異世界の日常は日常らしい日常

れふれ

文字の大きさ
8 / 12
第一部

イアンと誕生日 1

しおりを挟む
『コメッ!リオッ!リオンサン~』


「ありがとうございました。」

お客さんを見送って、ふぅと息をつく。

今は、ピークの時間をこえた1時。ちょうどお客さんはいない。


この世界に来てから、1ヶ月たった。


2週間前ぐらいから、朝早くから忙しいリオンさんは10時から1時まで仮眠をとるようになり、その間は一人でお店番をするようになった。

また、パン屋さんの仕事はかなり覚えて、材料の買い出しを任せてもらえるようになった。



お客さんの名前も覚えてきて、世間話もするようになった。

宴会おじさんこと、ハドリーさんも、
絵本が大好きな女の子、アンナちゃんとも、今では仲良しだ。




リオンさんは一人でお店をするのはとても大変だったらしく、タケルが来てくれて良かった。と、ことあるごとに言ってくれる。


実際、初めに会ったときよりも、目の下の隈がなくなり、肌ツヤのよくなったリオンさんは、イケメンに磨きをかけていて、キラキラと眩しい。


リオンさんの役に立てたのは嬉しいが、正直、眩しすぎて、目があっても、逸らしてしまうのが困る。


自分の髪や目は見慣れたが、リオンさんのかっこよさには見慣れる日が来る気がしない。




………けど、目を逸らしてばっかりでは、リオンさんも気持ちのいいものではないだろうし、このままではいけないよなぁ。




もう、1ヶ月になるのだし、日頃の感謝の気持ちを伝えたいと思っているのだが、このままでは伝わるものも伝わらない。



………贈り物をしたらどうだろう?


目を逸らしてしまっても、贈り物があれば感謝の気持ちは伝わるかな?


そうだ。なにか、リオンさんにプレゼントしよう。


……………。



何にしようかと、考え始めても、いまいち良いものが思い付かない。


そもそも、リオンさんが「お小遣い」と、くれるお金で贈り物をするというのも、何だか変な気がする。





どうしたものか。と悩んでいると、ドアベルがなってお客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませ。」


入ってきた人は、銀色の髪を遊ばせていて、チラリと尖った耳が見える。

チャラそうな魔族さんだな。と思っていると、目があった瞬間、驚いた顔をして、ドサッと鞄を落とした。


「………?? 
リ、リオ、リオンも、ついに………!!!
唯一の相手を見つけたかんじ…………!!!??
………感動っ!!!!!!!」


……あ、これ、俺をお嫁さんと勘違いパターンだ。


「あのリオンさんのお知り合い…ですかね?とりあえず、リオンさん二階で寝てるので、呼んできますね。」


ちょうどいつも起きてくる時間でもあるし、チャラ男さんの対応はリオンさんに任せることにした。


「それにしても、知らせてくれないなんて、ひどくない?親友なのに。
もう式を挙げちゃったとかないよね?それは悲しすぎるんだけど………」


チャラ男さんはリオンさんの親友なのか。


ぶつぶつと独り言を言っているのを聞きながら階段を上がって、リオンさんの部屋の前に行く。




コンコン、とドアをノックして、「リオンさん。起きてますか。」と呼び掛けた。





返事がなく、10秒ほど経ってから、ドアがガチャッと開く。






「おはよう、タケル。」



部屋から出てきたリオンさんは、なんというか、その、



……………い、色気が凄かった。


いつもよりハスキーな声に、眠たげで陰りのある瞳。
服も少し乱れていて、そんな姿で微笑まれたら…………!!

いつもはしっかり起きてから一階に降りて来ているので、見たことがなかった。

直視できなくて、うつむいているが、顔が赤くなっている自覚がある。


「…おはよう、ございます…………。」

なんとかそう言うと、リオンさんはなぜか少し笑って頭をぽんぽんしてくる。


「手間をかけさせてしまってごめんね。…なにかあったのかな?」

「あ!リオンさんの親友?の方がいらっしゃったので、ちょうどいい時間だし……と思って。」

「……イアンかな?あいつ、もう帰ってきたのか。
………。分かった、ありがとう。店に戻ろうか。」

「はい。」

二人で階段の方を向くと、チャラ男さんが階段から顔だけを出してニヤニヤとこちらを見ていた。



俺とリオンさんは、店に戻ると、チャラ男さん(改めイアンさん)とお店の端に置かれた椅子に腰かけに座った。

2人によると、リオンさんとイアンさんは小さいときからの幼馴染みらしい。

そして、なんとイアンさんは、シアラ婆さんの孫なんだそう。髪色は遺伝するものなのかな?



「ねぇ!タケルさんは年、いくつ?」

「俺は、今年で17歳ですけど………イアンさんは?」

「おおっ!俺も17だよー!!
じゃあさ。さん付けはやめてタメでいこ?…タケル。」

「……分かった。イアン。よろしくね。」

イアンがニコニコとしながら手を差し出してくるので、握手をする。

同い年ぐらいの人にこの世界にきてから親しくなれてなかったので、嬉しい。





………。そういえば、俺、リオンさんの年齢も知らない。
1ヶ月一緒に暮らしているのに。と何だか少し情けない。


「リオンさんは、何歳なんですか?」


「ん?俺は今年で25歳。」

25歳か……。俺も大人になったらリオンさんみたいになれるかな?




