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本心
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「それにしても案外抵抗しないのな。お前。」
「命が助かるならその程度、安いものだろう。」
俺はアーデルハイトがやけに大人しいのが気になった。
さっきも少しニヤけていたし、ほぼ確実に裏があるだろう。
「一成。そんな書類1つで本当に大丈夫か?」
「ああ。サインも貰ったし、この場でネタばらしといこうか。コイツはな、ここを出る前にそいつから貰ったロールの裏に書いた誓約書なんだよ。」
それを言った途端にアーデルハイトの顔が青ざめる。
「な……なんだと!?」
「紙の質感で気づくべきだったな。俺がそんなにマヌケに見えたか?」
「わ、渡せ!!その紙を今すぐ渡せ!!」
必死に飛びかかってくるアーデルハイトを蹴り飛ばし、俺は話を続けた。
「帝国貴族様っていうのは大変用心深いみたいですねぇ。専用の紙の書類でないと契約ができないよう、法律で守られている。その紙は『魔用紙』だったか?よく魔道具に使われる紙で、普通の人間では、まず高くて入手が困難な代物みたいだな。」
「き、貴様……!!なぜそんなことを冒険者ごときが知っている!!」
「俺らの面子の中に昔そういうので騙された奴がいてね。その時に帝国法を多少勉強させられたらしいぞ。」
マーリンが昔、とある貴族に引き抜きされた際、その契約書が魔用紙ではなかったらしい。
待遇も良く、それを引き受けたマーリンは、書類に書かれた内容と仕事の内容、報酬が全く異なっており、耐えきれなくなったマーリンは役所に書類を持って駆け込んだ。
しかし魔用紙でない書類をみた受付は、マーリンに事情を説明した後、どうすることもできないと追い返したらしい。
それからマーリンは貴族の書類の書き方等を勉強し、稀にある冒険者と貴族間の契約でも、意図的な不備を逆手に取ろうとする貴族に対し、強く出ることができるようになったという訳だ。
「つまり、この書類は正式な書類だってことだな。悪いことばっかりやってたツケが来たな。」
「ふ、ふざけるな!!俺は騙されただけだ!!」
「お前の言う冒険者ごときに騙された貴族として、これから一生笑い物になるんだな。」
「こ、殺してやる!!殺してやるぞ!!貴様のようなゴミ、絶対にこの帝国から消し去ってやる!!」
そう言ったアーデルハイトを無視し、部屋を出ようとした俺とは裏腹に、ノブナガがアーデルハイトを思いっきりぶん殴った。
レインの姿なので正直普通に怖かった。
「人を騙しておいて、自分が騙されたら被害者気取りか?我が知っておる一成という人間は、性格はひねくれておるが、人を騙して喜ぶようなクズでは無い。……常に貧乏クジを引かされ続け、矢面に立たされながらも、何かを守るために、他人のために行動してきた人です。彼を馬鹿にするなら、私が決して許さない。」
「……レイン?」
「……一瞬だけ感情が高まってレインが目を覚ましたようだ。だが、これは我とレインの本心であり、主にも伝えなければならなかった事だ。改めて、主は1人では無い。何でも1人で抱え込むな。」
その言葉を聞いた時、邪悪な笑顔で固まっていた俺の表情が解けていくのが分かった。
そしてまた、大粒の涙が俺の頬を伝い、ゆっくりと落ちていく。
ノブナガは何も言わず、俺の横に着き、放心するアーデルハイトを横目に俺は拷問部屋のドアノブに手をかける。
「ふざけるな……。絶対に殺してやる……。」
「まだ言ってるのか?」
振り返った俺の目に映った光景は、アーデルハイトが青い色の液体を試験管のようなものから飲み干し、容器を投げ捨てながらこちらに笑いながら詰め寄る姿だった。
「命が助かるならその程度、安いものだろう。」
俺はアーデルハイトがやけに大人しいのが気になった。
さっきも少しニヤけていたし、ほぼ確実に裏があるだろう。
「一成。そんな書類1つで本当に大丈夫か?」
「ああ。サインも貰ったし、この場でネタばらしといこうか。コイツはな、ここを出る前にそいつから貰ったロールの裏に書いた誓約書なんだよ。」
それを言った途端にアーデルハイトの顔が青ざめる。
「な……なんだと!?」
「紙の質感で気づくべきだったな。俺がそんなにマヌケに見えたか?」
「わ、渡せ!!その紙を今すぐ渡せ!!」
必死に飛びかかってくるアーデルハイトを蹴り飛ばし、俺は話を続けた。
「帝国貴族様っていうのは大変用心深いみたいですねぇ。専用の紙の書類でないと契約ができないよう、法律で守られている。その紙は『魔用紙』だったか?よく魔道具に使われる紙で、普通の人間では、まず高くて入手が困難な代物みたいだな。」
「き、貴様……!!なぜそんなことを冒険者ごときが知っている!!」
「俺らの面子の中に昔そういうので騙された奴がいてね。その時に帝国法を多少勉強させられたらしいぞ。」
マーリンが昔、とある貴族に引き抜きされた際、その契約書が魔用紙ではなかったらしい。
待遇も良く、それを引き受けたマーリンは、書類に書かれた内容と仕事の内容、報酬が全く異なっており、耐えきれなくなったマーリンは役所に書類を持って駆け込んだ。
しかし魔用紙でない書類をみた受付は、マーリンに事情を説明した後、どうすることもできないと追い返したらしい。
それからマーリンは貴族の書類の書き方等を勉強し、稀にある冒険者と貴族間の契約でも、意図的な不備を逆手に取ろうとする貴族に対し、強く出ることができるようになったという訳だ。
「つまり、この書類は正式な書類だってことだな。悪いことばっかりやってたツケが来たな。」
「ふ、ふざけるな!!俺は騙されただけだ!!」
「お前の言う冒険者ごときに騙された貴族として、これから一生笑い物になるんだな。」
「こ、殺してやる!!殺してやるぞ!!貴様のようなゴミ、絶対にこの帝国から消し去ってやる!!」
そう言ったアーデルハイトを無視し、部屋を出ようとした俺とは裏腹に、ノブナガがアーデルハイトを思いっきりぶん殴った。
レインの姿なので正直普通に怖かった。
「人を騙しておいて、自分が騙されたら被害者気取りか?我が知っておる一成という人間は、性格はひねくれておるが、人を騙して喜ぶようなクズでは無い。……常に貧乏クジを引かされ続け、矢面に立たされながらも、何かを守るために、他人のために行動してきた人です。彼を馬鹿にするなら、私が決して許さない。」
「……レイン?」
「……一瞬だけ感情が高まってレインが目を覚ましたようだ。だが、これは我とレインの本心であり、主にも伝えなければならなかった事だ。改めて、主は1人では無い。何でも1人で抱え込むな。」
その言葉を聞いた時、邪悪な笑顔で固まっていた俺の表情が解けていくのが分かった。
そしてまた、大粒の涙が俺の頬を伝い、ゆっくりと落ちていく。
ノブナガは何も言わず、俺の横に着き、放心するアーデルハイトを横目に俺は拷問部屋のドアノブに手をかける。
「ふざけるな……。絶対に殺してやる……。」
「まだ言ってるのか?」
振り返った俺の目に映った光景は、アーデルハイトが青い色の液体を試験管のようなものから飲み干し、容器を投げ捨てながらこちらに笑いながら詰め寄る姿だった。
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