悲しき兄妹

福猫

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第4話

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「あの?大さん、どうしたんですか?」

抱きしめられながら五郎が問いかけると「すまない」と言って大が離れた。

「多輝は俺の知っている多輝じゃないんでしょうか?」

五郎は悲しげな顔で大を見つめた。

大は真剣な顔で「五郎の知っている多輝じゃない、五郎は嫌かもしれないが多輝と戦うことになる」と答えた。

「そんな…」

2度目のショックに五郎は大に背を向け「1人にしてください」と口にした。

「わかった」

大は歩きドアに近づき屋上から出るとドアを閉めそのまま立ち尽くした。

曇りの空を見つめながら五郎は立ち尽くした。

「多輝…お兄ちゃんが助けてやるからな」

その時、雨が降り出し五郎は濡れながら立ち尽くした。

五郎が気になり大が少しドアを開くと雨に濡れながら立ち尽くしている五郎に驚き大は五郎に近づき屋上から離れさせた。

「雨に濡れて何してんだ」

「大さん、手分けして多輝を探しましょう」

「手分けして探すのは危険だ」

「俺は魔法使いです」

真剣な顔で大を見つめると五郎は階段をおりていった。

「しょうがないな」

大はその場から姿を消した。

外に出た五郎は雨に濡れながら歩き始めた。

その頃、多輝も別の道を傘をさしながら歩いていた。

3時間後、五郎と多輝は再会した。

「多輝!」

「……」

五郎と多輝は向かい合って立ち止まり見つめ合った。

「多輝!」

「お兄ちゃん」

傘をさしながら多輝は五郎に近づき五郎にさしながら「白のダイヤ、持ってる?」と問かけた。

五郎は「持っていた」と答えた。

「持っていた?今は持ってないの?」

「多輝、お前を助けるために俺は魔法使いになった」

「お兄ちゃんもなったんだ」

「多輝、俺と一緒に家に帰ろう」

五郎が手を差し出すと多輝は五郎の手を握り微笑んだ。

「多輝?」

「白のダイヤを持ってないなら私の邪魔をしないで」

五郎の手を握ったまま傘を持っている手を離すと小さなナイフで五郎の腹を刺した。

「多輝……」

「……」

無言のまま多輝は五郎の手を離し倒れる五郎を見つめた。

その頃、多輝は五郎に背を向け歩き出した。

30分後、五郎は救急車で病院に運ばれた。

その後、五郎は手術を受け五郎の命は助かった。

五郎は病室に運ばれベッドで眠っていた。

「……」

そして眠っている五郎の病室に人間に変身した金猫が現れた。

金猫はベッドに近づき白のダイヤを出現させるとそのまま眠っている五郎の身体の中に送り込んだ。

5秒後、五郎が目を覚ました。

「目が覚めたか」

人間の金猫が声をかけると五郎は身体を起こし無言で見つめた。

「……」

「何だ」

「誰?」

「俺は…」

「具合はどうですか」

担当医師が現れると人間の金猫は五郎をお姫様抱っこしそのまま病室から姿を消した。

担当医師は驚きで立ち尽くした。

ー五郎と多輝が住む家ー

五郎の部屋に姿を現した人間の金猫は五郎をベッドに座らせ人間から金猫に戻った。

「人間に変身できんるですね」

ベッドに座りながら五郎が声をかけると「人間が俺の本当の姿だ」と金猫は答えた。

「人間が本当の姿なら何で金猫に」

「黒の魔法使い達の行動を調べるのに金猫が良いんだ」

「そうなんですか」

「俺のことよりお前の心は大丈夫か?」

「……」

金猫の言葉に五郎は悲しい顔でうつ向いた。

金猫は再び人間の姿に変身し五郎の側に座り無言で五郎を抱きしめた。

「……」

「……」

無言で金猫は五郎を抱きしめ五郎は金猫に抱きしめられ30分後、大美と大が現れた。

人間の金猫は慌てて五郎から離れベッドから立ち上がり背を向けた。

その姿を見て大美が「大、五郎さんをお願い、金猫、ちょっと」と言って部屋を出ていき金猫も部屋を出た。

その後、大美は多輝の部屋を借り金猫と共に中に入った。

その頃、大はうつ向いている五郎の側に座り無言で五郎を見守った。
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