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第7章 呪われた血筋

197.異様な都

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 マーヘ大陸のセイス国に上陸した三日後に隣国スィンコに移動。
 カンヨン国との国境線沿いを西に進みながら妨害して来る人や魔獣を返り討ちにして来たレンたち一行は、いよいよスィンコ国の首都を目前にしていた。

「第7班と8班はこのまま国境線沿いを進んで獄鬼ヘルネル除けの設置を続けてくれ。キクノ大陸の連合軍と合流したらメッセンジャーを」
「了解」
「……俺たちは、城を落としに行くぞ」
「おう」

 最初に立ち寄った小さな町でさえあの惨状だった。
 都がどんな状態かなど想像も出来ないし、もはや嫌な予感しかしないのだが、それでも進む以外の選択肢はない。二手に分かれた後で改めて準備を整える。
 セイス国では大臣さんが一手に引き受けてくれた作業を今度は自分たちで遂行しなければならないからだ。

「真正面から行くんですよね?」
「そうだ」

 確認にレイナルドさんが頷く。

「マーヘ側がどんな主張をしようと獄鬼ヘルネルに組した時点で世界の敵だ」

 うん。
 改めて気を引き締める。
 それから数分後、俺たちは本当に真正面からスィンコ国の中心に乗り込んだ。




「待て! おまえ達の暴挙はがっ」
「げふっ」

 門前で制止してくる兵士達には事前に「プラーントゥ、オセアン、キクノ、ギァリッグ、グロット、インセクツ――6大陸は獄鬼ヘルネルと手を組み他大陸を侵略するマーヘ大陸の暴挙を止めると決定した! 邪魔をするならこちらは容赦しない!」と高らかに宣言したというのに、武器を向けて邪魔して来るから腕を捻り上げられらるのだ。
 更に俺が獄鬼ヘルネル除けを翳して神力を流せば、四方から苦悶の声が上がる。
 それだけで進路を阻む人影が半減した。

「どんだけ獄鬼ヘルネルが巣食ってんだ……」

 げんなりとした顔でバルドルさんが言う。
 その意見には全面的に同意だけど、それより。

「兵士以外の、人の姿がないな」

 エニスさんが辺りを確認しながら俺と同じことに気付いてくれた。そう、さっきから邪魔をすべく前方を塞ぐのも、獄鬼ヘルネル除けの効果で膝を付いたり、逃げたりするのも、すべて武器を持った兵士だ。
 街中で営業している店も、閉店しているというよりは急に夜逃げでもしたみたいに荒れた店頭がそのままになっている。
 嫌な予感がして魔力感知を発動させる。

「……あの、ここ、本当にスィンコ国の都……中心市なんですよね?」
「ああ」
「どうした?」
「魔力反応がほとんどないんです。スキルが及ぶ範囲は半径1キロくらいの円状ですから都全体を把握できるわけじゃありませんけど、それにしたって……200人くらいしかいないなんて有り得ますか?」
「……またどこかに集められている?」

 クルトさんが予想する。

「異変に気付いて逃げ出しているならいいけど」

 アッシュさんが口元に手を当てて考え込む。
 ゲンジャルさんは周囲の匂いを探るような素振りを見せて眉を潜めた。

「死体がある感じでもないぞ」
「……ここで考えていたって仕方ない、まずは城だ」

 ウォーカーさんに促され、本来なら大勢の人や、馬車が行き交うのだろう大きな通りを城に向かって進軍する。襲い掛かって来る兵士は拘束。
 膝を付いて吐いたり、叫んで逃げる獄鬼ヘルネルは個別に浄化ピュリフィカシオン
 そしてたまに気付く人の気配。

「その建物の、地下? から魔力反応があります」
「行きます」

 聞こえた騎士の人たちは駆け足で其処に向かってくれた。
 それから更に進むと城があり、その周辺には貴族の邸。

「? なんだろう……貴族街? あの辺りからは複数の魔力反応があるんですけど……各邸ごとに纏められているというか……生きてるのに、動いてない……?」
「それって……」

 なにかに気付いたらしいアッシュさんの肩に、同じく気付く事があったのだろうモーガンさんが触れた。

「自分たちが行く。レイナルド」
「判った、頼む」

 早口で言い合い、時間を惜しむように遠ざかっていくのはグランツェパーティだ。
 ヒユナさんも硬い表情でついて行く。

「もしかしたらレンの力も借りるかもしれない。魔力……いや、回復なら神力になるのか。きちんと残しておいてくれ」
「……はい」

 それはつまり、怪我や、病気をしている人達である可能性が高いということで。
 しかも貴族の邸だ。
 奴隷、その二文字が浮かんだ心は重石が投げ入れられたように苦しくなった。 
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