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第11話 モルデンでの生活

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 異世界の一日は忙しい。

 「セリ・ザワ」という名の男の子の冒険者として暮らす私は、日の出と同時に起きてギルドへ向かう。
 ギルドで新規の依頼が張り出されるのは毎朝早朝。人気の仕事はすぐに決まってしまうから、依頼が張り出されると同時にゲットするのが狙い目だ。
 私が一番したい仕事は食堂の手伝い。屋内の仕事だし賄いも付くから最高なんだ。
 でもそんないい仕事は滅多にないから、普段はたいてい常設依頼の薬草採集をしてることが多い。
 気をつけてるのが、どんな依頼でも必ず日暮れまでには街に戻ること。
 ここは日本と違うから、日が落ちると照明のない街の外は危険がいっぱい。魔物も増える。魔法も使えないしナイフの腕にも自信のない私は、いくら用心してもし過ぎるってことはないと思ってる。
 ギルドでその日の依頼分の精算を済ましたら、市場で食材を買ってから宿に戻る。
 お金を節約してるから、三食なるべく自炊するようにしてるんだ。
 サリーナさんに紹介してもらった宿は、古くて狭いけどキッチンとトイレ付き。
 お風呂代わりの大きな桶での水浴びは最初は冷たくて泣きそうだったけど、慣れた今ではそうでもない。一応年頃の女子だし毎日の入浴は欠かせないよね。
 毎晩寝る前の日課は日記をつけること。
 その日の簡単な出来事と薬草の特徴や魔物、街の地図なんかをまとめたノートはもう2冊目になった。……あと少しで日本から持ってきたノートがなくなる。
 書き終わったら後は寝るだけ。毎日くたくたに疲れてるせいか、日本にいた時と違って横になったらすぐに眠れるようになったんだ……。

 はっきり言って、異世界でお金を稼いで一人で暮らすのって大変だ。
 違う世界からやってきた人間だって、女だってばれたらどうなるかわからないから、誰かに頼ることも怖くて出来ない。
 唯一の頼りはお金。お金さえあれば大抵のことはなんとかなるって思ってる。だから私は毎日ギルドに通って少しでもお金を稼ぐ。
 贅沢は出来ないけど、光熱費やスマホ代がかからない分生活費は安いかもしれない。それに日本にいた時も一人暮らしでアルバイト三昧の学生だったから、貧乏生活は慣れてるしね。
 
 目下の目標はこの国の都に行くことだ。
 一年かけて自分なりに調べたんだけど、ここモルデンには異世界からやってきた人間についての手がかりがないみたい。
 でも都はすごく都会だって聞くし、何より大きな図書館があるって聞いた。そこに行けば何か見つかるかもしれない。
 馬車で2週間くらいかかるって聞いたから、そのためのお金を貯めてるんだ。

 うん、私は大丈夫。日本に帰るって目標があるから、まだ頑張れる。

 ………………でも時々無性に疲れてしまう。

 街中で仲の良さそうな家族や恋人達とすれ違う時。
 ギルドで私の隣だけが空いてる時。
 誰もいない部屋で一人過ごす時。

 ふと考えるんだ。 
 私は一人だって。

 どうして私はここにいるんだろう。
 いつまでここにいなくちゃいけないんだろう。
 私はこのままこの世界でずっと一人なのかな。

 帰りたい。帰りたいよ。
 でも私の帰る場所って、まだ日本にあるのかな。
 もしなかったら……、ううん、それよりもし日本に帰れないとしたら、私はこれから一体どうすればいいんだろう……?



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