく意味深な笑みを浮かべた。
「まぁそうだろうね。あると言われているだけで実際に見た人がいるかどうかも判らないんだから」
「え」
「運が良ければ見れるよ」
にこりと微笑まれて俺たちは顔を見合わせる。
どうゆうこと……?
スーパーで幸大の昼食を確保したら改めて公民館に向かった。五分くらい歩いたらまずは役場が見えて来て、フェニックスをロゴにしているコンビニがあって、公民館はその奥にあった。
外から見ると、二階建てだけど二階部分があるのは一階の半分くらいで、冠婚葬祭や、災害時には避難所として使われることもあるため、建物も駐車場もかなり大きくて広い。
柿下さんに案内されるまま正面入り口――左右に開く自動ドアから中に入ると、まずは広いホール。あちらこちらに観葉植物が飾られていて優しい雰囲気がある。右手奥に受付っぽいコーナーがあるけど今は無人。代わりに左手前の、ガラス窓から中が見えるようになっている部屋から女性が出て来た。
「あらあらいらっしゃい、青葉高校の生徒さんね」
「こちら受付の朝代さん。この子たちが宿泊中はずっと朝代さんなのかな」
「そうそう。今日から三日間はばあちゃんが当番なの。受付のばあちゃんが日替わりじゃ声掛け難いっしょ」
朝代さんは結人より小柄で、うちの祖母と同じくらいの年齢だろうか。着物というよりは甚平に近い揃いの上下に半纏を着ていて、足元はサンダル。笑い皺が可愛らしくとても柔和な雰囲気のおばあちゃんだ。
順番に自己紹介したら朝代さんはうんうんって聞いていてくれたのだが、
「ばあちゃん、もう年だから名前覚えられんの。お兄ちゃんって呼ばせてね」
うん、仕方ないと思う。
もちろんですって受け入れた後に、施設の説明をしてもらう。
もう先生方は部屋に入ってるそうで、一階は冠婚葬祭用のホールと、親族の人たちが寝泊まりする和室、花嫁さんの着付けやメイクをするための更衣室などの他、会議室と、男女別の洗面所と給湯室がある。
二階は、親族以外の人たちが寝泊まりするための部屋だ。
爾名島にはホテルというものがなく、島の外から来た人たちが泊まれるようになっていて、二階へは外階段で上がるそうだ。
「いまのところ君たちが泊まっている間は冠婚葬祭の予定はないから」
「はい」
朝代さんに一礼してから外に出て、建物をぐるりと回った裏側に設置されていた階段を上がって二階へ。
部屋の配置が変則的なのは冠婚葬祭用のホールの上を人が歩くことのないようにという配慮なんだろうな。
「君たちの部屋は手前から三番目、鍵はこれ。二つ渡しておくね。万が一の時は朝代さんがマスターキーを持ってるけど、朝代さんが此処にいるのは九時五時なので、それ以外のときは僕のスマホに連絡ちょうだい。班長は、えっと……」
「俺です」
幸大が手を上げ、後で連絡先を交換することに決まる。
「一番手前と、二番目には先生たち。四番目は予備で、その奥は空室。もし葬式の予定が入ったら人が入るかも」
話を聞きながら鍵を開けた部屋は、俺たち六人の靴が並んだらそれだけでぎゅうぎゅうになりそうな狭い玄関と、入ってすぐに設置されているキッチン周りは板張りの床、奥は畳。間取りとしては「1K」になる。和室は八畳くらいだろうか。壁に立て掛けられている折り畳み式のちゃぶ台と、座布団6枚。
結人と晴也がどんどん開けられるところを開けていくので、俺たちはその場から動いていないのに中の様子がよく見えた。
狭いけど綺麗なトイレと風呂。
押し入れには真っ白な布団が六組。
キッチンには最低限必要な調理器具と調味料、食器が揃えられているし、食器用洗剤は家でも使っているメーカーのだった。嬉しい。
「あれ、ラジオ?」
結人が天井に近い位置に設置されているそれを指差すと、柿下さんが「町内放送用の戸別受信機だよ」と。それこそ冠婚葬祭がある時なんかは、各家庭に設置されたあれから島の人みんなに情報が伝わるらしい。
「荷物置いたら、お弁当持って下の会議室においで。食事しながら今後の説明をするからね」
「はい」
そこで柿下さんとは一旦別れて、玄関の扉が閉まる。
途端に空気が弛緩する。
「いいじゃんいいじゃん。思ってたより綺麗だ」
「ね」
晴也と結人。
「……洗面所、使って良いかな」
「ああ、もちろん。俺も次」
颯真と幸大。
「あ、押し入れの中にあった」
折り畳み式のX型洗濯物干しを発見した俺が取り出そうとしたら、武尊が手を伸ばして手伝ってくれた。
「ありがとう」
「ああ。そっち、別にハンガーもある」
「ほんとだ」
取り出して、板張りの床の方に広げて設置し終えたら、キッチン設備も確認。
空の冷蔵庫は、しかしきちんと冷えているし、ガスコンロも問題なく着火する。炊飯器と電子レンジはコンセントを差せば使えるようになっている。
「やかん、フライパン、鍋二つ……うん、いいね」
「コインランドリー? それはどこだろな」
晴也が言う。
洗濯当番だから気になるんだろう。
「コンビニの横にあったよ」
「マジ?」
「うん。五分も掛からないよ」
此処に来るまでに気付いたことを互いに共有して、順番に洗面所を使い、荷解きをして弁当を持つ。
「じゃあ行くか、会議室」
「おー!」
「腹減った」
喋りながら部屋を出て、幸大が鍵を閉めた。
と、役場の方から単調なサイレンの音が聞こえ、次第に音量が小さくなっていく。
「何の音?」
「……たぶん正午のお知らせ」
突然の音にビビった結人に、颯真が言う。
スマホを見てみたら確かに十二時ちょうどだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる