192 / 213
第6章 変遷する世界
178.出港(2)
しおりを挟む
実験は成功したと断言していいと思う。
同じ船内だから距離的には大したことないけれど、俺と師匠と魔石を三角形に繋いで、一つを俺、一つを師匠が持って魔力を注ぐことで、半分になった魔石同士が引き合う細い繋がりを補強する。
更に通話の術式を弄ってマイクもどきを咥えれば完成だ。
先ずは同じ船室で俺が魔石に魔力を込めると、師匠の持っている魔石が光り、師匠が魔力を込めることで通話状態になった。
声もきちんと聞こえるが、聞く時には耳に近付け、喋る時には口元に近付けないといけないのが手間と言えば手間かな、と。
そう考えると魔石は腕輪か、カフスボタンに加工するのがいいかもしれない。
いや、三センチ大のカフスボタンはさすがに大きすぎるか……。
「アクセサリにしたいなって最初は思ったんです」
「アクセサリ?」
「おれが前にいた世界だとアクセサリに付与……攻撃力や防御力を高める効果をアクセサリに持たせて身に付けるっていう設定があって」
みんな意味が解らないと言いたげに首を傾げているが、ゲームなんて言ってもかえって混乱させてしまう気がする。
「例えば指輪とか、腕輪、……何なら鎧や武器にも、術式を刻んだ魔石を装飾することで攻撃力や防御力が上がったら嬉しいじゃないですか」
「……まぁ、そうだな」
レイナルドさんがまだ理解に苦しむ表情で頷く横で、ちょっと目が輝いたのはバルドルさん。
「それって……いわゆる魔剣か?」
「えー……違う気がします。だって魔法攻撃しか効かない魔物にも剣でダメージを与えられるのが魔剣でしょう? 俺が言っている剣だと、威力が上がるだけっていうか……包丁で例えるならスィトルイユがペッシュみたいに切れるようになるんです」
「む……そうか」
残念そうな彼に、ゲンジャルさん。
「金級冒険者になったんなら、やっぱ金級ダンジョンで魔剣を入手したいよな」
「俺も魔弓が欲しい!」
ウーガさんがここぞとばかりに主張する。
「金級ダンジョンにいくと運次第で途中の階層でも宝箱が見つかるからな」
「そうなんですか⁈」
「運が良ければ、だぞ」
「未踏破のダンジョンだと確率も上がるんじゃないかしら。あれは隠し部屋とかその類だもの」
「へー……」
「金級ダンジョン……」
ついこの間まで特例で金級になるのを渋っていたとはとても思えない顔をしているバルドルさんに内心で苦笑しつつ、未踏破の金級ダンジョンという響きにわくわくしてしまう。
「マーヘ大陸の件が落ち着いたら、いよいよ……ですよね?」
「ああ。その予定だ」
レイナルドパーティが31階層まで攻略しているそこを、今度は俺達が一緒に第1階層から。
「グランツェパーティは挑戦出来たんですか?」
「何度か挑戦したがまだ、やはり難しいな。転移陣のある階層までが遠くて、結局は第1階層で少し腕試しした程度だ」
「じゃあ本当に皆で一緒に、ですね!」
「そうだ」
「マーヘ大陸とのこと……長引くことなく、誰も傷つかずに終わったらいいんですけど……甘いですか?」
「だなぁ」
「でも何事もなく終われば良いって皆が思っているわ」
アッシュさんにぽふりと頭を撫でられた。
「さ、そのマーヘ大陸でもちゃんと連絡が取り合えるよう検証が必要ね」
気持ちを切り替えるようにミッシェルさんが陽気な声を上げる。
「どれくらい離れても大丈夫か、まずはローザルゴーザからトゥルヌソルの間で実験してみますか? 全員でトゥルヌソルまで行く必要はないですし」
「だな。トゥルヌソルに向かうのはグランツェ、モーガン、エレイン、セルリー……他にいるか?」
「レイナルドさんは?」
「俺?」
なんで、って顔で見返されて俺の方が「なんで?」だ。
時間は短いかもしれないけど、せっかくハーマイトシュシューさんに会える機会なのに!
