エロ下着協奏曲

香野ジャスミン

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52、探る互いの気持ち

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「うわっ!由真、お前、なんという恰好を...」

兄は早めに帰宅していて、帰宅した俺の姿を見て驚いた様子だった。

「...ほれ、着替えていくのか?...恋人の所に。」

部屋に置いておいた荷物を渡された。

「...行かない...」

「...は? お前、こっちに戻ってきたの、それが理由じゃねーか。

 なのに、なんで、行かないって...」

俺の様子を見て、兄は何か悟ったみたいだ。

黙ったままでいてくれる。

「...兄ちゃん、その土産、全部、あげる。もー、それ、要らなくなったし。」

荷物の横に置いていた紙袋を睨みつけながら俺は言っていた。

「...あと、この制服、借り物だから、クリーニングに出して。

 俺から受け取りに行ってもらうようにするから。」

俺は、兄の目の前で着ていた服を脱ぎ、元の姿に戻った。

そして、開けることなく置いていた荷物に手をかけた。

―?!

「オイ、ちょっとまて。 お前、もしかして、今から帰んの?」

兄ちゃんが慌ててるけど、

「...帰る。 ごめん。兄ちゃん...ほんと、ごめん」

たぶん、一緒に食べるかもしれねーって、作ってくれていた食卓の料理。

だけど、味わって食べることなんてできそうにないし、一人になりたい...。

「...由真、待てって、にーちゃん、途中まで送ってやるから」

「良いからっ!!...一人に...なりたいんだって...。」

最後は、自分の感情を抑えることができなかった。

兄の制止を振り切り、俺は荷物を持って朝、通った改札を抜け、深夜に着く新幹線に一人飛び乗ったのだった。

「カァァァ。

 別れた。ってか、まじで意味が分かんねー。なんで今頃?

 なんで、今? 本当に、わかんねー」

不機嫌度最高潮の黒澤が土日を挟んで登校してきた。

廊下で、見かけたこいつの周りには、冷気が漂い、いつもとは違う様子に周りも怖がっていた。

「意味わかんねー言葉を、吐くな。

 それ、メールでもたくさん俺、聞いたけど。

 何か原因がそれなりにあるんじゃねーの?お前に」

言葉がどこまで届いてるかわからないが、黒澤に言った。

すると、奴は机に伏せたまま頭を抱えながら

「...思い当んねーから、悩んでんの。

 俺も、言われた時には、頭に血がのぼって、色々と言い返したけど、冷静になって考えたら、酷い言葉も言ったし。

 遠距離とか、大丈夫だって思ってたの、俺だけなのかな...。

 あいつ、好きな人が...できたって...言ってたし…」

動きをとめた黒澤は視線を遠くの方に向けたまま、一人、こぼしていた。

「...泣きそう...な、顔をしてた。」

黒澤は、絶対に南沢と付き合っているはずだ。

あんだけ、周りに人がいるのに、2人だけ見つめあってるぐらいなんだから、俺の知らない所まで進んでたんだと思う。文化祭の時、南沢は黒澤に会えることをすごく楽しみにしているようだった。

俺には素直に言わねーけど、あいつ、メールに絵文字を入れてくる時点でテンションは高めなのは、すぐに分かった。

あいつの好きな奴が、こいつだってのは、俺でもわかる。ってか、クラスに連れてこられた時だって、あいつはそんな素振りを見せなかった。別れる様な雰囲気なんて少しも...。

―!

・・・・少しだけ、違和感があるとしたら、あいつが引き留めてきた帰りの事だ。

「...帰りにあいつが、言った言葉がさぁ...、ずっと気になってたんだよね。」

黒澤もすぐに思い出した様子で、顔を上げてきた。

「“黒澤先輩の話していること、アレ、冗談っすから。 俺(吉田)が夫婦って、揶揄ってくるからって...。”

 …もう、いいか。

 お前ら、付き合ってんだよな。 で、お前があん時...。」

―!

黒澤は投げやりに「あぁ。」と、返していた。

だが、最後の言葉を聞いて何かに気付いたようだった。

「...俺、お前に何か...言った...。」

黒澤の声が、震えているのがすげーわかるの。

「...たぶん、南沢は俺らの会話を...聞いてたんだ」

大きくため息をついた黒澤は、先ほどまでの怒りは失せ、反省している。

ま、自分に怒ってるってのが、正しいか。

「...たぶん、そういう目で見られてるお前の事...考えてんじゃね?

 あいつって、そういう印象とか、イメージとかにすげー気にするじゃん。

 だから、《俺に嫌悪を向けられるお前》を守った?

 …うーん、言葉が...。あ、アレだ。

 親友ポジを選んで、自分から身を引いたって方がしっくり、くるんじゃね?

 

 あいつの好きな人ってのが、本当だとしても。

 あいつは、結構、警戒心がつえーほうなんだろ?

 俺ですら、ちょっと、あいつの名前を言っただけで、すげー嫌そうにしてくんのに。

 それなのに、たった、数か月であいつの気持ちを掻っ攫う奴なんて、現れたりしてねーって。 

 それまで、連絡だってこまめに取ってたようだし。

 あんだけお前の事、好き好きって目とかで言ってんのに、よく嘘が言えたもんだわ。

 逆に、そっちがすげーって思う。

 で、お前も、余裕がねーから、間に受けてんの。

 お前がバカなんだな。

 うん、知ってた。あぁ、おバカさんは、嫌だねぇ...」

机にあった下敷きでパタパタと仰ぐ仕草をして見せたが、黒澤は、黙ってた。

あいつがここまでたどり着くのに、わざわざあの時間で顔を出してんだ。

どうでもいいやつ、これから振るヤツに、普通はそこまで、しねーだろ。

少し、考えたらわかることだ。

気付けよ、って思った。

だけど、もっと、話しておけばこんなことにはならなかったんだろうし、俺にも、あのまま黒澤との会話を途中辞めしてたことも問題あるし。

「まぁ、俺としては、昼ドラ万歳な秘めた恋より、少女漫画万歳なラブラブを見てる方が、恋、してーなって思うんですよね、黒澤さん。 だから、お前らの事、別にどうとか思わねーし。

 思ってたら、いちゃついてた時点で、牛乳をぶっかけてたわ。

(※吉田の大好物、牛乳。もちろん、本意ではない。)」

俺の言葉に、「...牛乳はねぇわ...」と、嫌そうな顔をしてる黒澤。

「だからさ、お前の事、好きすぎて嫌な奴になれちゃうあいつ、捕まえてきな?」

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