「えっうそ!8も年上だっけ?」

「……そうだよ。8歳も年上なのにイアンのその敬いの無さはどうなの……。
別にいいけどね。今更変わられても違和感しかないし。」

「えー?これからでも言ってあげようか? リ・オ・ン・兄さん?」

「………ごめん。悪寒がした。もう敬ってくれなくていいよ。」

「ちょっと悪寒ってひどくない?リオン兄さーん!!」


………仲がいいな。

さっきまで年齢も知らなかったような自分と幼馴染みのイアンとを比べるのは意味がないとは分かっているけれど、


………慕っているお兄さんをとられてしまったような、感じがして。

何だか胸がギュッと締め付けられる。

こんな子供じみた感情、嫌だな…………。



「ねぇー!タケル!」


二人の会話を笑顔を作りながら聞いていると、イアンが俺のことを呼ぶ。

「なぁに?」


今まで考えていたことをパッと心の隅に追いやって、イアンを見ると、なにかを思い付いたように、ニヤニヤと笑っている。


「タケルもリオンのこと、お兄さん呼びしてみてよ!!」




「「……えっ?」」




そう来ると思っていなかったのはリオンさんも同じだったのか、声が揃う。





そんな面白味のないことをしてなんになるのだろうか。


そう思いながらも、リオンさんの方を見ると、
予想に反して、少し期待するような顔をしている……ように見える。


そんな顔をされると、何故だかすごく恥ずかしい気持ちになって来たけれど、

恥ずかしがっていることも恥ずかしいので、意を決して



「………リオン、兄さん?」


とリオンさんと目を合わせて呼んでみた。




「…っ!!?これは、ヤバい………。」


リオンさんはそう呟くと、横を向いてしまった。



…うん、わかっていたことだけど…ね。

幼馴染みのイアンで悪寒がしたと言っていたのに、俺が呼んでも気持ちが悪いに決まっているだろう。


………それにしても、目をそらされるのは思った以上に、つらい。


…………これから、リオンさんにどんなにドキドキしても目をそらさないようにしよう。


………出来るだけ……になる、けど。



リオンさんは横を向いたまま、ニヤニヤしっぱなしのイアンをじとっとにらんでいる。




「タケル!よかったらこのあと店を出て一緒に遊ばない?せっかく同い年だし、話したいことがいーっぱいあるんだよねー!」



イアンは睨まれているのを全く気にしていない様子で話しかけてくる。

俺も仲良くなりたいけど、今は仕事中だからな………と思ってリオンさんの方をチラッと見ると、睨むのを止めて、ニコッと笑ってくれる。



「いいよ。仕事は気にしなくていいから行っておいで。

ずっと働いてくれているから………とても助かってるけど、タケルには、もっと自分のしたいことをしてほしいな。」



「ありがとうございます。………では、お言葉に甘えて行ってきます。」


「うん、楽しんでおいで。夜ご飯の時間までには帰ってきてね。」


リオンさんはそう言いながら俺の頭を撫でてくれるので、思わず頬が緩む。



リオンさんはよく頭を撫でる気がする。くせなのかな?

この世界に来てから、数えきれないほどしてくれている。


「………うわ、めっちゃあまあまじゃん。

…………よし!!それじゃあタケル!おすすめの店があるから、そこでまずお昼食べよう。俺、お腹すいたんだよねー!!ほら!早く行こ!!」

イアンは待ちきれないというように俺の手を引っ張る。

「はわわっ。じゃ、いってきます。」

「いってきまーーす!!」

リオンさんは「いってらっしゃい」と言って手を振ってくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

アケミツヨウの幸福な生涯【本編完結】

リラックス@ピロー
BL
ごく普通の会社員として日々を過ごしていた主人公、ヨウはその日も普通に残業で会社に残っていた。 ーーーそれが運命の分かれ道になるとも知らずに。 仕事を終え帰り際トイレに寄ると、唐突に便器から水が溢れ出した。勢い良く迫り来る水に飲み込まれた先で目を覚ますと、黒いローブの怪しげな集団に囲まれていた。 彼らは自分を"神子"だと言い、神の奇跡を起こす為とある儀式を行うようにと言ってきた。 神子を守護する神殿騎士×異世界から召喚された神子

俺が聖女なわけがない!

krm
BL
平凡な青年ルセルは、聖女選定の儀でまさかの“聖女”に選ばれてしまう。混乱する中、ルセルに手を差し伸べたのは、誰もが見惚れるほどの美しさを持つ王子、アルティス。男なのに聖女、しかも王子と一緒に過ごすことになるなんて――!? 次々に降りかかる試練にルセルはどう立ち向かうのか、王子との絆はどのように発展していくのか……? 聖女ルセルの運命やいかに――!? 愛と宿命の異世界ファンタジーBL!

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

世界が僕に優しくなったなら、

熾ジット
BL
「僕に番なんていない。僕を愛してくれる人なんて――いないんだよ」 一方的な番解消により、体をおかしくしてしまったオメガである主人公・湖川遥(こがわはる)。 フェロモンが安定しない体なため、一人で引きこもる日々を送っていたが、ある日、見たことのない場所――どこかの森で目を覚ます。 森の中で男に捕まってしまった遥は、男の欲のはけ口になるものの、男に拾われ、衣食住を与えられる。目を覚ました場所が異世界であると知り、行き場がない遥は男と共に生活することになった。 出会いは最悪だったにも関わらず、一緒に暮らしていると、次第に彼への見方が変わっていき……。 クズ男×愛されたがりの異世界BLストーリー。 【この小説は小説家になろうにも投稿しています】

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星
BL
第二章スタート!:イブキと婚約をして溺愛の日々を送ろうとしていたブラッドフォード。だが、国の情勢は彼の平穏を許さず、王の花嫁選びが始まる。候補者が集まる中、偽の花嫁(♂)が紛れ込む。花嫁の狙いはイブキの聖獣使いの力で。眠りについた竜を復活させようとしていた。先の戦においての密約に陰謀。どうやらイブキの瞳の色にも謎があるようで……。旅路にて、彼の頭脳と策略が繰り広げられる。 第一章:異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

処理中です...