同じ船内だから距離的には大したことないけれど、俺と師匠と魔石を三角形に繋いで、一つを俺、一つを師匠が持って魔力を注ぐことで、半分になった魔石同士が引き合う細い繋がりを補強する。
更に通話の術式を弄ってマイクもどきを咥えれば完成だ。
先ずは同じ船室で俺が魔石に魔力を込めると、師匠の持っている魔石が光り、師匠が魔力を込めることで通話状態になった。
声もきちんと聞こえるが、聞く時には耳に近付け、喋る時には口元に近付けないといけないのが手間と言えば手間かな、と。
そう考えると魔石は腕輪か、カフスボタンに加工するのがいいかもしれない。
いや、三センチ大のカフスボタンはさすがに大きすぎるか……。
「アクセサリにしたいなって最初は思ったんです」
「アクセサリ?」
「おれが前にいた世界だとアクセサリに付与……攻撃力や防御力を高める効果をアクセサリに持たせて身に付けるっていう設定があって」
みんな意味が解らないと言いたげに首を傾げているが、ゲームなんて言ってもかえって混乱させてしまう気がする。
「例えば指輪とか、腕輪、……何なら鎧や武器にも、術式を刻んだ魔石を装飾することで攻撃力や防御力が上がったら嬉しいじゃないですか」
「……まぁ、そうだな」
レイナルドさんがまだ理解に苦しむ表情で頷く横で、ちょっと目が輝いたのはバルドルさん。
「それって……いわゆる魔剣か?」
「えー……違う気がします。だって魔法攻撃しか効かない魔物にも剣でダメージを与えられるのが魔剣でしょう? 俺が言っている剣だと、威力が上がるだけっていうか……包丁で例えるならスィトルイユがペッシュみたいに切れるようになるんです」
「む……そうか」
残念そうな彼に、ゲンジャルさん。
「金級冒険者になったんなら、やっぱ金級ダンジョンで魔剣を入手したいよな」
「俺も魔弓が欲しい!」
ウーガさんがここぞとばかりに主張する。
「金級ダンジョンにいくと運次第で途中の階層でも宝箱が見つかるからな」
「そうなんですか⁈」
「運が良ければ、だぞ」
「未踏破のダンジョンだと確率も上がるんじゃないかしら。あれは隠し部屋とかその類だもの」
「へー……」
「金級ダンジョン……」
ついこの間まで特例で金級になるのを渋っていたとはとても思えない顔をしているバルドルさんに内心で苦笑しつつ、未踏破の金級ダンジョンという響きにわくわくしてしまう。
「マーヘ大陸の件が落ち着いたら、いよいよ……ですよね?」
「ああ。その予定だ」
レイナルドパーティが31階層まで攻略しているそこを、今度は俺達が一緒に第1階層から。
「グランツェパーティは挑戦出来たんですか?」
「何度か挑戦したがまだ、やはり難しいな。転移陣のある階層までが遠くて、結局は第1階層で少し腕試しした程度だ」
「じゃあ本当に皆で一緒に、ですね!」
「そうだ」
「マーヘ大陸とのこと……長引くことなく、誰も傷つかずに終わったらいいんですけど……甘いですか?」
「だなぁ」
「でも何事もなく終われば良いって皆が思っているわ」
アッシュさんにぽふりと頭を撫でられた。
「さ、そのマーヘ大陸でもちゃんと連絡が取り合えるよう検証が必要ね」
気持ちを切り替えるようにミッシェルさんが陽気な声を上げる。
「どれくらい離れても大丈夫か、まずはローザルゴーザからトゥルヌソルの間で実験してみますか? 全員でトゥルヌソルまで行く必要はないですし」
「だな。トゥルヌソルに向かうのはグランツェ、モーガン、エレイン、セルリー……他にいるか?」
「レイナルドさんは?」
「俺?」
なんで、って顔で見返されて俺の方が「なんで?」だ。
時間は短いかもしれないけど、せっかくハーマイトシュシューさんに会える機会なのに!
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
421
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる